クリングルファーマ 【東証グロース:4884】「医薬品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「難治性疾患治療薬の研究開発を行い、難病に苦しむ患者さんに対して画期的な治療手段を提供し社会に貢献すること」を企業理念とし、組換えヒトHGFタンパク質の研究開発によって創薬イノベーションを起こすことが事業機会の創出・獲得につながると考え、組換えヒトHGFタンパク質プロジェクトに経営資源を集中し、事業展開をしております。希少疾患を主な対象疾患とし、臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社開発により自社で医薬品製造販売承認を取得することを基本方針としております。
(2)会社を取り巻く経営環境
製薬業界におきましては、高齢化に伴う医療費の増大に対応してジェネリック医薬品による代替が進むとともに、薬価改定期間が短縮され、高額医薬品の薬価が著しく低下しております。また、臨床試験の大規模化等に起因する新薬開発のためのコスト増大により、国内外での製薬企業の合従連衡が進みM&Aによる企業規模が拡大するとともに、自社創薬開発において重点領域の絞込みが行われており、社外から開発品目を導入する動きも活発化しております。
一方、新薬開発については、対象患者が多く、将来安定した多額の収益が得られるいわゆるブロックバスター医薬品から、特定の患者群に効果的な治療が行える医薬品の開発に移行しており、経営資源が特定分野に集中し、短期に意思決定が行われる創薬ベンチャーがその中心的役割を担うと言われております。これに対応すべく、政府は、厚生労働省や経済産業省の中央省庁を中心に、日本発の創薬を積極的に支援するため、特に、創薬ベンチャー支援の取り組みとして、医療系ベンチャー・トータルサポート事業(MEDISO)の開始や「伊藤レポート2.0 バイオメディカル産業版」の作成がなされております。また、日本国内での創薬を促進するため、医薬品の条件付き早期承認制度や先駆的医薬品指定制度が法制化されました。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は創薬バイオベンチャーとして当社開発品の実用化に向けて、研究開発を促進しておりますが、継続的な売上を計上する段階には至っておりません。従って経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の設定はしておりません。
しかしながら、開発の進捗を経営目標とし、その達成状況を今後の利益計上に至るまでの会社経営の指標と考えております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、創薬バイオベンチャーとして、難治性疾患を対象とした組換えヒトHGFタンパク質の研究開発を行い、医薬品として実用化すべく事業を推進しております。
一方で医薬品としての事業化は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、当社は継続的な営業損失を計上している状況にあり、すべての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。
このような事業環境下、当社は、以下の点を対処すべき課題として取り組んでおります。
① 進行パイプラインの開発の促進
当社は、国内臨床パイプラインとして難治性神経疾患である脊髄損傷(SCI)急性期、線維化疾患である声帯瘢痕(VFS)及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬の開発を行っております。
脊髄損傷急性期については、第Ⅲ相試験の患者組入れは2023年4月に完了し、最終症例の経過観察は2023年10月に終了しました。その後、データ固定・解析を経て2024年2月に速報結果を得ました。今後、総括報告書を完成させ、医薬品としての製造販売承認申請を目指して取り組んでまいります。また、脊髄損傷急性期を対象とする米国での臨床開発及び製造開発(組換えヒトHGFタンパク質の製造法効率化)を資金調達の主たる目的とし、2023年9月に第13回新株予約権の発行を行い、2024年5月に全ての行使が完了しました。
声帯瘢痕については、第Ⅲ相試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)の治験計画届書をPMDAに提出し受理され、2022年11月に京都府立医科大学附属病院において治験を開始しました。2023年5月には、久留米大学医学部附属病院、東北大学病院、川崎医科大学附属病院、日本大学病院を治験実施医療機関として加え、2024年5月には、新たに山王メディカルセンターを追加し、現在合計6施設で症例登録を推進しております。なお、治験の実施費用並びに治験薬の製造及び商用製剤の開発費用の調達を目的として、第10回新株予約権の発行を行い、2022年7月に全ての行使が完了しました。さらに、本プロジェクトは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」課題として採択され、公的資金の活用も進めております。
ALSについては第Ⅱ相試験(医師主導治験)の患者組入れを終了し、2021年12月に最終症例の最終観察日が終了しております。その後、データ解析が進められた結果、主要及び副次評価項目に関して実薬群とプラセボ群の間で統計的な有意差は認められませんでした。一方、実薬群において進行が遅い症例もあり、本試験結果の解釈には、さらに詳細な解析が必要と考えております。2024年4月には、東北大学と、本第Ⅱ相臨床試験の追加解析として、検体試料のバイオマーカー解析に関する共同研究契約を締結しました。本共同研究によって、効果の検出しやすい患者集団の特定など、次相試験のデザイン策定に重要な情報が得られることが期待されます。
② 新たなパイプラインの開発
当社は前述の3件のパイプラインのほか、米国において急性腎障害の第Ⅰa、Ⅰb相の臨床試験を終了しております。現在、資金的観点から当該疾患に対する開発を一旦中止しておりますが、資金的余裕が出た段階で再開する計画であります。また、多様な生物活性を持つHGFではその他多くの治療の論文が公表されており、今後の企業価値最大化の観点から、これらに対する医薬品を開発するパイプラインを新たに立ち上げる必要があります。
また、組換えヒトHGFタンパク質の臨床試験を複数実施した当社のこれまでの知見をもとに、新たなバイオ医薬品の開発等、難治性疾患のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上のためのパイプライン開発を行ってまいります。
③ 原薬の量産・供給体制の確立
当社は現在、前述の4件の臨床パイプラインを開発中でありますが、これらのすべてが治療薬として実用化された場合、HGF原薬の量産体制を強化する必要があります。また、当社の提携先(クラリス・バイオセラピューティクス社)において組換えヒトHGFタンパク質を用いた眼科領域での治療薬の開発が行われており、同社にHGF原薬を供給する契約を締結しております。当社は2023年9月に同社と業務提携し、組換えヒトHGFタンパク質の製造法効率化に着手いたしました。今後のグローバルでの必要量増大に対応し、全世界での安定供給を目指すことを目的としております。
④ 財務体質の強化
当社は創薬バイオベンチャーであるため、研究開発費を補うための十分な収益を得るまでに長期の時間を要します。そのため、資金的余裕を生じさせることが困難であります。
しかしながら、研究開発の促進を図るためには十分な資金を研究開発に投入する必要があることから、今後も引き続き、増資はもとより、HGF原薬供給や事業提携(共同開発等)による収益計上により、財務体質の強化を図ってまいります。
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