グンゼ 【東証プライム:3002】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる」という創業の精神を変えてはならない経糸(たていと)、社会からの期待に誠意をもって柔軟に応えることを緯糸(よこいと)とし、様々な製品やサービスの提供を通じて時代に求められた社会課題の解決に取り組み、企業価値の持続的向上を目指しております。
(2) 中期的な経営戦略
当社グループは、①新たな価値の創出 ②資本コスト重視の経営 ③企業体質の進化 ④環境に配慮した経営を基本戦略として2022年度~2024年度の3ヵ年を推進期間とする中期経営計画「VISION 2030 stage1」を推進しております。中期経営計画「VISION 2030 stage1」では、2030年ビジョンとして「新しい価値を創造し『ここちよさ』を提供することで持続可能な社会の実現に貢献します」を掲げ、「変革と挑戦」をキーワードに、経済的利益と社会的利益を両立させるサステナブル経営を通じて社会貢献と当社グループの持続的成長の実現を目指します。また、各事業セグメントの役割・位置づけを明確にして「VISION 2030 stage1」を推進しております。
(2030年に向けた各事業セグメントの役割・位置づけ)
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※上図ではメディカル事業を機能ソリューションセグメントに含めておりますが、成長牽引の位置づけをより明確にするため、2023年度より「メディカル」セグメントとして区分しております。 |
※GVA(Gunze Value Added)= 税引後営業利益 + 配当金 - 期末投下資本 × WACC(加重平均資本コスト)
(VISION 2030 stage1の基本戦略)
新たな価値の創出 | ・新規事業の創出と既存事業の成長(M&A含む) ・サステナビリティを追求した新商品、新サービスの提供 |
資本コスト重視の経営 | ・経営資源の戦略的配分 ・資本効率の追求によるGVA黒字化 |
企業体質の進化 | ・多様な人財が活躍する風土づくり ・働き方改革による意識・業務改革の推進 ・デジタルの積極活用によるプロセス変革 (生産、販売、開発、物流、間接等すべて) |
環境に配慮した経営 | ・事業活動における環境負荷の低減 |
① 新たな価値の創出
・新規事業の創出と既存事業の成長(M&A含む)
機能性フィルムの開発推進、ベンチャー企業等との提携・M&A推進、新規事業創出の仕組みづくり
プラスチック分野、メディカル分野でのグローバル拡販
エンジニアリングプラスチックス分野での半導体関連製品の拡大
アパレル分野でのDtoCビジネスシフト加速(EC、直営店舗)、レディスインナー・レギンス等強化
・サステナビリティを追求した新商品、新サービスの提供
吸収性製品を中心とした革新的なメディカル新商品の上市
バイオマス、リサイクル原料を活用したプラスチック環境対応新商品の拡販
アパレル事業での気候変動対応型商品、ウエルネス&ヘルス商品の拡充
人と環境に配慮した「つかしんタウンセンター」のリニューアル
② 資本コスト重視の経営
・経営資源の戦略的配分
成長分野、サステナビリティに寄与する事業への重点投資
・資本効率の追求によるGVA(経済的付加価値)黒字化
GVA向上ツリー展開による取り組み強化
③ 企業体質の進化
・D&I、働き方改革とエンゲージメント向上への取り組み
女性活躍推進、次世代支援、シニア活躍推進、職場環境整備、オフィス改革、
年休取得率向上、総労働時間削減、
1on1ミーティング推進、心理的安全性醸成、キャリアローテーション/形成支援、
人事処遇制度改革、健康経営
・デジタルの積極的活用によるプロセス変革
経営情報の連携(全社/事業部の経営ポータル刷新)
AIを活用した商品・顧客分析とSCM改革
センシング・AIを活用したスマート工場化(自働化・省力化による生産性向上)
RPA等自働化ツール活用による間接業務の省力化
④ 環境に配慮した経営
・事業活動における環境負荷の低減
省エネ・創エネ・再エネ活動の推進(高効率設備・太陽光発電設備の導入等)
資源循環の取り組み
サステナブル調達
(目標とする経営指標)
VISION 2030 stage1の経営目標はグループ売上高1,400億円、営業利益100億円、GVA(経済的付加価値)黒字化、株主資本コストを上回るROE6.32%以上としております。中でもROE(自己資本利益率)をグループ重点指標として掲げ、引き続きGVAによる業績管理を事業毎に月度単位で実施するとともに、GVA黒字事業には、投下資本収益率(ROIC)を導入し、事業運営において意識づけを強化してまいります。
上記財務目標に加え、サステナブル経営の視点から2030年度までの非財務目標を以下のとおり設定しております。上述の基本戦略に基づき諸施策を強力に推進してまいります。
[非財務目標]
区分 | 目標指標 | 2024年度目標 | 2030年度目標 | |
環境対応 | CO2排出量 削減率(対2013年度比) | 28%以上 | 35%以上 | |
エネルギー原単位削減率(対前年) | 1%/年以上 | |||
企業体質の進化 | 女性活躍推進 | 女性管理職比率 | 6%以上 | 20%以上 |
女性社員比率 | 35% | 41% | ||
女性総合職採用比率 | 50% | 50% | ||
子育て支援 | 男性育休取得率 | 50% | 70% | |
組織風土づくり | エンゲージメントスコア | 70点想定 | 80点想定 | |
働き方改革 | 年休取得率 | 75% | 100% | |
その他 | 生産性向上率(対前年) | 103% | 103% |
(財務戦略)
強固な財務基盤を維持しつつ、環境関連を含めた設備投資と資本コスト低減を両立させ、GVA向上・フリーキャッシュフローの創出を図ってまいります。株主への利益還元については、ROEが株主資本コストを上回るまで総還元性向100%を維持するとともに、株主資本配当率DOE2.2%以上の安定的な配当を実施してまいります。
(3) 当社グループの対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う行動制限の緩和等により、社会経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調となる一方、地政学的問題を背景とした原材料価格の高騰に伴う物価上昇や、国内外の金融政策の違いに伴う円安影響及び海外経済の減速懸念など、先行き不透明な状況が継続しております。各事業においては自働化とDX推進による生産性向上の取り組みやグローバル最適生産体制によるコスト競争力の強化、原材料調達網の拡充とともに、市場の様々な変化を捉えた新たな価値創出活動に取り組んでまいります。
なお、2023年度より、現在推進中の中期経営計画「VISION 2030 stage1」における成長牽引の位置づけをより明確にするため、機能ソリューションセグメントに含まれていたメディカル事業を「メディカル」セグメントとして区分しております。
(セグメント別戦略課題)
機能ソリューション事業では、プラスチックフィルム分野は環境対応型新商品の積極的な投入とともに、サーキュラーファクトリー(資源循環型工場)の本格稼働とサーキュラーメーカーへ変革するための基礎となるリサイクルセンター設置を進めてまいります。また、設備の自働化や再生可能エネルギーの活用による生産革新を進める一方、米国・中国・アセアン等海外拡販を強化してまいります。エンジニアリングプラスチックス分野は、主力のOA市場向け製品のシェア拡大に加え、医療・半導体分野の需要増に対応するため、2025年3月完成を目標に主力である江南工場拡張を実施します。また経営資源の戦略的配分を推進するため電子部品分野については連結子会社の株式(85.1%)及び日本と米国のタッチパネル事業の商権を2024年10月1日(予定)に譲渡することとしております。メカトロ分野においても事業譲渡の交渉を行っております。
メディカル事業では、事業の成長を加速するため、2025年2月竣工を目標に京都府綾部工場敷地内に新工場(第三工場)建設とメディカルの開発力強化のための研究開発施設の増強を実施します。新工場では需要が拡大している癒着防止材「テナリーフ」の増産体制を整備します。また米国・中国の販売強化・継続的な新商品開発により、事業拡大を加速させてまいります。
アパレル事業では、競争力向上を目的とした業種横断型の組織再編を通じて、消費行動変化に伴い伸長しているECチャネルや直営店舗のDtoCルートでの更なる拡販と他社とのコラボレーションを積極的に推進し、ライフスタイル分野への拡大、差異化新商品を通じたレディスインナーの拡販を図ってまいります。また生産拠点の集約など構造改革を行ってまいりましたが、今後もオートメーション化とグローバル最適生産体制の構築によりコスト競争力の強化を推進してまいります。加えて「物流の2024年問題」については、効率化(ロットまとめ、輸送量の標準化)に取り組み事業への影響の極小化を図ってまいります。
ライフクリエイト事業では、商業施設の収益力向上の推進や投資効率を重視した物件別管理を強化してまいります。グリーン分野では、大阪万博等への緑化需要の取り込みとCO2削減に向け固定量増加に積極的に取り組んでまいります。スポーツクラブ分野は、不採算店舗の閉鎖等、課題店舗への対応を強化するとともに、スクール事業の拡大と地域・店舗特性に合わせた特長のあるサービス提供や新業態の開発に取り組んでまいります。
(財務戦略課題)
当連結会計年度末の当社グループPBRは0.8倍となっており、企業価値が毀損している状態が継続しております。このPBR低迷の主要因はROEにあると捉えており、エクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)が継続的にプラスとなれば、PBR1.0倍超えを実現できるものと考えております。
中期経営計画「VISION 2030 stage1」における当社グループの株主資本コストは6.32%に設定しておりますが、投資家との対話や日本銀行の金融政策転換を踏まえた直近の推計結果から、エクイティスプレッドのプラス化には更に高い水準のROEが必要と認識しております。
また、年々赤字幅を縮小しているGVA(Gunze Value Added= 税引後営業利益 + 配当金- 期末投下資本 × WACC)が継続的に黒字となれば、PBR上昇に寄与すると考えております。しかし、資本コスト経営を推進する中で構造改革や政策保有株式縮減(※)を優先的に進めてきた結果、当連結会計年度末のDEレシオ(負債資本倍率=有利子負債÷自己資本)は過去最低水準に低下しております。このDEレシオ水準では、WACCが中期経営計画「VISION 2030 stage1」における設定値5.15%よりも高くなり、GVA黒字化までに更に時間を要することとなります。当社グループの自己資本の大きさが財務健全性を支える一方、エクイティスプレッドプラス化、GVA黒字化の高いハードルとなっていることも踏まえ、利益水準・財務健全性・資本効率を考慮した最適資本構成の構築が必要と考えております。
当社グループの将来の利益及び投下資本の伸長を踏まえた、継続的にエクイティスプレッドプラス、GVA黒字となる理想的なDEレシオを設定してまいります。当社グループにおける資本コスト経営マネジメントの下、メディカル事業・エンジニアリングプラスチックス分野の増産に向けた工場拡張投資やプラスチックフィルム分野のリサイクルセンター設置など、積極的かつ効率的な成長投資により既存事業の利益伸長を図るとともに、財務レバレッジを高めてまいります。また、状況に応じてM&Aなどのインオーガニック投資や追加の株主還元も検討し、最適資本構成の実現を図ってまいります。
※ 政策保有株式縮減の状況は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」に記載しております。
(温浴施設取水量過少申告に関する対応について)
2024年1月24日に、「温浴施設取水量過少申告に関するお知らせ」(以下「本件」という)を公表し、同年1月末に、当該温浴施設を運営する当社連結子会社のグンゼ開発㈱は、伊丹市・尼崎市に対し、2004年~2023年の期間に係る552百万円の未払下水道料等を納付しました。
関係者の皆様にはご迷惑、ご心配をおかけしましたこと、あらためて深くお詫び申し上げます。
本件公表後、詳細な調査と原因究明のために調査チームを立ち上げ、2004年の温浴事業開始時の関連文書の収集、及び関係者(当社従業員、関係業者)への聞き取り調査を実施しました。
<調査結果と原因>
本件は、当該施設の保守点検のため配管状況を確認する目的で現場を掘削した際に、迂回配管が地中埋設されていることを発見したことから発覚したものですが、20年前の工事ということもあり、グンゼ開発㈱からの具体的指示や迂回配管を設置した施工業者を特定できる明確な証言、証拠等は得られませんでした。しかしながら、迂回配管が設置されていた事実を鑑み、当時の当社従業員や施工業者が何等かの形で関与していたのではないかと推定せざるを得ないと考えております。
いずれにしても当社としては、知見のない事業への参入ということから業者に全面的に委ねる形となり、施主として工事のチェック・判断能力が欠如していたこと、また後に全国の温浴施設において迂回配管の問題が報道されていたにもかかわらず、グンゼ開発㈱・施工業者とも当事者としてコンプライアンス意識が希薄で適切なチェックや対応を怠り、結果として長期にわたり放置することに繋がったと考えております。
加えて、グンゼグループの経営を監督する経営陣のチェックが行き届かなかったこと、当社グループのガバナンス体制が不十分であったことも反省すべきであると考えております。
<再発防止策>
ガバナンス体制の強化及び構成員の意識付けの両面から、以下の再発防止策を講じてまいります。
①建築工事に関する本社技術開発部での契約書・図面チェックの徹底
②部門長教育、構成員研修の実施
③各部門リスクについて年一回の自主チェックと機能部門によるモニタリング実施
④コンプライアンス監査の継続
⑤トップによる全従業員へのメッセージ発信
<経営責任>
長期にわたる過少申告を発見できず多額の損失を計上する事態となったことに対する経営責任と社会的責任を果たすため、代表取締役2名(会長、社長)の月額報酬(2024年5月~6月)を20%減額することとしました。
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