オリエントコーポレーション 【東証プライム:8585】「その他金融業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社はステークホルダーの期待や要請を踏まえ、さまざまな社会課題のなかから優先的に取り組む重要テーマを選定し、基本理念に掲げる「社会に貢献する企業」に相応しい金融商品・サービスの提供等の取り組みを通じて、持続可能な社会の実現と企業価値の向上をめざすことを、サステナビリティ基本方針としています。2023年3月期よりスタートした中期経営計画から、サステナビリティ基本方針を「経営の上位概念」と位置づけ、「2030年にめざす社会・めざす姿」の実現に向けマテリアリティ(重要課題)を特定し、KPIを設定するとともに、より実践的なサステナビリティ経営を推進するための体制を構築しています。具体的には、2022年4月に取締役社長を委員長として、KPIの進捗管理や社内外のコミュニケーション等について審議する「サステナビリティ委員会」を立ち上げ、取締役会へ定期的に報告する体制といたしました。また、サステナビリティ委員会の直下に3つの部会を設置しており、それぞれの部会は各部門・グループの副部門長・副グループ長・部長で構成され、全社横断的な知恵を結集して深い議論を重ねることで、社会課題の解決に寄与する新事業創出や組織変革につなげています。
<サステナビリティの位置づけ>
<サステナビリティ推進体制>
(2) リスクマネジメント
当社はサステナビリティ課題を含む事業へのリスクを、一元的に把握・管理しその規模・態様に応じた総合リスク管理を行っています。リスク管理の詳細は、[3.事業等のリスク]に記載しています。
その他については、それぞれのリスクに対してシナリオを設定して分析・評価することで重要リスクを抽出・検討する新しいアプローチを導入・運用しています。特に気候変動に関するリスクマネジメントについては、(4) 個別テーマ内の[①気候変動への対応]に記載しています。
(3) 戦略/指標及び目標
サステナビリティ経営においては、当社の強固な財務基盤や経営資本を活用し、「誰もが豊かな人生を実現できる持続可能な社会」の実現に向けて当社が貢献するためには、「さまざまな社会課題解決に貢献し続ける、イノベーティブな先進企業」「ステークホルダーからこれまで以上に存在意義を認められる企業」になることが重要であると考えております。こうした認識のもと、当社は新たな中期経営計画の策定を機に、社会価値と企業価値の両立をめざす「サステナビリティ」を経営の軸に据え、中期経営計画の上位に位置づけました。同時に、10年後のめざす社会・姿を実現するために6つのマテリアリティを、「安全・安心で利便性の高いキャッシュレス社会実現への貢献」、「金融ノウハウの活用を通じた新たな顧客体験価値の創造」、「脱炭素・循環型社会実現への貢献」、「持続可能な地域づくりへの貢献」、「人材の多様性と育成および働き方改革」、「ガバナンスの強化」と定めました。
<価値創造プロセス>
※2023年3月31日時点
具体的には下表のとおり、それぞれのマテリアリティに紐づく取り組み項目と2025年3月期にめざす水準であるKPIを設定し、ステークホルダーに対して公表しております。こうしたサステナビリティの考え方は、中期経営計画のすべての事業戦略に反映されております。各部門やグループの重点戦略は、それぞれの戦略・施策がどのマテリアリティに繋がるものなのかを検証し作り上げたものであり、経営戦略策定のプロセスは「社会への貢献と企業価値向上の両立」を体現しているものであります。
<2023年3月期-2025年3月期のサステナビリティ取組みと目標>
マテリアリティ | 取組項目・内容 | KPI 2025年3月期にめざす水準 | 2023年3月期実績 |
安全・安心で利便性の高いキャッシュレス社会実現への貢献 | クレジットカードの利用拡大 ・クレジットカード会員基盤拡充 ・デビットカードの推進強化 ・アクワイアリングの推進強化 | 日本における2025年キャッシュレス比率40%の実現に向けて、カードショッピング取扱高を3.5兆円へ拡大 | ・カードショッピング取扱高2.9兆円 ・IP・エンタメ(キャラクター券面・POD)業界をターゲットに提携カードを推進 |
金融ノウハウの活用を通じた新たな顧客体験価値の創造 | 審査業務の自動化 ・申込Web化、自動審査等の推進 ・お客さま接点のデジタル化(SMSによる契約意思確認、各種案内のデジタル化等) ・クレジットカードにおけるAI与信の高度化 | 質の高いサービスの提供及びお客さまの利便性向上に向け、受付・審査業務の完全自動化率の倍増 クレジットカード自動化率80%以上、 合計自動化率40%以上 | ・クレジットカード自動化率41.7% ・合計自動化率21.5% ・利便性向上を目的としたSMS確認の対象加盟店を拡大 |
脱炭素・循環型社会実現への貢献 | 事業運営における温室効果ガス排出量の抑制及びエネルギー使用量の削減 ・社有車のエコカー(EV・FCV・HV・低燃費車両)への切り替えを促進 ・社有車総台数の削減 ・エネルギー使用量の削減 | 社有車の100%エコカー化に向けた切替推進、エコカー比率75%以上 総台数10%縮減 エネルギー使用量2022年3月期比3%削減(原単位ベース) | ・エコカー比率45.7% ・総台数1.4%縮減 ・自社ビルにおけるLED照明への切替や高効率空調設備機器への更新等を実施 |
業務プロセスにおけるペーパーレス化の推進 ・デジタル化による紙の使用量削減 ・当社グループ全体のコピー用紙購入量削減 | CO2削減量800t相当/年の紙の削減 コピー用紙購入量 2022年3月比15%削減 | ・CO2削減量 124t相当/年の紙の削減 ・コピー用紙購入量 2022年3月期比8.3%削減 | |
持続可能な地域づくりへの貢献 | 強みを活かした東南アジアにおける金融商品の提供 ・オートローンビジネスの拡大 | 豊かな市民生活の実現に向け取扱高1,335億円に拡大 オートローン等利用件数6.5万件へ拡大 | ・取扱高900億円、利用件数約4万件 ・営業ネットワークの拡大等、各国の市場動向を見据えた営業活動を展開 |
中小企業・個人事業主等への信用供与拡大 ・売掛金決済保証事業拡大 | 地域社会における信用仲介機能のさらなる充実に向け売掛金決済保証取扱高を3,000億円へ拡大 | ・売掛金決済保証取扱高 2,376億円(注) ・みずほエンゲージメントオフィスとのアライアンス開始および営業店での取組強化実施 | |
地域金融機関との協業を通じたサステナブル商品の提供 ・金融機関と連携したサステナブル商品の開発 (脱炭素型多目的ローン等) | 地域の課題解決につながるサステナブル商品を開発し10以上の金融機関と提携 | ・6金融機関(愛媛銀行、宮城県下3信組、紀陽銀行、京葉銀行)と提携 ・地域の課題解決につながるサステナブル商品を提供 |
マテリアリティ | 取組項目・内容 | KPI 2025年3月期にめざす水準 | 2023年3月期実績 |
人材の多様性と育成および働き方改革 | 多様な人材が活躍できる環境の整備 ・管理職候補層の意識改革 ・女性が活躍できる環境の整備 | 個性ある多様な人材が活躍する組織をめざし女性活躍を推進 女性管理職比率 (課長クラス以上) 2025年3月期目標: 27%以上 2027年3月期目標: 30%以上 女性管理職比率 (部室長相当職) 2025年3月期目標: 9%以上 2027年3月期目標: 12%以上 | ・女性管理職比率 課長クラス以上26.2% 部室長相当職6.7% ・女性社員を対象としたリーダーシップ強化研修を実施 |
・男性の育児休業取得の促進 | 性別に関わらず仕事と家庭の両立ができる社会をめざし、男性の育児休業取得率100%を引き続き実現 | ・男性の育児休業取得率94.9% 出生後に該当者と所属長に育児休業取得を奨励 | |
・サーベイを活用した社員エンゲージメント向上 | 社員エンゲージメントスコアBBBへ向上(AAA-DDの11ランク中3ランクアップ) | ・社員エンゲージメントスコアB(1ランクアップ) ・所属長を対象にしたサーベイ結果共有会、アクションプラン担当者ミーティングを開催 | |
社員一人ひとりの挑戦意欲に応える、自律的なキャリア形成支援策の拡充 ・挑戦意欲に応える施策の拡充 | スタートアップ企業での副業やトレーニーを含めた社内外での新たな経験付与プログラムに3年間で200人参加 | ・参加者80人 ・社内公募にスタートアップ企業等での社外副業やレンタル移籍、社外・海外トレーニーを追加 | |
・DX素養を有する人材(DX推進人材)の拡大 | DX素養を有する人材(DX推進人材)を3,000人に拡大 | ・DX推進人材3,208人が認定を受け、3年後の目標を前倒しで達成 | |
ワーク・ライフ・バランスの推進 ・有給休暇取得率向上等を通じた総労働時間の適正化 | ワーク・ライフ・バランスの定着化に向けて有給休暇取得率70%以上を実現 | ・有給休暇取得率69.4% 労働時間削減に向けた協議会を年2回各組織にて実施 |
(注)クレジットカードによる売掛金決済保証取扱高を含む
※サステナビリティ取組みと目標の詳細については当社Webサイトをご覧ください
https://orico.jp/sus
(4) 個別テーマ
①気候変動への対応
当社は2022年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明し、ホームページ上に取り組み内容を開示するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場である、TCFDコンソーシアムに加入しました。マテリアリティにおいても「脱炭素・循環型社会実現への貢献」を掲げ、自社事業における温室効果ガス排出削減に努めるとともに、持続的な成長に繋がると考えるビジネス機会の探索にも注力し、環境負荷を軽減する金融商品・サービスの推進に取り組んでいます。
a.ガバナンス
当社はサステナビリティを基本理念等に次ぐ上位概念に位置づけ、原則、四半期に1回開催するサステナビリティ委員会において、気候変動関連のリスクや機会を踏まえたサステナビリティ経営戦略や、当社グループのサステナビリティの取組状況の確認、社外・社内コミュニケーション強化に向けた施策等について審議しています。
また、審議内容は定期的に取締役会に報告しています 。
b.戦略
TCFD提言に関連する開示として、当社にとっての気候関連リスク・機会の洗い出しを行いました。検討の結果、当社事業への影響度、発現の可能性を踏まえて認識されたリスク・機会は、下表のとおりであります。
なお、気候関連リスク・機会の発現時期の考え方は、中期経営計画策定時の視点と同様に、短期を3年、中期を10年、長期をそれ以降と想定しています。
<リスク・機会認識の一覧>
リスクの種類 | リスク | 具体的内容 | 事業への影響 | 発現する 可能性 | 時期 | |
移行 リスク | 市場 | 中古車市場 (ガソリン車)の縮小 | ・消費者の環境意識の高まりにより、EV車需要が拡大し、中古車市場でのガソリン車需要が減少する | 大 | 大 | 中期 |
EV中古車市場 形成の遅れ | ・EVバッテリーの査定方法が確立されず、EV中古車価値が正しく評価されないため、市場形成に時間を要する | 大 | 大 | 中期 | ||
自動車販売市場の低迷 | ・消費者の意識変化により、自動車使用年数の長期化や、自転車や公共交通機関の選択、カーシェアリング等のモビリティサービスへの移行等により、自動車販売台数が減少し市場が低迷する | 大 | 中 | 中期 | ||
加盟店への影響 | ・消費者の環境意識が高まり、CO2低排出商材へのシフトが加速するなかで、変化に対応した商品・サービスの提供等の対応の遅れにより加盟店の競争力が低下し、当社サービス・商品への需要が縮小する | 大 | 中 | 中期 | ||
評判 | ステークホルダーからの評価の低下 | ・消費者の環境意識の向上や、金融機関・機関投資家によるESGへの取組みに対する要求の高まりにより、ガソリン車のオートローン事業を行う当社のイメージや評価が悪化。また資金調達リスクが高まる | 大 | 中 | 中期 | |
事業の低炭素化対応によるコストの増加 | ・政府のCO2排出量に対する規制強化が急速に強まり、自社物件への太陽光パネルや蓄電池の設置等のインフラ整備や、再生可能エネルギーの使用等、エネルギー調達コストが増加する | 中 | 大 | 中~長期 | ||
政策と法 | 規制強化による中古車市場(ガソリン車)の縮小 | ・気候関連問題にかかる法改正や規制強化により、ガソリン車離れが加速し、中古ガソリン車の市場が縮小する | 大 | 中 | 中~長期 | |
炭素税等の負担増 | ・地球温暖化対策税の税率引き上げや新たな炭素税等が課されることにより、コストが増大する | 小 | 小 | 中期 |
リスクの種類 | リスク | 具体的内容 | 事業への影響 | 発現する 可能性 | 時期 | |
物理 リスク | 急性的 | 災害多発による影響 | ・地球温暖化が進み大雨や台風が多発することで災害が頻発し、被災地における延滞リスクが増大する ・災害地域の消費の落ち込みにより、当社サービス・商品への需要が縮小する | 中 | 大 | 中期 |
災害多発による事業継続リスクの増大 | ・地球温暖化が進み大雨や台風の多発による水害が頻発し、当社事業関連地域における加盟店や当社社員の人命に関わる事態に発展した場合に、事業継続リスクが増大する | 中 | 中 | 中期 | ||
|
|
|
|
|
|
|
機会の種類 | 機会 | 具体的内容 | 事業への影響 | 発現する可能性 | 時期 | |
機会 | 製品と サービス | 消費行動の変化による金融ニーズの拡大 | ・消費者の環境意識が高まり、CO2低排出商材へのシフトが加速するなか、グリーンやエシカル消費、シェアリングエコノミー等新たな顧客嗜好に基づく消費行動に対応する金融商品・サービスの提供機会が拡大する | 大 | 大 | 中期 |
市場 | EV中古車市場の拡大 | ・EVバッテリーの査定方法が確立され、EV中古車価値が正しく評価されることで、当社が高いシェアを持つ中古車市場にEVが流入し、国内外において取扱高が増加する | 大 | 大 | 中期 | |
資金調達コストの低減 | ・ESG投資の拡大を受け、サステナビリティ・リンク・ボンド(ローン)等の新たな資金調達手段を活用することで調達コスト減少の可能性が高まる | 中 | 大 | 短期 | ||
サステナビリティ経営による差別化 | ・サステナビリティを上位概念に据えた経営体制へ移行し、事業を通じた気候変動対策を積極的に推進することで、同業他社との差別化が図られ、環境関連商品の取扱高が拡大する | 中 | 中 | 中期 | ||
災害復興需要に応える資金提供 | ・災害が発生した地域において、生活再建に向けた商品購入やBCP関連商材(蓄電池等)購入のためのファイナンス機会が増加する | 中 | 中 | 中期 |
機会の種類 | 機会 | 具体的内容 | 事業への影響 | 発現する 可能性 | 時期 | |
機会 | 市場 | 災害復興ビジネスへの参画・支援 | ・地球温暖化が進み大雨や台風が多発し水害が頻発することにより、被災地域にて復興に向けた加盟店や外部企業、自治体との新たなサステナブルビジネスの創出機会が増加する | 中 | 中 | 中期 |
太陽光パネル市場拡大によるローン需要の増加 | ・環境意識の高まりにより、太陽光発電システム及び蓄電池の設置の需要が増加し、取扱が拡大する | 中 | 中 | 短期 |
c.リスクマネジメント
当社業務においては、気候変動の影響を直接的に受ける事業上の利権等は保有しておらず、また、大規模災害等の緊急事態を想定した事業継続計画の策定やBCP訓練等を行っていることから、事業継続リスクの影響は限定的と認識しております。
しかしながら、気候変動が事業や社会に与える影響、また政策や産業界の取り組みが急加速していること等に鑑み、「気候変動等に関する新たな規制の導入・変更による事業への影響」を重要なリスクと認識し、モニタリングを強化するとともに、管理状況を総合リスク管理委員会や取締役会等に報告しております。
d.指標及び目標
当社は、当社事業の環境負荷の把握のために、エネルギー使用量・CO2排出量、紙のリサイクル実績、不燃物のリサイクル実績を集計し、環境会計として開示しております。
②人的資本への対応
a.ガバナンス
当社の人事基本方針は、業務執行取締役及び執行役員で構成される経営会議での審議を経て、取締役会で審議・決定しております。人財戦略は、経営会議での審議を経て、取締役社長が決定し、取締役会で報告・共有を行っております。また、取締役社長の諮問機関であるサステナビリティ委員会の傘下組織である人財部会にて、人事基本方針と人財戦略の実現に向けた活動状況の共有と議論を行い、四半期ごとに開催される本委員会に報告するとともに、委員会を通じて取組状況を半期に1回、取締役会に報告しております。
全社における人財戦略上の重要な取組みの推進にあたっては、取締役社長のもと、人事・総務グループ長を責任者として、社内各組織や連結子会社とも連携を取りながら進めております。当社の人事機能は、専門性の高さや複雑性への対処の観点から、企画・運用・厚生・人権啓発推進の機能を担う「人財マネジメント統括部」と、採用・教育・インクルージョン&ダイバーシティ推進の機能を担う「キャリアデザイン推進部」の2つの組織で構成しております。各事業・各機能における組織開発・人材開発は、人事・総務グループ長及び人財マネジメント統括部長が、部門やグループの責任者と意見交換や協議の場を設け、組織の活性化や人材の適所適材に向けた配置方針や、課題について共有・議論を行っております。
b.戦略
イ.人財戦略の策定の狙い
当社で働く全ての社員を当社の持続的成長における重要な「財産」として捉え、さらなる経営基盤の強化を図るべく、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画の重点戦略の一つとして「新たな人財戦略」を策定しております。これは、社員と会社の関係性が、これまでの「雇う側-雇われる側」という関係から、自分が大切にしていることを実現するための場所へと、「互いに選び・選ばれるもの(Win-Winの関係)」に変えていく必要があり、2030年の当社のめざす社会・めざす姿を構想した経営戦略の実現に向けて、中長期的な視点で、社員と会社の在り方を根本的に捉えなおしたものであります。
人財戦略の策定にあたっては、取締役及び執行役員の意見を反映させるほか、組織内の幅広い関係者と議論を重ね、以下の3つの要素が必要であると考えました。
・社員を惹きつける魅力ある組織の実現に資する戦略
・事業・組織・プロセスの変革を後押しする戦略
・変革の実行を実現するために、制度や仕組みを変えるだけでなく、役員・社員に対して思考・行動様式の改革を促す戦略
ロ.人財戦略のめざす姿と人事基本方針
人財戦略を通じてめざす姿には、「会社と社員が互いに成長できるWin-Winな関係構築を通じた社員エンゲージメントの最大化」を掲げています。このめざす姿には、会社と社員がともに必要な存在として絆を深めながら、社員が成長・活躍し、会社が持続的に成長する関係を築き上げていきたいという想いを込めております。
人財戦略の遂行にあたっては、「人事ビジョン」を定めるとともに、その実現の両輪として、社会的規範を重視した行動様式を踏まえつつ、社員に変革・改善を通じた価値創造を求めていく中で、残すべき・取り戻すべきオリコらしさを発展的・未来志向的に進化させた「求める人材像」、及び会社のコミットメントとして思考・行動の改革を後押しし支援する「人財マネジメントポリシー」を定めております。
ハ.重点実施事項
「社員エンゲージメントの最大化」を実現するために、中期経営計画において重点的に実施すべき事項として、以下の2つを設定しております。
① 多様性に富んだ人材集団づくり -個性ある多様な人材が活躍する組織へ- |
多様性に富んだ人材を育み、個人の特性をより活かすことをめざし、一人ひとりの成長意欲を高め、強みを伸ばすキャリア支援の拡充のほか、女性や外国人等、様々なバックグラウンドや個性を持つ人材の幹部登用の加速、新規ビジネス創出等の核となる専門人材の確保・育成・活躍の推進等を行っております。 |
② 新時代のための人事の基盤づくり -これからのオリコに相応しい評価・処遇・育成の制度・運用へ- |
従来の人事制度や仕組みを抜本的に見直し、社員が魅力を感じ、社員を惹きつける組織の実現をめざし、年功・職能に基づく人事から仕事・ミッションを軸とした新たな人事への転換、「求められる人材像」に即した評価軸の見直しと客観性を高める多面評価の導入、能力開発とタフ・アサインメント付与を通じた次世代を担う中核人材の育成等を行っております。 |
[多様性に富んだ人材集団づくり -個性ある多様な人材が活躍する組織へ-]
中期経営計画における人財戦略の重要な取り組みの一つが、多様性に富んだ人材ポートフォリオの実現であります。
具体的な取組内容は以下のとおりであります。
(ⅰ)社員一人ひとりの成長意欲を高め、強みを伸ばすキャリア支援の拡充
全ての社員が自分自身の特徴や特性を知り、自身の成長や強みを活かせるキャリアを考えていくためには、能力開発と自律的なキャリア形成が必要と考えております。その実現に向けた社員への挑戦機会の提供として、以下の取組みを行っております。
・社内公募 全部室・全営業店、国内グループ会社を応募対象としたキャリア公募制度
・社外トレーニー 銀行等の他企業で経験を積む
・海外トレーニー 異国文化に触れながら海外事業を学ぶ
・レンタル移籍 イノベーション企業や提携先で、事業開発プロセスや経営を学ぶ
・社外副業・兼業 スタートアップ等の異業種企業でアイデアや企画プロセス等新たな知見を学ぶ
社外の就業経験を得られるレンタル移籍や社外副業では、2023年3月期は入社3年目の若手社員から40代後半の管理職まで幅広く参加する等、活発な参加意欲がみられました。当社は、社員の自律的なキャリア形成支援を目的として、2025年4月より、社員が希望するポストや職種を選択する「ジョブポスティング」を導入するとともに、価値観やライフステージに合わせた働き方を尊重するために、社員が望まない転居を伴う転勤を廃止します。これまでの会社主導による人事異動を見直し、自らの意思で仕事を選び、ポストをつかむといった自律的なキャリア形成支援に向けて、社員の本拠地の設定や転居転勤の意向確認等、社内体制を段階的に整えてまいります。
(ⅱ)女性や外国人等、様々なバックグラウンドや個性を持つ人材の幹部登用の加速
企業価値の向上のための戦略上の重要な取組みとして、インクルージョン&ダイバーシティの推進に注力しています。2023年4月に、取組みを強化すべく、従来のダイバーシティ推進の考え方(ビジョン・基本方針・宣言)を見直し、インクルージョンの実現にフォーカスした「インクルージョン&ダイバーシティの基本方針」を新たに制定しております。
※詳細については当社Webサイトをご覧ください
https://www.orico.co.jp/company/corporate/efforts/inclusion-diversity/policy.html
社員一人ひとりの異なる考え方や視点、価値観を受け入れ、活かしていくことで、お客さまの多様なニーズに応えつつ、社員のエンゲージメントを高め、競争力と企業価値の向上につなげていきます。そのために当社で働く社員の多様性を高めることに加えて、組織の受容性を高めること、一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮できること、公平に挑戦できることによって、誰もが自分らしく活躍できる組織をめざします。今後は、2023年4月に制定したインクルージョン&ダイバーシティ基本方針に基づいた新たな行動計画を2024年3月期中に策定し、具体的な取組みを推進してまいります。また、取組の状況は定期的に経営会議に報告してまいります。
<<女性活躍に関する取組>>
女性社員は、性別に関わらず、さまざまな分野で活躍しています。今後、当社が更に発展するためには、これまで以上に女性が活躍の領域を広げ、力を最大限発揮できるようにしていくことが必要であると考え、そのための女性活躍推進施策として、キャリア形成支援、意識改革、ワーク・ライフ・バランスの観点からさまざまなサポートを展開しております。
■女性活躍に関する行動計画
2016年4月1日施行「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」に基づき、当社は下記のとおり女性活躍に関する新たな行動計画(2022年4月1日~2027年3月31日)を策定しております。
| 取組内容 | 目標 (2025年3月期) | 目標 (2027年3月期) |
目標① | 課長クラス以上に占める女性社員比率 | 27%以上 | 30%以上 |
目標② | 部室長相当職に占める女性社員比率 | 9%以上 | 12%以上 |
目標③ | 男性の育児休業取得率 | 100% | 100% |
■研修
当社では、管理職となった女性を対象に、案件処理能力・コミュニケーション能力・企画立案能力等のリーダーに必要なスキル強化を目的とする「女性管理職研修」や、課長補佐・主任の女性を対象にリーダーとしての意識付けを図る「選抜リーダーシップ強化研修」、28歳の女性を対象にキャリアプランの構築を促す「Life Map Cafe 28」等の社内研修を行っております。
また、他社と交流を図り、多様な考え方や価値観に触れながらリーダーシップのノウハウを学ぶ「異業種合同女性管理職研修」や、他社合同の「ファシリテーション研修」のほか、女性管理職同士が悩みを共有し、相談し合える社内ネットワーク「Orico Women's Network」も用意しながら、女性の活躍推進に取り組んでおり、2023年3月期は各研修あわせて226時間、319人の女性社員が参加しました。
(ⅲ)新規ビジネス創出等の核となる専門人材の確保・育成・活躍
中期経営計画における事業戦略上重要性の高い専門人材の採用・育成を積極的に行っております。特に、[1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営環境及び対処すべき課題等 ◆DX戦略 戦略③ DX人材の育成・DXカルチャーの醸成]に記載のとおり、DXを推進する人材の育成は最も重要であると考えており、DXの推進・実行に必要なスキル・マインドを有する人材の確保に向けて、社内の異動や外部採用の強化、育成プログラムの開発・実施等、全社的な取り組みとして進めております。
2025年3月期までに、DX素養を有する人材(DX推進人材)を3,000人に拡大する目標を掲げるなか、DX人材育成プログラムをリリース、2023年3月期で3,000人以上が認定を受け、3年後の目標を前倒しで達成しました。引き続き、追加のプログラムの受講を促進し、更なるレベルアップを図るとともに、DXを実現する推進役として、将来の経営幹部候補者となる人材や、その取組みに伴走し変革を支援する人材の育成にも力を入れていきます。
[新時代のための人事の基盤づくり -これからのオリコに相応しい評価・処遇・育成の制度・運用へ-]
中期経営計画における人財戦略の重要な取り組みの一つが、多様性のある様々な人材を活かしていくための新しい評価・処遇・育成の実現であります。具体的な取組内容は以下のとおりであります。
(ⅰ)年功・職能に基づく人事から仕事・ミッションを軸とした新たな人事への転換
年功・職能を中心とした従来の考え方から、個人の担う仕事の内容や果たすべきミッションを軸とした人事への転換を進めています。ミッションとは、目の前にあるタスクではなく、当社がめざす姿を実現するために、組織または社員一人ひとりが果たすべき使命であります。仕事の目的(価値や意義)を一人ひとりが理解し、やりがいと誇りをもって働けるよう、ミッションを軸として、各ポジションの職務要件や人材要件を明確化し、社員一人ひとりの課題把握や自己啓発、公正な評価・処遇の実現、自律的キャリア形成の促進等に繋げていきます。
2023年3月期は、こうした取り組みの土台となるミッション定義書を策定しました。ミッション定義書には、所属する組織やポジションごとに異なるミッションを記載しており、加えて、ミッション実現に必要な職務要件を満たすための主要KPI、権限・責任、行動特性、スキルといった内容を記載し、ミッション定義書に定めた行動特性やスキルのレベルと本人とのギャップを、「行動評価」や「スキル評価」に反映します。
2024年3月期は、ミッション定義書の全社理解・浸透をより推進し、ミッションを通じて、仕事で果たすべきことを明らかにすることで、会社がめざしていることを社員が自分事として捉え、会社と社員の向かうべき方向性を一致させていきます。
(ⅱ)「求める人材像」に即した評価軸の見直しと客観性・透明性を高める多面評価の導入
仕事・ミッションを軸とした新たな人事制度を推進していくため、評価制度・報酬制度を見直しました。会社が社員に期待する行動軸を定め、それに対する評価基準を示すとともに、評価者のスキル向上に注力することで、公正かつメリハリのある評価・処遇を実現し、年齢とともに上昇する年功的な処遇運用からの脱却をめざします。
加えて、会社の掲げる戦略や目標の実現に向けて社員も一体となって取組み、ともに達成する喜びを分かち合える賞与制度の仕組みもあわせて構築しました。社員自らが挑戦し行動する意欲を引き出し、会社はそれに対し処遇面でしっかり報いていくことで、社員一人ひとりの高い成果発揮や生産性向上に資する思考や行動変革を促します。
また、評価の客観性・透明性を高めるために、360度サーベイ等の多面評価を導入しております。2023年3月期は、部長・室長及び営業店の支店長を対象とした360度サーベイを開始し、結果の共有と内容の理解を深めるためのフィードバック研修を実施し、その内容をもとに各人がアクションプランを策定・実践することを開始しました。全体の結果分析を行うとともに、その結果を踏まえた組織課題の特定のみならず、個人の能力開発への展開も検討しています。
(ⅲ)能力開発とタフ・アサインメント付与を通じた次世代を担う中核人材の育成
中核人材の育成は、組織運営上の重要な基盤になるという考えのもと、経営戦略の実現を牽引する中核人材の育成に力を入れています。中核人材の育成対象者は、部長、室長、支店長、副部長、課長、部長代理等の全管理職であります。2023年3月期より、本社の部室長及び営業店の支店長を対象とした中核人材育成プログラムを開始し、役員参加のもと、計4回のWEBセッションと計20回の集合セッションを行いました。2024年3月期からは、上記対象者に加えて、副部長以下の各管理職層への展開も検討しています。また、適所適材の観点から、若手社員の営業店課長への抜擢登用等を行う等、将来キャリアを展望できるアサイメントを積極的に行っております。
<<職場環境に関する取組>>
社員の生産性やモチベーション向上に向けて、働き方改革や健康経営の推進等、すべての社員が生き生きと活躍できる職場づくりに力を入れて取組んでおります。
(ⅰ)働き方改革
テレワークや週休3日制、社員が任意に就業時間を選択できるスライドワーク等、多様な働き方の拡充に加え、生活スタイルに合わせて取得できるプライム休暇(特別休暇)の導入や職場ごとに「労働時間に関する協議会」を開催する等、より良い職場環境の構築に向けて取り組んでおります。
※詳細については当社Webサイトをご覧ください
https://www.orico.co.jp/company/corporate/efforts/healthmanagement/optimization.html
(ⅱ)健康経営の推進
社員が公私ともに生き生きとした生活を送ることができるよう、社員一人ひとりを尊重しながら、生活習慣病予防及び重症化予防対策・女性の健康増進・がん対策・感染症対策・喫煙対策・メンタルヘルス対策等、働きやすい心身の健康維持・増進を支援する健康経営に取り組みながら、安心・安全の更なる構築や労働生産性の向上に努めております。
※詳細については当社Webサイトをご覧ください
https://www.orico.co.jp/company/corporate/efforts/healthmanagement/
(ⅲ)人権尊重に関する取組
差別やハラスメントのない人権尊重に根ざした職場環境の実現に向けて、さまざまな人権に関する実践的な研修や人権啓発活動を継続的に実施しております。また、内部通報制度「オリコ・ヘルプライン」として社内外に相談窓口を設置し、グループ会社の社員や退職者も含めた救済措置体制を整えております。なお、2023年4月、人権尊重が今後ますます重要性を増していくとの考えのもと、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、新たに人権基本方針を定めました。差別やハラスメントの排除及び周知徹底を図るとともに、経営レベルでの社内体制の整備等を通じて、人権デュー・ディリジェンス等を実施し、人権への取組みをサステナビリティの基盤と捉え、人権尊重責任を果たしてまいります。また、人権に関する取組状況については定期的に取締役会及び経営会議に報告しております。
※詳細については当社Webサイトをご覧ください
https://www.orico.co.jp/company/corporate/humanrights/
(ⅳ)妊娠・育児・介護に関する各種制度
妊娠・育児に関する各種制度を整え、全ての社員が仕事と育児を両立できるよう、育児関連制度の整備・啓発を行っております。女性の育児休業・短時間勤務制度の利用はもちろん、男性の育児休業についても取得を積極的に推進しながら、育児休業取得率100%をめざしております。このような当社の取組みが評価され、2022年11月、次世代育成支援対策推進法に基づく「子育てサポート企業」として「プラチナくるみんプラス」の認定を受けました。また、仕事と介護を両立する社員のための様々な支援制度も設けております。
※詳細については当社Webサイトをご覧ください
https://www.orico.co.jp/company/corporate/efforts/inclusion-diversity/childcare.html
(ⅴ)社員エンゲージメントサーベイの実施
人財戦略の中核指標として活用するために、これまで実施してきた年1回の社員意識調査を見直し、2022年4月より社員エンゲージメントサーベイを年2回実施しております。あわせて、エンゲージメント向上プログラムを導入し、職場ごとに抱える課題に対して、部室長・支店長が社員とコミュニケーションを取りながら、より良い職場づくりと改善に向けたPDCAに取組んでおります。
c.リスクマネジメント
b.戦略で記載のとおり、当社の人財戦略は、社員と会社との関係性を互いに選び・選ばれる(Win-Winの関係)ものに変えていくこと、そして個人の特性をより活かしていくための様々な能力開発の機会提供に力を注いでおります。また、事業の強化・拡大に向けて必要な専門的スキルや能力を備えた外部人材の採用にも積極的に取り組んでおります。こうした取組みの結果、従来と比べて組織内の人材の流動性が高まることが予想されます。
当社の人的資本に関わる取組みのリスクは、社員に対する自律的なキャリア形成支援を推進した結果、社員が当社よりも他社に挑戦や活躍の機会を見出し、離職してしまうリテンションリスクの顕在化や、採用市場の競争環境が想定以上に厳しさを増した場合に、当社の人材獲得力が相対的に低下し、外部の人材採用が計画的に実現できなくなること等が挙げられます。
当社はこうしたリスクを十分に認識し、リスクの顕在化に備えるために、社員に対しては、社内での成長・活躍の機会を最大限享受できるよう、2025年4月より人事異動の原則ポスティング化を予定しております。また、採用手法の多様化をより一層進める等採用力強化に取り組んでまいります。
d.指標及び目標
<重点実施事項に関する取組み>
取組内容 | 目標(注)1 (2025年3月期) | 実績(注)2 (2023年3月期) | |
社員一人ひとりの成長意欲を高め、強みを伸ばすキャリア支援の拡充 | 社内公募任用者 | 150人 | 48人 |
社外・海外トレーニー、 レンタル移籍、副業・兼業経験者 | 50人 | 32人 | |
女性や外国人等、様々なバックグラウンドや個性を持つ人材の幹部登用加速 | 女性管理職比率 | 27%以上 | 26.2% |
女性管理職比率 | 9%以上 | 6.7% | |
新規ビジネス創出等の核となる専門人材の確保・育成・活躍 | DX推進人材 | 3,000人 | 3,208人 |
(注)1.各目標値は、2023年3月期から2025年3月期までの累計であります。女性管理職比率の目標値は、2025年3月期にめざす水準であります。
2.各実績値は、2023年3月期単年度の実績であります。女性管理職比率の実績値は、2023年3月期末時点であります。
<人財戦略を支えるその他取組み>
取組内容 | 目標(注)1 (2025年3月期) | 実績(注)2 (2023年3月期) |
有給休暇取得率向上等を通じた総労働時間の適正化と、ワーク・ライフ・バランスの定着化 | 有給休暇取得率70%以上 | 69.4% |
性別に関わらず仕事と家庭の両立ができる社会をめざした、男性の育児休業取得の促進 | 男性の育児休業取得率100% | 94.9% |
サーベイを活用した社員エンゲージメントの向上 | 社員エンゲージメントスコアBBBへ向上(AAA-DDの11ランク中3ランクアップ) | スコアB (1ランクアップ) |
(注)1.各目標値は、2025年3月期にめざす水準であります。
2.各実績値は、2023年3月期の実績であります。
③お客さま本位への対応
当社は、基本理念として「信頼関係を大切にし、お客さまの豊かな人生の実現を通じて社会に貢献する企業」をめざすことを掲げております。この実現のため、お客さまを第一と考え、お客さま本位の業務運営を実践するために「お客さま本位の基本方針」を策定し、当社Webサイトを通じて社内外に開示を行いました。
また、サステナビリティ委員会配下の顧客部会では、「あらゆる場面のお客さま体験価値向上に努め、商品サービスの充実を図ることによるお客さま満足度向上」を活動目的に掲げ、お客さま起点による商品・サービスの探索や、期待を超えるお客さま対応の追求などについて議論を行っており、その内容は半期に1回、サステナビリティ委員会を通じて取締役会に報告されております。
- 検索
- 業種別業績ランキング