クミアイ化学工業 【東証プライム:4996】「化学」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創立当初より安全で環境負荷の少ない農薬の開発に傾注し、国産第1号農薬の開発・製品化以来、国内のみならず、世界各地で自社開発品を中心とした製品の普及を進め、「いのちと自然」を守り育てることをテーマに、世界規模での農作物の生産性向上に貢献できるよう取り組んでおります。
当社グループは、事業の中核をなす農薬の研究開発を根幹として、効率的な経営資源の投入を図ります。また、生産、物流、販売の連携を図り、収益本位の経営に徹底し、売上、利益の確保、増大ができる企業体質を確立することを経営の基本方針としております。
(2) 目標とする経営指標
今後も持続的な成長を続け、収益力の一層の強化を目指し、企業価値の向上につなげていくため、当社グループは、「売上高」、「営業利益」ならびに株主資本及び総資本の運用効率を示す指標である「自己資本利益率(ROE)」等を重要な指標として認識しております。
中期経営計画における2023年10月期の目標は、売上高126,000百万円、営業利益9,800百万円、自己資本利益率(ROE)7.3%と設定しております。
(3) 経営環境
農薬を取り巻く環境に関しては、中国を中心とした海外の景気減速や地政学的リスク、燃料費の高騰の影響を受けた一方で、世界的な人口増加などを背景に食料需要の拡大が見込まれることから、中長期的には市場が拡大すると予想されております。
国内では農業従事者の高齢化・人手不足による耕作面積の減少など依然として課題が多くありますが、みどりの食料システム法が2022年7月に施行され、環境負荷低減や労働生産性向上に向けた取り組みが活発化しております。
新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、経済活動が徐々に正常化、緩やかに景気回復が続いておりますが、原材料価格の高騰や為替相場の変動もあり、今後の動向に注視する必要があります。
(4) 中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
中国を中心とした海外の景気減速の可能性や、燃料や原材料価格の高騰などによる物価高、及びウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスクの高まり等により、先行きは依然として不透明な状況が続くことが予想されます。
当社グループの中核事業である農薬及び農業関連事業は、世界の人口増加に伴う食料需要の増加や穀物価格の上昇などを背景として今後も拡大するものと考えられますが、上記のような不透明な状況や流通在庫の増加に起因した世界的な在庫適正化の動きを背景に、市場環境は一層厳しさを増しております。
このような状況において当社グループでは、2048年度に迎える100年企業としてのあるべき姿を視野に入れて策定した新中期経営計画「Create the Future ~できる。をひろげる~」(2024年10月期~2026年10月期)を実行していくことで、企業価値の向上に努めてまいります。
また、クミアイ化学グループ企業基本理念のもと、2021年11月1日付で制定した「サステナビリティ基本方針」ならびに、種々のESG課題に対処するため、その下に制定した10の基本方針に基づき、サステナビリティ経営を推進いたします。コア事業である農薬及び農業関連事業では、日本政府が2021年5月に策定した持続可能な食料システムの構築を目指す「みどりの食料システム戦略」、EUの「Farm to Fork戦略」への対応を継続して進めてまいります。また、化成品事業では、人々の生活に役に立つ、そして豊かにする材料の供給を通じて社会への貢献を図ってまいります。
国内販売部門におきましては、水稲用除草剤の「エフィーダ剤」及び「ベンスルフロンメチル剤」の更なる普及基盤の拡大により、水稲一発処理除草剤市場におけるシェア1位の維持を図ってまいります。また、水稲用殺菌剤「ディザルタ剤」の育成と拡販に注力するとともに、スマート農業推進のための継続的な取り組みを進めてまいります。
園芸剤分野では「ピリベンカルブ剤」など自社開発剤の推進活動を強化するとともに、マーケティング戦略に基づく新規導入剤の早期最大化に取り組んでまいります。
さらに、当社微生物農薬であるエコシリーズの再プロモーション等により、「みどりの食料システム戦略」で求められる環境負荷の低減に貢献してまいります。
海外販売部門におきましては、事業の中核をなす「アクシーブ剤」について米国、ブラジル、オーストラリア、アルゼンチン等の主要市場において新規混合剤の開発を推進し、適切な販売促進支援を行うとともに、様々なジェネリック品対策を施すことで、継続的な販売拡大・維持を図ります。同時に、一部の地域で流通在庫が増加していることから、在庫の適正化を図っていきます。また、「エフィーダ剤」の韓国での販売拡大、及びその他アジア、欧米での開発、「ディザルタ剤」の韓国における新規混合剤の上市、販売推進を行います。
今後も自社製品の普及、技術指導を通して、世界の農業の生産性向上と生産者の収入増加へ寄与してまいります。
特販部門におきましては、自社農薬製剤技術の有効活用による新規製剤受託加工品目の獲得、「エフィーダ剤」、「ベンスルフロンメチル剤」等の自社開発品目の拡充により、売上・利益の最大化を図ってまいります。また、自社原体を他社メーカーに向けさらに導出するべく、販売ルートの多様性確保を図ってまいります。
化成品事業におきましては、アラミド繊維原料となるクロロキシレン系化学品の更なる成長への展開と、ビスマレイミド・アミン硬化剤・産業用薬品・発泡スチロール類等の拡販、市場動向に合わせた受託製造ビジネスの拡大により売上・利益の最大化に努めてまいります。また、研究開発部門及びグループ化成品事業の連携強化と推進による高付加価値な新規ビジネスの創出により、化成品事業領域の拡大を図ってまいります。
その他の事業におきましては、建設業では、自社ブランド確立と一般顧客に対する認知度向上に取り組んでまいります。印刷事業では、顧客ニーズに対するサービスの向上に努め、品質の維持向上ならびに更なる生産工程の効率化を図ってまいります。物流事業では、ホワイト物流推進運動の継続とモーダルシフト・輸送網の集約等の物流効率化や機械化・自動化の推進に加え、工場・倉庫の屋根等への太陽光発電設備の設置、廃食油や廃動植物油等を原料として製造されるリニューアブルディーゼルの利用による環境負荷低減も図ってまいります。
生産資材部門におきましては、原体・製剤の効率的生産、製造条件改善による原価低減、効率的生産のための設備投資と工場機能の強化に取り組んでまいります。また、温室効果ガス排出量削減や廃棄物削減を加速し、よりクリーンな工場の実現を図ってまいります。調達に関しては、ホワイト物流推進運動への協力のため発注の早期化を含めた資材調達計画を立案、実行してまいります。
研究開発部門におきましては、従来の化学農薬に加え、微生物農薬、バイオスティミュラント等の開発により「みどりの食料システム戦略」、EUの「Farm to Fork戦略」にも対応した、環境にやさしく自然と調和した新たな製品の創出に取り組んでまいります。新規殺ダニ剤「バネンタ」と、果樹やバラの根頭がん腫病防除用の微生物農薬「エコアーク」を開発中で、国内の上市に向けた準備を進めており、継続して海外評価も進めてまいります。
農薬事業の中核をなす「アクシーブ」の新規混合剤、新製剤開発によるジェネリック品との差別化や「エフィーダ」の適用拡大、「ディザルタ」の混合剤開発等による販売の最大化を目指し、グローバルでの製品開発を継続するとともに、原体製造の最適化による利益性改善も進めてまいります。また、有機フッ素化合物(PFAS)規制を見据えた創薬研究を進めるなど、研究段階から環境負荷低減を視野に入れた製品開発に一層取り組んでまいります。
2021年より建設を進めてまいりました化学研究所Shimizu Innovation Park(ShIP)は2023年10月より本格稼働を始めました。静岡県内に分散していたプロセス化学研究センター、製剤技術研究センター、創薬研究センターを当社発祥の地である静岡市清水区の旧自社工場敷地内に建設した化学研究所に統合し、そのシナジー効果により、新農薬創製、製品化研究のスピードアップと更なる研究開発分野の領域拡大を目指してまいります。
サステナビリティ経営におきましては、当社のコア事業である農薬及び農業関連事業に深く関わる気候変動や環境負荷低減に対する取り組みとして、当社グループで排出する温室効果ガス排出量を2030年までに2019年比30%削減とする目標を掲げており、CO₂フリー電力の導入やCO₂排出量の少ない燃料への転換を進めており、さらに継続的な削減を進めてまいります。また、生物多様性への貢献として水資源や廃棄物の適正な管理と削減、生物科学研究所近隣でのビオトープの造成にも取り組んでまいります。また北海道福島町の自社保有林での植樹・育樹活動に取り組んでおり、これにより生じた間伐材を材料とした輸送用パレットを製作及び活用することで、本来、間伐材廃棄により生じるはずのCO₂排出量の削減や輸送に携わる作業者負担の軽減に貢献してまいります。
社会に関わる取り組みとして、当社は国連グローバル・コンパクトに2023年9月18日に参加企業として登録され、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野に関わる10原則を支持し、実践してまいります。また、人的資本の強化を目指した人財戦略として、当社の期待する人財像を設定し、その期待する人財像を確保するため、採用、育成、配置/キャリア、人事制度、評価、報酬、ダイバーシティ、ワークライフバランスの課題別に人事施策案を策定し、取り組んでまいります。
当社では各自が「夢」をもって、それに向かって努力し成果を上げることで、達成感・充実感を味わう、つまり幸せになれるという流れ「幸せの三角形」を掲げております。この「夢」と「幸せの三角形」をスローガンとし、2024年度は、当社グループの新中期経営計画の初年度としての施策を着実に実行してまいります。そして、当社が設定した100年企業としてのあるべき姿である「独自技術で豊かなくらしを支え自然と調和した社会の持続的発展に貢献するフレキシブルで存在感のある企業グループ」を目指してまいります。
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