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【東証プライム:9279】「小売業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「シアワセを、自分から。」という企業理念の下、当社グループの直営店事業部門、プロデュース事業部門のお客様はもとより、当社グループの従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関等、ステークホルダーの皆様にシアワセを届けてまいります。当社グループでは「元気と笑顔と〇〇で、シアワセを届ける。」というミッションを従業員に与え、それぞれの立場、役割に応じて「〇〇」での部分を自ら考え、シアワセを届ける行動を促しております。
当社グループでは、直営店事業部門において、いつも美味いと言っていただける味の追求は勿論のこと、ご来店いただいたお客様に対して、エンターテイメント性や笑顔が溢れる店舗空間において、きめ細やかな気遣いを感じていただけるサービスを提供しております。また、プロデュース事業部門においては、当社グループに蓄積された繁盛店ノウハウをプロデュース店に惜しみなく注ぎ、常に美味しいラーメンが提供される地域で愛される店舗づくりに貢献しております。
当社グループにおける、このような取り組みを通して一人でも多くのお客様に数多く足を運んでいただき、お客様に満足していただくことで、当社グループとしての事業の拡大を図り、企業価値の向上につなげてまいりたいと考えております。
(2)経営環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍前の正常な経済活動を取り戻しつつも、外国為替市場においては歴史的な円安が続き、輸入産品の価格高騰に端を発するインフレが進む状況下で推移してまいりました。
国内景気は、個人消費がコロナ禍で積み上がった過剰貯蓄の取り崩し等により、コロナ禍前の水準を取り戻す堅調な動きを見せておりますが、円安状況が継続する中で輸入産品の物価高の影響が少なからず生じていることから、回復基調は緩やかなものとなっております。一方、企業収益は、現下の円安状況を追い風として輸出企業の業績が堅調に推移しており、当連結会計年度における株式市場においては、日経平均株価がバブル崩壊前の1989年に付けた最高値を本年2月に34年ぶりに更新し、さらに7月には42,000円台の史上最高値を付ける等、国内景気の回復を期待させる状況も見え始めました。こうした経済状況の中で日銀は、3月にゼロ金利を解除し、7月には政策金利を0.25%に引き上げる施策を打ち出しましたが、8月に日経平均株価が史上最大の下げ幅を記録する等、株式市場へ影響を及ぼすこととなりました。
輸出入においては、為替市場において円安が継続していることから、円換算ベースの金額では輸出、輸入ともにコロナ禍前の水準を上回っております。輸出は、年初に発覚した一部自動車メーカーによる認証不正問題が生産停止、出荷停止等のマイナス影響を及ぼしたものの、年央にかけて各種停止措置が解除されたことによりその影響が限定的なものとなりましたが、当連結会計年度を通して製造業全体としては低調に推移することとなりました。輸入は、資源価格の値上がり、円安による輸入産品の価格押上げの影響により、輸入インフレを引き起こす状況にあります。そうした中で賃金は、深刻な人手不足に悩まされる宿泊、飲食等のサービス業を始め各産業において賃上げ圧力が高まっており、失業率が低水準で横ばいに推移する中、好調な企業業績を背景に大幅な賃上げを断行する企業が多数現れております。今春闘においては、ベースアップと定期昇給を合わせた平均賃上げ率は昨年を上回り、1991年以来33年ぶりに5%を超えることになりました。しかしながら、こうした賃上げ状況にあっても、インフレが進む環境下では実質賃金の減少を招き、個人消費の下振れリスクを依然としてはらんでおります。
こうした状況下、内閣府が発表した2024年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値(物価変動の影響を除いた実質の季節調整値)は、前期比0.2%増(年率換算0.9%増)と2四半期連続のプラス成長となりました。当該GDP速報値の押し上げは、前述の一部自動車メーカーにおける認証不正問題に伴う生産減少の反動に加え、所得環境の改善、政府の定額減税の実施等によりGDPの半分以上を占める個人消費が回復したことに起因しております。また、本年10月の訪日外国人客は、日本政府観光局(JNTO)によると単月として過去最高の331万人を記録し、前年同月期比31.6%増(コロナ禍前の2019年10月比32.7%増)となっており、円安の影響により日本の物価が外国人観光客にとって割安になったことから旅行費、宿泊費等への支出が増加しており、当該インバウンド消費の好調さもGDPの押上げに貢献いたしました。今後、現下の円安環境が継続し、訪日外国人の更なる増加、旅行単価の上昇や滞在日数の長期化がなされれば、2019年に訪日外国人の3割以上を占めていた訪日中国人もコロナ禍前の8割近い水準まで回復してきていることから、さらなるインバウンド消費の増加が期待できる状況にあります。
一方、世界に目を向けると、2022年2月のロシアのウクライナへの軍事侵攻から2年半以上が経過してもなお依然として終戦の糸口が見つからないロシア・ウクライナ戦争、また2023年10月に勃発し、現在も緊張が続くイスラエルとハマスの軍事衝突問題等、大規模紛争が解決されないままの状況にあります。そうした中で先進各国においてはインフレが進行しており、これに対して欧米の中央銀行はこれまで金利引き上げにてインフレ抑制を図る等、先進各国の景気を維持してまいりましたが、ここにきて、金利引き下げを検討、実施する状況に至っております。
米国においては、米商務省が発表した2024年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が年率換算で前期比2.8%増と前四半期の成長基調を維持し、10四半期連続でプラス成長となりました。GDPの7割近くを占める個人消費が前期比3.7%増と好調に推移しているものの鈍化傾向も見え始めております。飲食を中心としたサービス消費がコロナ禍前の水準に戻りつつありますが、米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)は、依然として高金利が継続する中で経済活動の鈍化が予想されることから、2024年9月に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)においてフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.5%下げ、4.75%~5.00%とする決定をしました。このようにインフレ抑制のために積極的に行ってきた政策金利のコントロールもGDP成長率が低下傾向にあること等により、利下げを実施することとなりました。
また、中国においては、中国国家統計局が発表した2024年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が物価の変動を調整した実質で前年同期比4.6%増(2024年1~9月期の9カ月間累計でのGDP速報値は前年同期比4.8%増)と政府目標の5.0%を下回る結果となりました。コロナ禍後、外食、娯楽、観光等のサービス消費が持ち直したものの、依然としてコロナ禍前の力強い経済成長が果たせていない状況にあり、その背景としては、個人消費の停滞と不動産市場の悪化が上げられております。中国政府が中央・地方政府債務残高の膨張回避を重視していることから、大規模な財政拡張には消極的な姿勢を示しており、経済成長が鈍化することとなりました。
こうした経済環境下、当社グループの属する外食産業は、国民生活がコロナ禍前の正常さを取り戻しつつある中で旅行、宿泊、飲食といったサービス消費が堅調な回復を図りつつあることから追い風の状況に移行しております。特に政府が各種入国管理規制を撤廃させたことにより、訪日外国人数が急回復しており、今後、一層のインバウンド需要の拡大が期待されております。足元の円安傾向も継続していることから、インバウンドビジネスにおいては、絶好のチャンスが到来している状況と言えます。一方で現下の雇用情勢は、労働逼迫の厳しい状況をもたらしており、外食産業においては、人手不足解消に向けての賃上げが不可避な状況に至っており、非正規労働者(パート、アルバイト)の時給も最低賃金の改訂等、上昇傾向にあります。
このような外食産業を取り巻く経営環境において、当社グループはコロナ禍前との対比において既存店売上高等の業績を堅調に伸長させており、加えてコロナ禍においても当社グループのラーメン業態の競争力を信じ、出店ペースを一切緩めなかったことがアフターコロナの成長軌道をより高いものといたしました。特に当社グループのラーメン業態力の評価を高めることとなったのが2022年6月に東京駅八重洲地下街にオープンさせた東京ラーメン横丁であります。複数資本のラーメン店を一堂に会する他の複合ラーメン施設(ラーメンコンプレックス)とは異なり、当社グループだけで繁盛7業態を展開できていることが高い評価につながっていると考えます。東京ラーメン横丁は、当連結会計年度においてもなお、各店舗ともに月間最高売上記録を更新する等、現在においてはコロナ禍期間も含めた数年にわたる当社グループの投資戦略、業態開発の成功を物語る施設となっております。さらに当社グループは、当該施設への複数店舗出店を成功に導いた業態開発力をさらに高めるべく、ラーメンマーケットにおけるマーケティング力、商品開発力の一層の強化を図り、今後も数多くの競争力ある業態を創り出し、有力マーケットに対して複数業態での新規出店を進めてまいります。
このように当社グループは、どのような経営環境であっても、これまで安定的な事業拡大を図ってきており、横浜家系ラーメン業態の「町田商店」、ガッツリ系ラーメン業態の「豚山」、油そば業態の「元祖油堂」といった競争力のある業態、ブランドに留まらず、次なる業態、ブランドの開発を常に進めながら、駅近立地、ロードサイド立地、商業施設内立地とあらゆるジャンルの出店立地を精力的に模索し、事業拡大を図ってまいりました。とりわけ、当連結会計年度において株式会社幸楽苑と交わした21店舗に及ぶ店舗継承契約を出店加速の追い風にしてまいりました。また、当社グループは、事業拡大に向けた各種取組みを進める一方、当連結会計年度においては、人件費等の運営コストの値上がりに対し、直営店舗にて提供する商品価格を見直さざるを得ない状況となり、採算確保のために最低限の価格転嫁(一部値上げ)を行ってまいりました。しかしながら、当該値上げによるマイナス影響は、現時点では確認されておらず、現在の積極的な新規出店状況においても既存店の来店客数の減少には繋がっていないという予想以上の好結果を生みだしております。
さらに、当社グループ直営店並びにプロデュース店への供給体制についてもビジネス効率、BCP(事業継続計画)等の総合的観点から、ここ数年、立地、生産品目等、生産体制の戦略的見直しを図っており、当連結会計年度においては、その一環として当期より生産を開始した神栖製麺工場(茨城県神栖市)が順調に生産数量を増やしております。この結果、製麺工場4拠点、チャーシュー工場1拠点、スープ工場1拠点と国内6工場体制がより強固なものとなりつつあります。当社グループでは、戦略的SCM(サプライチェーンマネジメント)の視点をもって物流効率、物流コスト、物流リードタイムの大幅改善を進めており、前年までに関東、中京・関西に物流倉庫を配備し、さらに、北関東・東北物流センターを新規開設する等、生産体制、物流体制の絶え間ない見直しを進めてきたことにより、直営店舗、プロデュース店舗に対して効率的な後方支援体制を整えるに至っております。また、当連結会計年度においては、店舗での提供商品の品質安定化を目指したIH機器への切り替えを順次進めるとともに、店舗内オペレーション、お客様の快適性を増すための店舗改装を積極的に行ってまいりました。
加えて、2024年6月に当社グループの創業の地である東京都町田市から若者が集う東京都渋谷区にある駅直結のサクラステージに本店所在地を移し、国内1,000店舗、海外1,000店舗の出店に向けての第二創業期に臨む強い意思表明を行いました。当社グループが出店する各種業態は、大幅な増店の中でも昨年度の既存店売上高および客数を維持する状況にありますが、最大の懸案は、新規出店加速、既存店の店舗クオリティ維持を両立させるための適正人員数を労働市場から遅滞なく確保していけるかという点であり、そのためにも渋谷に本社を構え、人材確保を適時適切に図っていく所存です。
以上のように、直営店やプロデュース店の出店戦略に留まらず、生産体制、物流体制、本社体制においてもグループ力強化を図ってまいりました当社グループは、コロナ禍前の正常さを取り戻した経済環境においても従業員の雇用確保、積極的な新規出店等、他の飲食業者と一線を画した事業活動を展開することができ、堅調な業績を確保することとなりました。当連結会計年度におきましては、国内の直営店、プロデュース店ともに店舗数を増加させることにより、売上拡大を図ることができました。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、国内事業のオーガニックな成長と海外事業の積極展開により、中長期目標として、“世界中に最高のラーメンをお届けできる企業”を目指し、2027年10月期を最終年度とした中期経営計画を策定し、以下の施策を重要テーマとして認識し、更なる企業価値向上を目指してまいります。
重点テーマ | 取組みの概要 | 関連指標 |
既存事業の拡大 | ・1店舗あたりの品質向上 | ・売上高成長率 ・ROE(自己資本当期純利益率) |
人材の確保 | ・採用力強化 | ・売上高成長率 |
出店力の強化 | ・モデル開発出店の推進 | ・売上高成長率 |
海外展開の加速化 | ・海外推進体制の整備 | ・売上高成長率 |
製造体制の強化 | ・製造コスト削減 | ・売上高成長率 ・ROE(自己資本当期純利益率) |
購買、 物流体制の強化 | ・物流コストの最適化 | ・売上高成長率 ・ROE(自己資本当期純利益率) |
DXの推進 | ・お客様の利便性向上 | ・売上高成長率 ・ROE(自己資本当期純利益率) |
サステナビリティへの取り組み | ・サステナビリティ経営の推進と開示 | ・売上高成長率 ・ROE(自己資本当期純利益率) |
(4)優先的に対処すべき課題
当社グループでは、持続的な成長の実現と収益基盤強化のため、以下の課題について重点的に取り組んでまいります。なお、成長戦略を構成する新規出店等の投資につきましては、営業活動から生じるキャッシュ・フローと金融機関からの借入を中心とする財務活動から生じるキャッシュ・フローで賄える見込みであります。
① 人材確保に向けた取り組み
当社グループの属する外食産業においては、人手不足による人材の奪い合いや人件費の上昇など、人材の確保及び定着に対して厳しい状況が続いております。人材確保につきましては、最重要経営課題であると認識しており、採用力の強化、離職率低下、教育システムの改良の面から、あらゆる角度からアプローチを行っていく所存です。具体的には、キャストからの正社員登用、外国人の採用及び教育、賃上げ、店内労働環境改善に一層重点的に取り組んでまいります。これらにより、新規出店を支える人材の確保と定着を実現してまいります。
② 購買・物流体制の強化
当社グループは食材を調達・加工・調理しお客様にラーメンを提供しておりますが、食材の調達においては、世界的なインフレによる価格高騰や天候不順や自然災害等による一部の食材の需給逼迫が懸念されます。店舗数が拡大してきたことにより、仕入量が増加しており、規模のメリットを生かした仕入条件の良化により、食材の確保、コストコントロールに取り組んでおります。また、当社グループは日本国内各地に直営店舗やプロデュース店舗を多数有しておりますが、出店地域の拡大とともに、配送の遅延による欠品リスクや配送コストの高騰による収益性の悪化が懸念されます。
配送においては、SCMの視点をもって物流効率、物流コスト、物流リードタイムの大幅改善を進めており、日本各地に4物流センターを配置し、配送の効率性を向上させるとともに、配送頻度・配送品質の向上にも取り組み、お客様に、クオリティの高いラーメンをなるべく安価に提供できる体制を整えてまいります。
③ サステナビリティへの取り組み
当社グループは「シアワセを、自分から。」という企業理念の下、直営店事業部門ならびにプロデュース事業部門のお客様はもとより、当社グループの従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関等、すべてのステークホルダーの皆様にシアワセを届けてまいります。現在の世界情勢に目を配れば、一部地域において戦争や紛争等のいたましい出来事が勃発しており、加えて、気候変動や食糧危機など様々な社会・環境課題にも直面しております。こうした状況下、当社グループにおいては、上述の企業理念に基づく精力的な事業活動を通して、こうした課題と真摯に向き合うことにより、持続可能な社会の実現、豊かな食文化の発展に貢献してまいりたいと考えております。さらには当社グループの持続的な成長や企業価値向上をもたらすべく、サステナビリティ活動にも積極的に取り組んでまいりたいと考えます。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、国内事業のオーガニックな成長と海外事業の積極展開により、中長期目標として、“世界中に最高のラーメンをお届けできる企業”を目指し、2027年10月期を最終年度とした中期経営計画を策定し、事業拡大並びに企業価値向上を目指し、成長性に収益性を加えて、投資収益性を重要な経営指標と位置付けております。
・売上高成長率 20.0%以上
・売上高営業利益率 10.0%以上
・ROE(自己資本当期純利益率) 20.0%以上
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