キーコーヒー 【東証プライム:2594】「食品業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1) ガバナンスとリスク管理
当社グループは、お客様、株主、従業員をはじめとする様々なステークホルダーの期待にお応えするため、役員や従業員が遵守すべきキーコーヒー行動規範やサステナビリティ関連方針を守り、持続的に企業価値を高めていきます。当社の取締役会は、当社業務に精通した業務執行取締役と、社外取締役3名を含む監査等委員である取締役で構成されており、経営上重要な事項の審議・決定及び業務執行の監督をしております。
サステナビリティに関しては、経営企画部管掌取締役の主導のもと経営企画部が総括し、サステナビリティ基本方針をはじめとしたサステナビリティ関連方針の策定、重要項目の特定、重要項目に対する課題(リスク・機会)の整理・識別・評価、目標設定及び取り組み内容を取り纏め、取締役会で審議・決定しております。執行部門のサステナビリティに関する取り組み状況は、年1回取締役会に報告され、取締役会が執行状況の監督を行ってまいります。
2022年度取締役会では、当社グループのサステナビリティ関連方針(考え方)として次の方針の新設及び改定、並びに温室効果ガス排出量削減目標を審議・決定しました。
・サステナビリティ基本方針(改定)
・環境方針(改定)、環境に配慮した商品開発の考え方(新設)、人権方針(新設)、責任ある購買・調達方針(新設)、サプライヤー・ガイドライン(新設)、人的資本に対する考え方(新設)
当社グループのサステナビリティに関する施策をより広範に推進していくために、これまでは経営企画部が統括の役割を担ってきましたが、2023年4月1日、その管下にサステナビリティ推進室を新設しました。サステナビリティ推進室は、重要項目に対する目標の取り組み状況を総括管理するとともに、環境変化に応じて、重要項目に関するリスク・機会の識別・再評価を関連部門と連携して行い、取締役会に報告してまいります。
重要項目の特定プロセスとして、経営企画部においてバリューチェーンを「商品企画」、「コーヒー生産国」、「原料調達」、「生産管理」、「販売物流」、「コミュニケーション」と捉え、それぞれに対するリスクと機会を踏まえ、重要項目の候補を抽出しました。
経営企画部は、そのプロセス評価を業務執行取締役5名と協議し、取締役会に報告しました。取締役会では、当社が社会や環境に与える影響度と中長期的な企業価値に与える影響度の2軸の観点より重要項目を特定しました。重要項目は、「地球温暖化への対応」、「環境負荷の低減」、「責任ある『調達』と『商品開発・提供』」、「従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進」、「コーポレート・ガバナンスの強化」に定めました。
(2) 戦略
① 温暖化、気候変動に関する事項
(イ) 地球温暖化への対応
人為行為による温室効果ガスの排出により地球温暖化が進行しており、パリ協定を受けて温室効果ガスの削減に向けた対応は世界で認識する共通の課題であり、早急な対応が求められています。
当社では、レギュラーコーヒーを中心とした事業を展開しており、気候変動による温暖化や自然災害による事業リスクを及ぼす可能性があることから、当社も地球温暖化への対応を行ってまいります。
(シナリオ分析の前提)
2022年度は、長期目標として産業革命前から地球の気温が1.5℃/2℃又は4℃上昇するシナリオを仮定として、気候変動による影響に関するシナリオ分析を実施しています。
1.5℃/2℃上昇シナリオ | 4℃上昇シナリオ |
社会全体が脱炭素に向けて変革を遂げ、温度上昇の抑制に成功するシナリオ ・炭素税導入など脱炭素の規制加速 ・バリューチェーン全体でエネルギー費用、 コスト上昇 ・消費者のエシカル消費が拡大 | 経済発展を優先し、世界の温度上昇とその影響が悪化するシナリオ ・異常気象等により農産物の収量や品質の低下による価格高騰 ・異常気象の頻発化により事業停止、停滞の恐れ ・熱中症対策の飲料需要、コーヒー文化の変化等による新たな市場拡大 |
※ 1.5℃/2℃上昇シナリオと4℃上昇シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)等から公表される気候関連シナリオの俗称で、各シナリオが示す温度に気温上昇を抑えるために必要な経済施策、またその温度上昇時に想定される環境被害などを示しています。
(1.5℃/2℃上昇シナリオ)
リスク・機会 | 考察 (▲リスク、●機会) | 重要度 | リスクへの 対応策 | ||
大分類 | 中分類 | 小分類 | |||
移行リスク | 政策と法 | 炭素価格の 上昇 | ▲国内外で炭素税が導入され、工場、営業所等でのGHG排出量に対して炭素税が賦課され、経費が増加。 ▲包装・原材料等に炭素税が転嫁され、売上原価が増加。 | 大 | ・燃料転換、省エネ推進 ・再生可能エネルギー利用 ・環境配慮型の製造方法や商品開発 |
移行リスク | テクノロジー | 低炭素な 新しい生産技術の開発 | ▲新技術に対する投資判断を誤ることで、短期間での設備更新が必要となり、製造原価が増加。 ▲新しい低排出技術への移行経費の増加。 | 中 | ・新たな製造技術の研究 ・GHG削減を考慮した効率化投資 |
移行リスク | 市場 | 環境に配慮した商品に対する消費者の嗜好の変化 | ▲環境配慮型商品の需要が増加するなか、消費者、取引先等への対応が不十分となり、市場の支持を獲得できない。顧客離れとなり収益減少。 | 中 | ・環境配慮型の商品開発を進める。 ・GHG排出量の少ない商品開発や責任ある調達の取り組みを推進させる。 |
移行リスク | 評判 | 地域社会のレジリエンスに配慮する企業への消費者の嗜好の変化 | ▲GHG排出量削減など環境への取り組みが不十分である場合、消費者からの企業イメージが悪化し、収益減少。 | 中 | |
移行リスク | 評判 | 気候変動の対応に対する株主の関心の拡大 | ▲気候変動への対応や情報開示への対応を怠ることによる企業評判および株価低下。 | 中 | ・気候変動対応に関する情報発信を強化する。 |
機会 | 商品、 サービス |
| ●GHG排出量の少ない商品・サービスの開発により、需要を獲得し、収益拡大。 → 消費者や取引先(BtoB,BtoC)との関係において、信頼を築き収益拡大。 | 中 | ・GHG排出量の少ない商品・サービスの開発を推進させる。(GHGの少ない製造、包材見直し等) ・環境配慮型の販売を強化し、市場拡大させる。 |
機会 | 資源効率 |
| ●バリューチェーン全体で、より効率的な輸送手段を使用。 ●より効率的な生産や流通プロセスを構築する。 → GHG削減に取り組むことで、運用コストを削減でき、価格競争力が強化され収益拡大。 | 中 | ・バリューチェーン全体でGHG削減を強化させる。 |
(4℃上昇シナリオ)
リスク・機会 | 考察 (▲リスク、●機会) | 重要度 | リスクへの 対応策 | ||
大分類 | 中分類 | 小分類 | |||
物理リスク | 急性 | 異常気象の発生割合・深刻度の増加 | ▲異常気象の発生割合・深刻度の増加により、有形固定資産(工場、事業所等)や在庫などの物理的資産が破壊され、操業停止による収益減少。 ▲輸送やサプライチェーンの中断、エネルギーや公益事業の停止がもたらされ、生産能力が低下し、収益減少。 | 大 | ・リスクの影響度に応じた対応策。 ・サプライヤーと情報連携を図る。 |
物理リスク | 慢性 | 長期的な気候の変化 (平均気温や降水等) | ・海外 ▲異常気象・気象パターンの変化により、コーヒー豆の生産量が減少し、調達困難となり原価高騰、収益減少。 ▲原材料生産拠点において、気候変動・気象パターンの変化(洪水・干ばつなど)の影響により、物流の滞りや海運輸送ルートの変更・貿易規制・関税などがもたらされ、原価が増加。 | 大 | ・コーヒー品種の開発、栽培技術の研究。 ・調達地域の多様化、 ・コーヒー配合技術の研究。 |
物理リスク | 慢性 | ・国内 ▲海面上昇リスクに伴い、施設(工場、事業所)撤退、資産への影響。 ▲リスクが高まることにより、様々な保険料が増加し、経費増加。 | 中 | ||
機会 | 商品、 サービス |
| ●影響度が少ないコーヒー生産地で収穫された生豆、品種での配合を用いて商品開発する。開発力による差別化を図り、収益増加。 ●気温上昇による、熱中症対策の商品開発(コーヒー、飲料等)し、収益増加。 | 中 | ・コーヒー栽培技術や研究成果を、新たなビジネスに繋げていく。 |
(ロ) 「コーヒーの2050年問題」に関する事項
農作物であるコーヒーは、環境変化の影響を受けやすく、地球温暖化の問題は、温度の上昇だけではなく、湿度の上昇や降雨量の減少など、様々な変化を引き起こし、コーヒー栽培にも影響を及ぼします。WCR(World Coffee Research)の報告書によると、気候変動はさび病等の病害や虫害による生産量の減少やコーヒー豆の品質低下をもたらし、2050年にはアラビカ種のコーヒー栽培に適した土地は現在の50%にまで縮小する可能性が指摘されています(コーヒーの2050年問題)。当社グループでは、「コーヒーの2050年問題」の影響を軽減すべく、コーヒー栽培の開発、持続可能な収穫ができるようコーヒー生産者の支援等の取り組みを推進します。
② 環境負荷の低減に関する事項
当社のレギュラーコーヒーの製造過程における省エネ化や製造工程での廃棄物リサイクル活動は、CO2削減にも貢献でき、商品包材使用量の削減や脱プラスチックへの取り組みは、消費者や取引先からの要望や期待があります。このような環境価値(Environmental Value)を高める商品開発を通じ、地球温暖化への対応と環境負荷の低減に取り組み、生物多様性を維持した、自然ゆたかな美しい地球を次世代に引き継ぐことが重要と考え、以下の取り組みを中心に推進します。
・包装容器に関するプラスチック使用量を削減(リデュース)
・持続可能な原料を使用した包装容器への転換(リプレイス)
・リサイクル可能な包装容器への転換(リサイクル)
・フードロス削減
③ 責任ある調達と商品の開発・提供に関する事項
当社は、原材料をグローバルに調達しており、当社グループ及びサプライチェーン上での人権、労働、環境、腐敗防止等の課題を認識し、課題解決に向けた取り組みが事業活動において不可欠だと認識しています。責任ある調達は、品質、機能、価格の条件だけではなく、人権、労働、環境、腐敗防止等の社会課題に関連する項目をも購買条件に取り入れるとともに、キーコーヒー行動規範や国際規範等を遵守し、2023年3月に「責任ある購買・調達方針」、「サプライヤー・ガイドライン」を制定しました。当社のみならず、サプライチェーン全体で課題解決していく必要があると考え、サプライヤーガイドラインをサプライヤーなどのビジネスパートナーに案内し、本内容に賛同いただけるようアンケートや面談等を通じてコミュニケーションを図り、社会課題に対する改善活動を実施してまいります。この取り組みを通じてサステナブルな調達を行い、ステークホルダーからのニーズを捉えた商品開発・提供に繋げていきたいと考えております。
④ 従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進に関する事項
当社は、持続可能な成長と発展には人的資本の価値を最大化することが重要であるとの認識のもと、人的資本に対する考え方及びそれに則った<人財育成方針><社内環境整備方針>を以下のとおり定めました。
(人的資本の考え方)
私たちは、持続的な企業の成長と発展を実現するために、従業員一人ひとりが持てる能力やスキルを引き出し、企業価値を最大化する経営に取り組みます。
企業・従業員の両者が、コーヒーのリーディングカンパニーとしての理念やビジョン、ミッションを共有し、しっかりとした帰属意識と相互の信頼のもと、共通する目的を果たしていくことで、人々の心にゆたかさが溢れる社会を創り上げることができると考えます。
従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進を図り、社内の環境や仕組みを見直すことで、様々な立場の従業員が主体性を発揮し、イキイキと働きがいを持って成長・発展し続けることのできる組織集団への進化を目指します。
<人財育成方針>
1.キーコーヒービジョンを実現し続けるために、企業と従業員が継続的な対話を通じてそれぞれの存在意義・価値を認め合うことで共に成長します。
2.主体的意欲を刺激するアップスキリングの機会を提供し、情報に敏感なビジネス人財及び専門性の高いコーヒーのプロを育成します。
3.従業員一人ひとりの多様性を受け止め、活躍を促し組織の発展に繋げることのできる、求心力のあるマネジメント人財を育成します。
<社内環境整備方針>
1.予測不能な変化が続く環境において企業の適応力と可能性を広げ続けるために、多様なキャリアイメージの形成及びその実現を長期的に支援します。
2.誰もが働きやすい職場環境とするために、有給休暇の取得率向上等、従業員の生活の基盤を安定的に確保するための施策を実施し、柔軟な働き方を促進します。
2023年4月、人的資本経営の取り組みに資する人財開発課を新設しました。併せて人財開発課のパートナーとして、人的資本経営に関する全社網羅性のある制度の改革と従業員への浸透を目的に、部門横断で人選した“ウェルビーイングプロジェクトチーム”を立ち上げました。この体制で、従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進に取り組んでまいります。
⑤ コーポレート・ガバナンスに関する事項
当社は、サステナビリティに関する取り組みを推進していくためには、適切なガバナンス・リスク管理体制の構築が不可欠と考えており、「コーポレート・ガバナンスの強化」を重要項目として掲げております。当社のガバンナンス・リスク管理の状況につきましては、4.コーポレート・ガバナンスの状況等(41頁)に記載のとおりです。
(3) 指標及び目標
■ 地球温暖化への対応
中期取り組みテーマ | 指標 | 目標 |
温暖化に適応した「コーヒー栽培の開発」 | ― | インドネシアの直営農園を中心に、コーヒーの栽培技術や次世代品種の研究について、WCR(World Coffee Research)やICCRI(Indonesian Coffee and Cocoa Research Institute)と協業し対応策を検討、環境変化に強いコーヒー栽培の開発に取り組む。 |
コーヒー生産者の支援 | ― | 協力関係のある生産者にコーヒー苗木の配布や農法を支援し、持続可能な収穫ができるよう支援活動。 |
温室効果ガス排出量の削減 | GHG排出量 | 2050年カーボンニュートラルを目指し、2030年までにScope1+2排出量を46%削減(2013年度比) ※2022年度の温室効果ガス削減進捗率は、 2023年10月頃ホームページにて公開予定。 |
■ 環境負荷の低減
中期取り組みテーマ | 指標 | 目標 |
包装容器の見直し | プラスチック 使用量 | バイオマスプラスチックへの置き換えを推進し、 2030年度までに自社製造NB商品のプラスチック使用量を重量換算で20%削減。(2018年度比) |
フードロス削減の推進 | ― | 2030年度までに、商品の賞味期限表示については、 年月表示を進める。(一部商品を除く) |
2030年度までに、品質優位を前提とし、商品の賞味期間延長を進める。 | ||
製造過程で生じる廃棄物のリサイクルの推進 | 食品リサイクル率 | 製造過程で生じる廃棄物のリサイクル率は、99%以上を維持。 |
■ 責任ある調達と商品の開発・提供
中期取り組みテーマ | 指標 | 目標 |
責任ある購買・調達の推進 | ― | 信頼度No1、最初に選ばれるコーヒー会社の実現に向け、2025年度中に一次サプライヤーへのサステナブル調達アンケート(SAQ)実施率100%を目指し、当社及びサプライチェーン全体で社会課題に対する改善活動を実施していく。 |
■ 従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進
中期取り組みテーマ | 指標 | 目標 |
人財育成 | 女性管理職比率 | 2025年度までに6.0%に向上させる。 (2022年度:4.0%) |
社内資格 『キーコーヒー コーヒースペシャリスト』取得率 | 継続的な試験の実施と意欲醸成及び育成によって、取得率を2022年度の15.7%から向上させコーヒーのプロ育成に力を入れていく。 ※対象者は正社員 | |
社内環境整備 | 有給休暇取得率 | 2025年度までに60%に向上させる。 (2019年度(新型コロナ感染症拡大前の実績)47.1%) ※対象者は正社員、嘱託社員(一般・定年再雇用) |
男性の育休取得率 | 2025年度までに50%に向上させる。 (2022年度:28.6%) ※対象者は、正社員・嘱託社員・短期契約社員(雇用1年以上の見込みを含む) | |
男女の賃金の差異 | 正規労働者(正社員・嘱託社員)について 2030年度までに80%に向上させる。 (2022年度:72.0%) |
※ 温室効果ガス排出量の削減は、連結グループの目標であり、それ以外は、提出会社の目標であります。
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