カヤバ 【東証プライム:7242】「輸送用機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上の実現を通してステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たすため、経営理念および以下の基本方針に基づき、取締役会を中心に迅速かつ効率的な経営体制の構築並びに公正性かつ透明性の高い経営監督機能の確立を追求し、コーポレート・ガバナンスの強化及び充実に取り組んでまいります。
<経営理念>
「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」
1.規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います。
2.高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。
3.優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。
4.常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先様・社会の発展に貢献します。
<コーポレートガバナンス基本方針>
1.当社は、株主の権利を尊重し、平等性を確保する。
2.当社は、株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーとの適切な協働に努める。
3.当社は、法令に基づく開示はもとより、ステークホルダーにとって重要または有用な情報についても主体的に開示する。
4.当社の取締役会は、株主受託者責任および説明責任を認識し、持続的かつ安定的な成長および企業価値の向上ならびに収益力および資本効率の改善のために、その役割および責務を適切に果たす。
5.当社は、株主との建設的な対話を促進し、当社の経営方針などに対する理解を得るとともに、当社への意見を経営の改善に繋げるなど適切な対応に努める。
(2) 経営環境
ポストコロナ社会へシフトし経済活動は持ち直すも、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢緊迫化を始めとする地政学リスクの高まりに加え、米大統領選挙の結果は世界の構図に影響を及ぼすことも想定されます。また、欧州や中国地域の景気減速影響もあり、需要予測の困難な状況が長期化しております。また、インフレリスク再燃懸念や為替の不安定さにより、依然として世界経済には不透明感が漂っております。
当社を取り巻く事業環境は、AC事業は電動化や自動運転化、また、AIやIoTの発展により移動や運搬の概念とは異なる新たな価値創造がされ、大きな変革期を迎えております。HC事業は建設機械業界の無人化や省エネ化のトレンドに対して、電子化・電動化・システム化による高付加価値化を求められております。特装車両事業では、トラックメーカーの減産による影響は回復傾向にある一方、生コンクリート出荷量や工事の仕事量は減少傾向が見られます。
一方、グローバルでの法規制の強化と企業のESGやSDGs、カーボンニュートラルに対する社会的な要求が急速に高まっております。更には、人口や社会の変化による働き方の多様化とグローバル化や経済成長に伴う賃金上昇の加速、デジタル技術の飛躍的進化に伴う業界の垣根を越えた連携や異業種からの参入による産業構造の変化など、当社を取り巻く環境は急速な変化を見せています。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、持続的な成長と企業価値向上の実現を通じて、ステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たす一方、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでまいりました。
2023中期経営計画2年目の2024年度は、依然として続くエネルギー、原材料価格の高騰、急激な為替変動等にさらされながらも、不適切行為の再発防止、規範意識とコンプライアンスは永続的な課題として実施しながら、「品質経営を極める~TQM(※1)を実践し、チームの力を向上~」をスローガンに、TQM活動を起点にスピードをあげて以下の方策を展開、推進してまいります。また、IoTやAIなどデジタル技術を活用した業務変革を進めており、デジタル変革推進本部を中心に変革を強力に牽引してまいります。
1.マネジメント
「全員参加のTQM活動」「規範意識の醸成・定着」「成長戦略」「革新的モノづくり」「目標に向けた絶え間ないコスト低減活動」「環境対応への取り組み」
当社の経営の根幹であります「規範意識の醸成・定着」につきましては、過去の不適切行為を忘れることなく、更なる規範意識の浸透と不適切行為の再発防止に取り組んでまいります。ガバナンスを強化し、グループ全体で高い規範意識を定着してまいります。また、免震・制振用オイルダンパーの適合化は2023年度末で約99%まで進捗いたしました。引き続き適合化完了に向けて対応を進めてまいります。
「成長戦略」における環境認識としましては、就業人口の減少が予測され、自動施工、電動化対応は必至であります。デジタル化の進展によりモノづくりや働き方改革への取組み、自動化、無人化、脱炭素化・省エネ化に向け電子化・電動化への技術対応など大きな変化と認識しております。将来への種まきも踏まえて、電動化に対応した製品開発と、その早期投入や、需要拡大が見込まれる成長市場へM&Aも視野に入れた積極的投資を進め、新たなビジネス創出・利益拡大に努めてまいります。
「革新的モノづくり」につきましては、加工から組立が完全に一貫となった自己完結革新工場の2030年の実現を目指す、Ship’30活動を進めております。革新ラインの要素技術開発、信頼性の高い設備の開発と導入、TPM(※2)活動を通じた設備維持管理体制構築による設備故障率低減、これらの取り組みはAI・IoT技術を駆使して2030年の実現に向けて取り組んでまいります。
「目標に向けた絶え間ないコスト低減活動」につきましては、デジタル技術を活用した間接部門の業務合理化を進めることで総就業時間を削減し、固定費低減を進めてまいります。また、資材やエネルギーの高騰、短期間での為替レートの大きな変動がある中、調達部門、生産管理部門や技術部門と連携を強化したVE・VA提案、部品標準化による原価低減、為替変動を柔軟に対応できる生産拠点と他国の競争力ある部品の活用を組み合わせた最適調達を推進し、変動費低減を図ってまいります。さらには、棚卸資産回転率の指標管理を継続し、全社棚卸資産圧縮を推進してまいります。
「環境対応への取り組み」としては、2030年に「CO2排出量 2018年度比 50%削減」、また、2050年にカーボンニュートラル(CN)の目標を掲げており、サステナビリティ委員会、ESG推進部、CN推進室を中心に目標達成に向けた取り組みを強化しております。2023年度にはCDP(国際NGO)による「気候変動分野」でB評価の認定を取得しました。引き続き人と地球に優しい製品づくりを推進するとともに、環境保全活動を積極的に推進してまいります。
これらの活動につきましては、「全員参加のTQM活動」を推進し、方針管理・日常管理・小集団改善活動により仕事の質を高め、目標達成に向けて取り組んでまいります。
(※1)TQM:Total Quality Management(総合的品質管理)の略で、製造部門のみならず全社的な業務改善へも発展させた管理手法
(※2)TPM:Total Productive Maintenanceの略で、ロスを未然防止する仕組みを構築し、部署を越えた全員参加での改善・維持活動
2.オートモーティブコンポーネンツ事業
「新しい挑戦を!」~顧客・社会・働くカヤバ人財が満足出来る商品の為に~
AC事業の2023中期経営計画は「新しい挑戦を!」をスローガンに掲げ、母機の電動化・自動化のトレンドに対し、新商品・改良商品の開発を促進するとともに、新領域への進出を図り、収益力向上だけでなく全てのステークホルダーのニーズを満たす挑戦をしてまいります。
具体的には、高機能・高付加価値商品である電子制御セミアクティブサスペンションのラインアップ拡充による販売拡大、自動運転のカギとなるステアバイワイヤシステムの技術の深耕、またe-Axle向けの電動ポンプや二輪車用車高調整システムの開発、さらに、将来への種まきとして電動油圧アクティブサス、フル電動サスペンションやステアリングとサスペンションの協調制御といった、全ての移動を快適にする技術に挑戦してまいります。また、地方行政への道路維持管理支援としてサービス提供を進めている「スマート道路モニタリング」のセンシング技術を活用、AIを用いた情報処理によりステアリングやサスペンションの開発や制御に応用してまいります。
一方、成長市場への進出によるシェア拡大や新規顧客開拓へ向けた戦略構築を行い、市場でのプレゼンス向上を図ってまいります。環境対応の観点からは、原料生成過程でCO2を吸収できる天然系の基油を用いた作動油開発に挑戦、万が一の漏出時にも生分解性を有し、さらには廃棄後の回収・リサイクル性まで訴求し、LCAの観点で環境負荷低減とCO2排出ゼロを目指します。
3.ハイドロリックコンポーネンツ事業
「“ゆるぎない信頼”をベースにした成長への再スタート」
2023中期経営計画においては「“ゆるぎない信頼”をベースにした成長への再スタート」をスローガンに掲げ、ボリュームゾーンである既存ビジネスと次期主力商品となる新たなビジネスを両輪にして活動を進めてまいります。既存ビジネスでは価格・品質・供給の各分野で市場におけるプレゼンスを示すことで、収益性とシェアの確保に取り組み、さらに、新たなビジネスでは環境・性能・情報の各分野で既存製品にない付加価値の創造につながる製品・サービスの市場投入を意識した体制構築を加速してまいります。
具体的には、シリンダ・モータといった既存製品軸での原価低減活動を事業の総力を挙げて推進し、市場シェアの拡大につながるコスト競争力の強化を図ります。さらに、将来の建機の電動化・自動化に向けた電子制御化・電動化・システム化の先行開発を進め、建機ショベル以外の製品市場参入にも挑戦してまいります。また、油圧機器の油状態診断システム開発では、将来の事業化を見据え、建設機械や工場設備で評価を進めてまいります。これは、センサ・通信機を取り付けた油圧機器をクラウドで結び、建設機械や工場設備などの油圧機器の作動油状態をリアルタイムに診断するシステムで、作動油の廃棄量低減で環境にやさしく、メンテナンス作業の効率化が図れるようになるものです。これらの新たなビジネスへの取り組みを進めて「成長」し、景気変動に強い事業構造を目指してまいります。
4.特装車両事業
「真のダントツミキサメーカーを目指す」
特装車両事業につきましては、お客様目線で活動し、顧客価値の創造により、「真のダントツミキサメーカーを目指す」ことを基本戦略とし活動してまいります。リニア新幹線や都市再開発等の建設需要を確実に取り込みながら、ドラム軽量化による積載量の増加、生コン打設作業時の安全対策、使い勝手の向上など、お客様のニーズを反映させた高付加価値製品の市場投入に向け、開発を進めてまいります。また、トラック電動化への対応といたしましては、国内初となるEV対応ミキサの開発を進めてまいります。サービス体制におきましては、パーツカタログ整備や部品発注のDX化によるアフターサービスの強化を推進してまいります。これらの取り組みにより顧客価値の創造を目指し、お客様の満足度向上に努めるだけでなく、当社の新たな収益基盤として、これまで培った技術・経験を投入しキャンピングカーの事業化に向けた取り組みを進めてまいります。
5.航空機器事業
航空機器事業につきましては、2022年2月9日に公表いたしましたとおり、経営資源の選択と集中による企業競争力強化を図るべく、撤退を決定いたしております。お客様のご理解を得ながら、ご迷惑をおかけすることの無いよう、粛々と撤退を進めてまいります。
6.技術・製品開発
「[攻め]の研究 / 技術開発による永続的な新価値創造」
技術・製品開発におきましては現在起点の発想に基づくフォアキャスト型の製品ロードマップにより、お客様の困りごとや市場の課題に応えてまいりました。一方、CNやSDGsなどの社会環境変化へ対応するため、未来起点の発想に基づく、ありたい姿から「何をすべきか」という視点を取り入れた、バックキャスト型の技術ロードマップ活動も融合させて新技術・新製品開発や新規ビジネス創出を進めてまいります。成熟領域であるAC・HC事業の油圧製品におきましては電子制御・電動化・自動化製品を開発する一方、センシング技術・通信技術・データ分析技術を用いた情報サービス分野での事業創出を図ってまいります。また、これら事業戦略や新価値創造に際してはIPランドスケープ(※3)の活用・推進も行ってまいります。
先進的な研究開発・生産技術開発実現に向けて、デジタル技術を融合・活用した開発やプロセス革新も進めてまいります。モデルベース開発手法の拡大やデジタルツイン(※4)活用といったデジタル・リアルの融合のほか、Ship’30活動とも連携し、人に頼ったモノづくりから脱却する技術開発を行い、さらなる効率化を目指してまいります。これらデジタル技術を活用できる人財のみならず、電気・電子、電動化技術に係る人財を拡大し、全社一体となりさらなる開発の加速を進めてまいります。
(※3)IPランドスケープ:知財を中心とした情報を統合的に分析し、企業の経営戦略に役立てる活動
(※4)デジタルツイン:現実空間から収集した各種データを用い、仮想空間(コンピュータ)上で双子のように再現すること
7.人財育成
「従業員が心身ともに健康で働き甲斐のある職場づくり」
2023中期経営計画に掲げる「品質経営を極める」は2年目を迎え、2024年度はTQM実践教育により能力の向上を図ります。経営目標の達成および組織の活性化に向けては小集団活動を推進し、RPAやデジタル技術も活用しながら業務改善意識の定着を図り、抜本的なムダ取りに取り組んでまいります。
また、当社は従業員や家族の健康を重要な経営資源、企業活力の源泉と位置づけ、従業員が心身ともに健康で働き甲斐のある職場づくりに取り組んでおります。経営理念である「高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます」の実現のため、健康増進活動に取り組む従業員への積極的な支援と、組織的な健康増進施策を推進し、2024年も「健康経営優良法人」に5年連続で認定されました。今後も継続して取得するとともに、2025年のホワイト500認定取得を目指してまいります。
8.モノづくり
「質を極め~量変動に追従できる革新的モノづくりの実現」
革新的モノづくりにつきましては、これまでも最適な生産を実現し生産革新活動を進めて収益性強化に努めてまいりました。次の時代に向けてモノづくり現場をより一層進化させ、自己完結革新工場を2030年に実現することを目指し、デジタル技術を軸にしたShip’30活動を前中期経営計画から進めております。2023中期経営計画ではShip’30活動における生産工程革新といたしまして、コンセプトライン構想および実現に向けた取り組みの推進、運搬や検査などの自動化の実現や、設備モニタリングシステムの展開といったIoTの活用を図ってまいります。また、革新ライン構築に向けて信頼性の高い設備開発と導入を進めてまいります。設備管理革新活動としては、高度化する設備群への対応と故障率低減に向けたTPM体制構築および故障分析と対策・保全の実施を進めてまいります。さらに、KPS(※5)活動を推進し、モノづくり現場の底上げを図り生産性を向上させるとともに、活動を通じ人財の育成を図ってまいります。
(※5)KPS:Kayaba Production Systemの略でムダの徹底的排除の思想に基づく生産方式を指す
当社グループは、これらの重点方策活動を着実に実施し、筋肉質で高収益な企業体質への改革に取り組んでまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、3年間(2024年3月期~2026年3月期)の2023中期経営計画を策定しており、当連結会計年度における実績、2025年3月期における見通し及び最終年度における目標数値は以下のとおりです。
| 2024年3月期実績 | 2025年3月期見通し | 2026年3月期目標 |
売上高 | 4,428億円 | 4,480億円 | 4,700億円 |
セグメント利益 (注) | 210億円 | 215億円 | 380億円 |
セグメント利益率 | 4.7% | 4.8% | 8.0%以上 |
自己資本比率 | 45.6% | ― | 45.0%以上 |
ROE | 7.9% | ― | 12.0%以上 |
(注) セグメント利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出したもので、日本基準の営業利益に相当いたします。
また、収益基盤の安定化を図るため、収益力改善については、固定費管理体制強化、最適調達による変動費削減、グローバル総原価低減の推進、グループ生産体制の最適化を、財務体質改善については、棚卸資産回転率の指標管理強化による全社棚卸資産圧縮を推進し、重要な指標と位置付けております当社グループ自己資本比率やROEの改善を進め、グループ一体となった利益確保を通じ企業価値向上に向けて取り組んでまいります。
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