企業グリッド東証グロース:5582】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、別段の表記がない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1) 経営方針

 私たちは、「INFRASTRUCTURE+LIFE+INNOVATION」を企業理念に掲げ、アルゴリズムとテクノロジーでこれまでのインフラを再定義し、未来の社会を支えるインフラを創造していくことをミッションにして活動しております。テクノロジーはいつの時代も、暮らしを豊かに、そして社会を大きく変えてきました。しかし世界は今、持続可能な社会の実現という課題に直面しております。

「未来につづく社会を実現するためには社会の基盤であるインフラにイノベーションを起こすからこそ、新たな未来が拓ける」

 私たちのテクノロジーでインフラを進化させ、そしてその先もつづく持続可能な社会をつくることを目指しております。

(2) 経営環境

 当社が事業展開している産業分野ごとの経営環境を次のとおり認識しております。

① 国内AI関連市場

国内AI関連市場では、先進技術やデジタル化を実現するソリューションの一要素としてAI技術の活用が進展しており、労働力不足の解消、人的コストの削減、新たなビジネスの創出を目的にAI技術を様々な業務に適用する動きが活発化しております。デジタル上でのデータ管理、業務活動のオンライン化等、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた機運の高まりに伴い、市場全体が好調に拡大してまいりました。

引き続きDXに向けた投資拡大の一環としてAI開発及び活用の内製化への取り組みが進展しており、PoC(Proof of Concept:概念実証)の段階から実稼働、運用・サポートの領域までPDCAサイクルを実現する企業が増加しております。COVID-19感染拡大対応に向けた各種システムの見直しも落ち着き、AI活用に向けた投資が一層拡大しております。

今後においても、アプリケーション機能の高度化や特定業務に特化したシステム活用を目的に投資が拡大するとともに、内製化に向けた潮流も一層強まっていくことが予測されます。特にAI基盤(プラットフォーム市場)が大きく伸長していくものとみられており、当社が関連するAIビジネスの市場規模(製造業、流通業、情報通信業、社会インフラ業の合計)は、2027年までに1.1兆円を超えると予測されております。

当社が関連する国内AIビジネスの市場規模


参照文献:富士キメラ総研:「2022人工知能ビジネス総調査」より当社作成

※国内AIビジネス市場の業種別市場動向において、製造業、流通業、情報通信業、社会インフラ業の数値を単純合算

② 国内脱炭素関連市場

 国内脱炭素関連市場では、日本政府が2050年カーボンニュートラルの実現に向けて「グリーン成長戦略」を策定しており、中でも成長が期待される産業として14分野が挙げられております。具体的には、ⅰ)エネルギー関連:①洋上風力、②燃料アンモニア、③水素、④原子力、ⅱ)輸送・製造関連:⑤自動車・蓄電池、⑥半導体・情報通信、⑦船舶、⑧物流・人流・土木インフラ、⑨食料・農林水産、⑩航空機、⑪カーボンリサイクル、ⅲ)家庭・オフィス関連:⑫住宅・建築物/次世代型太陽光、⑬資源循環、⑭ライフスタイルであります。政府はこれらの施策による経済効果を2030年に年約140兆円、2050年には年約290兆円と見込んでおり、目標年度(2050年度)に向けて企業のグリーン投資が長期的に活発化していくとみられております。民間企業においても大企業を中心にこれらの政策に歩調を合わせて研究開発等が進められております。(出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」)

ただし、これらの技術革新や社会インフラにおいては、急激な変化に伴う社会混乱を避けるためにも、既存の技術や設備等との併用並びに緩やかな移行が行われるものと推測されます。当社の持つ最適化技術は、各企業の判断をサポートする有効なツールになるものと考えております。

③ 電力・エネルギー関連市場

 電力・エネルギー関連市場では、環境問題への意識の高まりと需給バランスの変化に伴い、価格競争やエネルギー貯蔵技術の急速な変化が起こっております。近年では、AIによってその効率化の監視やコントロールが行われるようになってきております。ただし、これには多額の投資が必要とされており、この分野における技術の成長を妨げる最大の課題の1つとなっております。また、日本政府によるグリーン成長戦略でも示されているとおり、水素や原子力といったエネルギー開発が注視されており、今後もその重要性は高まるものと推測されます。これらを踏まえ、電力及びエネルギー市場においては、発電量、備蓄量、原材料等の輸送に係る各種計画の最適化が重要となり、これを実現するための最適化システムの需要は高まり続けるものと考えられます。(参考:iCrowdNewswire「エネルギー・公益事業市場のAIは、2026年までに45億ドルに達すると予測」)

④ サプライチェーン関連市場

サプライチェーン関連市場では、調達、製造、在庫管理、輸送とロジスティクス、カスタマーサポートサービス等、分野ごとの問題や課題に対応しつつ、サプライチェーン全体での最適化への取り組みが始まっております。AIベースのシステムによるサプライチェーンの意思決定、プロセスの自動化、さらに分野ごとのAI適用とサプライチェーン全体でのAI適用が相互に関連することにより、サプライチェーン関連市場全体でのAI技術採用の加速化が進んでおります。(参考:株式会社グローバルインフォメーション市場調査レポート:「サプライチェーン向けAI(人工知能)の世界市場の予測 - アプリケーション別、タイプ別、機能別、エンドユーザー別、地域別:2021年~2028年」、「サプライチェーンマネジメントにおける資産追跡とAI市場(2021年~2026年)」、「世界のサプライチェーン管理(SCM)における人工知能の成長機会」)

⑤ スマートシティ関連市場

スマートシティ関連市場では、ICT等の情報通信技術やAI等の情報処理技術の進展に伴い、交通や人流等の都市に関する様々なデータを活用し、都市の課題を解決していくスマートシティへの注目が高まっております。また、都市におけるデータの収集・分析は加速し、急速にスマートシティが整備されていくと考えられ、既に様々な取り組みが始まっております。都市内でサービスを提供するための共通機能(認証技術や画像解析技術等)やインフラ管理体制(クラウド環境、カメラやセンサー等の機器を含む)の整備等に関する市場は、2018年から2025年の間に5,000億円拡大すると予測されております。(出典:国土交通白書2020)

(3) 中期的な経営戦略

当社は社会インフラ領域で人々の生活に変革をもたらすことを目指し、主にAIアルゴリズムの技術を用いた「計画最適化」の研究開発と社会実装を通じて様々な社会問題を解決し、より良い未来の実現に貢献するべく事業を展開しております。社会インフラ領域において、当社は電力・エネルギー分野、物流・サプライチェーン分野、都市交通・スマートシティ分野の3分野に注力しております。電力・エネルギー分野1社当たりの売上高は3.0兆円(国内電力事業会社上位10社(注1)平均売上。出典:2022年度決算短信)、物流・サプライチェーン分野1社当たりの売上高は1.5兆円(国内物流事業会社上位10社(注2)平均売上。出典:2022年度決算短信)であり、上位各社の事業規模が大きい市場であります。また、国内製造業企業数は34万社(出典:令和3年経済センサス)であり、母数が大きい市場であります。なお、都市交通・スマートシティ分野については、まだ市場が形成されていない状況であるにもかかわらず、2025年度には約1.2兆円の市場規模が想定されており、当社が関与可能な5G関連以外のスマートシティにおけるシステム関連市場だけでも9,240億円となっております(出典:国土交通白書2020)。

現在当社がサービスを提供している各分野における計画最適化のソリューションは、顧客のコア業務である計画業務に関わっており、企業活動の中心的な業務をサポートするという性質上、今後そこから派生する様々な計画業務に拡張・展開していくことが可能となります。また、計画最適化は高度な技術を要求されるため、一般的なITベンダーの参入障壁が高い分野であります。当社はそのような市場環境と、顧客ニーズに対してアルゴリズムの技術を用いた計画最適化ソリューションを展開することにより事業成長を目指してまいります。加えて、各分野における不特定多数の企業に対して、計画最適化システムをSaaSにて提供するインダストリークラウドやAIによる開発の半自動化の研究開発、最適化技術を用いた材料開発等、関連領域の研究開発を進め、事業成長の加速に繋げてまいります。

(注) 1.国内電力事業会社上位10社は、東京電力ホールディングス株式会社、株式会社JERA、関西電力株式会社、中部電力株式会社、東北電力株式会社、九州電力株式会社、中国電力株式会社、電源開発株式会社、北海道電力株式会社、四国電力株式会社となっております。

2.国内物流事業会社上位10社は、日本郵政株式会社(郵便事業)、日本郵船株式会社、ヤマトホールディングス株式会社、日本通運株式会社、SGホールディングス株式会社、株式会社商船三井、川崎汽船株式会社、ロジスティード株式会社、近鉄グループホールディングス(国際物流事業)、センコーグループホールディングス株式会社となっております。

(4) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、フリー・キャッシュ・フローの拡大が企業価値向上に寄与するものと考えており、中長期かつ持続的な成長を実現するため、取引企業数の拡大とCLTVの向上を重視しております。CLTVの向上は、取引先にAIエンジン開発、業務システム実装、運用・サポートまでを総合的に提供し、中長期的な関係を構築することを意味しており、取引企業数の向上と相まって、ストック型売上の拡大につながっていくことから、中期的かつ持続的な成長の実現に寄与するものと考えております。

また、営業利益の持続的成長を実現するため、売上高成長率及び営業利益率を企業経営の基本的な指標としつつ、それらに加えて、最先端のテクノロジー企業で在り続けるために、エンジニアの有償稼働率を一定の水準に抑え、研究開発、能力開発に時間を充てることができるようにしております。

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等

 当社の対処すべき主要な課題は次のとおりであります。

① 開発体制の強化

 安定的かつ着実な事業拡大を図る上では、既存顧客の契約を継続することや、案件数等が増加した場合においても、収益率を高水準に維持し、かつ顧客サービスのパフォーマンスを維持・向上することが重要であると考えております。そのために、優秀な人材の積極的採用、開発プロセスの継続的見直し、社内におけるノウハウ共有や教育訓練等の実施のみならず、エンジニアが能力を十分に発揮できる環境づくりも含めて、より強固な開発体制の構築に取り組んでおります。

② 顧客基盤の拡大

当社は、サービスをユーザへ直接提供しておりますが、今後も顧客基盤の拡大が課題であると認識しております。ウェビナー開催、展示会出展及びインサイドセールス等による新規顧客獲得を通じて、顧客基盤の拡大を図っております。引き続き、既存顧客の成功例も活用し知名度向上を図るとともにマーケティング活動を強化することで顧客基盤を拡大してまいります。

③ 既存顧客へのアップセル・クロスセル(注3)

当社の顧客は、電力会社や海運会社等の売上規模が大きい企業が多く、多種多様な計画を有しております。日次・週次・月次・年次といった様々な期間の計画や、電力会社で例えると電力需給、燃料調達、メンテナンス、期間・ロバスト最適、火力・連接水系最適、入札といった様々な種類の計画があり、期間と種類を掛け合わせた数だけ計画があります。1つの計画にとどまらず、その他の計画に対しても最適化の範囲を拡張し、戦略的にCLTVを最大化していくことにより当社の売上を拡大することが、当社の成長にとって重要な課題と考えております。

④ ストック型売上比率の増加

 当社は、AIエンジンの開発(AI開発)、AIエンジンを搭載した業務システムの顧客への導入(プラットフォーム開発)、運用・サポートの順でプロジェクトを進めるビジネスモデルを展開しております。当該ビジネルモデルにおいて、AI開発及びプラットフォーム開発は、都度、開発フェーズごとに顧客と合意する対価及び期間にて売上を計上するビジネスモデルであり、「フロー型売上」と位置付けております。他方で、運用・サポートは、当社が提供するシステムのスイッチングコストの高さから複数年の契約が見込めるビジネスモデルであり、年間を通じて一定の売上を計上する「ストック型売上」と位置付けております。当社は、新規顧客獲得や既存顧客へのアップセル・クロスセルを展開してAI開発及びプラットフォーム開発というフロー型売上を拡大させることで、その後の運用・サポートというストック型売上の拡大を図り、安定した成長と収益を確保することが必要であると考えております。特にインダストリークラウドによる新規顧客開拓を通じてストック型売上の拡大を図ってまいります。

⑤ 資本構成の最適化

当社は、これまで主力事業であったエネルギーソリューション事業からAI開発事業への事業転換を進めるため、財務上の安全性を重要な経営課題の1つとしてまいりました。現在は、AI開発事業の単一セグメントになり、計画最適化のシステムに対する運用・サポートというストック型売上が堅調に推移しております。このことから財務リスクは低下基調にあり、今後においては借入金等の有利子負債の有効活用を通じて資本コストを低下させ、資本構成の最適化という観点も踏まえ、企業価値向上を目指してまいります。

⑥ 新技術への対応

 当社が強みとするAI関連の技術は、将来的な利用可能性の高さから世界的に研究開発が活発に行われております。このような事業環境の下で当社が事業を継続的に拡大していくには、新技術動向の把握と新技術への適時対応が必要であると考えております。このような考えに基づき当社は2017年より量子コンピュータ上で動作する量子アルゴリズムの研究開発を行っており、複数の特許を出願しております。今後さらに増大していく計算量への対応策として先行して開発成果を実用化させることにとどまらず、様々な分野の新技術動向を注視し当社の成長に繋げてまいります。

⑦ 内部管理体制の強化

 当社は、事業内容の進化により、事業・組織両面での成長を続けている段階にあって、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。このため、経営体制の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するため、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでおります。

⑧ 情報セキュリティの強化

 当社は、AI開発、プラットフォーム開発、運用・サポートの遂行過程において、秘密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、情報セキュリティ管理規程等に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施やシステムの整備等を継続して行ってまいります。

⑨ 脱炭素社会実現への貢献

 当社が注力分野としている電力・エネルギー分野、物流・サプライチェーン分野、都市交通・スマートシティ分野はいずれも計画最適化により化石燃料の消費を削減することが可能であり、顧客のコスト削減と併せて環境保護に貢献できる分野となります。当社のAI技術をもってより多くの顧客の計画最適化を実現し、脱炭素社会実現への貢献を目指します。

(注) 3.アップセル・クロスセルとは、1つの計画にとどまらず、その他の計画に対しても最適化の範囲を拡張することを指します。

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