企業オカムラ食品工業東証スタンダード:2938】「食品業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)経営方針

 当社グループは、「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」ことをMissionとし、サーモン養殖事業、国内加工事業、海外加工事業、海外卸売事業の4つの事業を柱としてビジネスを展開しています。

 日本において水産業は衰退産業といわれています。しかし海外において水産業は成長産業であります。私たちは日本の水産業において成長を阻害しているのは二つの要因、すなわち「供給の不安定性」と「消費の減少」であると考えております。ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)などの持続可能性を担保した認証を取得した養殖を推し進めることで「供給の不安定性」を解消し、また水産物の消費拡大が期待されるアジア圏での販売を促進することで「消費の減少」を解消していきたいと考えております。そして、これらの活動を通じて新しい水産業を切り開き、衰退産業とされた日本の水産業の成長産業化を実現することを経営方針としております。


(2)経営環境

 当社グループを取り巻く環境は以下のとおりと認識しております。

①水産資源の需要はグローバルでは増加傾向

 世界的にみると、一人当たりの食用魚介類の消費量は過去50年で約2倍に増加し、近年でもそのペースは衰えていません。とりわけ元来魚食習慣のあるアジアやオセアニア地域では、生活水準の向上に伴って顕著な増加を示しています(※1)。


②養殖への需要の高まり

 世界の漁業と養殖業を合わせた生産量は増加し続けています。その一方で、持続可能な(適正レベルよりも資源量が多く、生産量拡大の余地がある)レベルで漁獲されている状態の水産資源の割合は低下傾向です。1974年には90%の水産資源が適正水準以内で利用されていましたが、2019年にはその割合は65%まで低下したとも言われています(※2)。この状況を背景に養殖の重要性はますます高まっており、漁業・養殖業生産量のうち漁業の漁獲量は1980年代後半以降横ばい傾向となっている一方で養殖業の収獲量は急激に伸びています(※3)。

③サーモン需要の増加と養殖量拡大ペースの鈍化

 世界中でサーモンの人気は高く、世界のサケ・マス類養殖生産量は1990年の57万tから2021年の421万tと、約30年で7倍程度に増加しています(※4)。日本国内においてもサーモンの人気は高く、各種調査でも人気の魚種として常に上位にあげられています。養殖効率に優れていて比較的低価格で購入しやすいサーモンの需要は、今後も伸びていくものと期待されています。

 一方でノルウェーやチリといったサーモン養殖大国における養殖適地の開発は既に概ね行われていることから、今後の養殖量拡大のペースは、これまでとは異なってくると予想されています。

(※1)令和4年度 水産白書(水産庁) P.149

(※2)令和5年度 水産白書(水産庁) P.174

(※3)令和5年度 水産白書(水産庁) P.172

(※4)FAO Fishstat

(3)経営戦略

 このような環境を踏まえ、当社では養殖事業と海外卸売事業の成長を牽引する二つの事業として位置づけており、中長期の主な戦略として以下を計画しております。

①国内養殖規模の拡大

 当社の成長のエンジンの一つはサーモン養殖事業であります。そして生産量を拡大していくことが当社の成長の基礎になると考えています。サーモン養殖事業はデンマーク及び日本国内において展開しております。

 当社グループはサーモン養殖には以下のような限りない可能性があると考えており、それがこのような戦略を採る背景となっています。

  サーモンは4大動物性タンパク質の供給源として、牛肉、豚肉、鶏肉と並ぶ存在になりうる。

  肉類と同等の高タンパクでありながら、低いカロリーが健康志向にも合致する。

  完全養殖が実現されていて、海から天然の稚魚の捕獲が不要。生態系に影響を与えない。

  生産効率が高い。具体的には、増肉係数(FCR)が低く、かつ可食部分が多く、捨てる部位がほぼない。

  低魚粉飼料で養殖が可能。植物性タンパク原料から、海由来タンパクを生産できる。

  サーモンの市場は世界中に存在しており、市場規模が大きい。回転寿司でも定番の人気ネタとなっている。


 なおデンマークでは、主に魚卵の採取を目的としてサーモンを養殖しております。デンマークでは近年養殖の拡大による環境負荷が懸念されていることや、適地が限られていることを理由に、新たなライセンスが発行されておりません。そのため、急激な規模拡大は容易ではない状況ですが、引き続きライセンス取得のための活動は継続してまいります。

 一方、日本国内においては特に北日本では養殖適地が多数存在していることや、国の方針として養殖を増やすことが決定されていることから、当社グループにおける養殖規模拡大は国内養殖が主となります。国内養殖量は継続的な設備投資を背景に、2024年4-7月の2,692トンから、順次拡大していく計画としています。引き続き、この国内養殖における水揚げ量増に対応するため、養殖設備の増強を継続してまいります。

②国内養殖事業の効率性向上

 養殖については、量の拡大とともに効率性の向上も重要な課題です。特に国内養殖においては改善の余地が大きく、当社グループでも屋外循環式の大規模中間育成魚高密度生産システムや給餌用バージ船(※)などを導入し効率化に取り組んでいるところであります。引き続き最新の養殖技術を持つデンマーク子会社Musholm A/Sの技術を取り入れながら、日本国内においてもサーモン養殖先進国並みの養殖技術を確立すべく、取組みを継続してまいります。

(※)バージ船とは、船底が平らになっている船舶のことであり、当社の連結子会社である日本サーモンファーム株式会社ではこのバージ船タンクに養殖用の餌を保管し、船外から自動で給餌できるシステムを構築しております。

③海外卸売事業の強化

 養殖事業と並ぶ当社の成長エンジンは海外卸売事業であります。日本食ブーム、あるいは人口増を背景に海外、特にアジアにおいて日本食マーケットが大きく成長を続けております。このマーケットの成長の波をしっかりキャッチし、当社の成長にも繋げてまいります。すでにシンガポール、マレーシア、台湾及びタイに子会社を有し、着実に成長してきておりますが、日本食需要の大きい地域を中心に今後も進出先を増やし、さらなる成長に繋げていく計画です。また、シンガポールでは自社保有の超低温倉庫(-60℃)による徹底した温度管理や迅速できめ細やかな配送を行っており、オカムラ食品工業独自のコールドチェーンを築いておりますが、さらに超低温倉庫や配送能力への投資を進めていく計画としております。マレーシアにおいては、ハラール食品(※)のニーズが高いことから、ハラール食品の強化を重点課題とし、ハラール対応を目的とした新倉庫を2024年1月より稼働しています。その他、水産専門会社であることや、養殖や加工部門を有していることの強みをより活かせるよう、カバーエリアの拡大、ヒトやモノへの先行投資を進めてまいります。

(※)ハラール食品とは、イスラム教で食べることが許されている調理法等に従い生産した食品のことを指します。

(4)対処すべき課題

 経営戦略を進めていくうえで当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。

養殖事業

① 国内養殖規模の拡大

 当社の成長エンジンの一つはサーモン養殖事業であり、その養殖量を拡大していくことが当社の成長の基礎になると考えています。養殖規模拡大のためには生産能力を上げていくことが必要で、特に不足しがちな中間養殖場の確保が課題です。中間養殖場の新設にあたっては、適地の選定、地元との調整、設備投資資金の確保、養殖施設の建設と、一朝一夕に進むものではないため、中長期的な視点に立って着実に設備投資計画を進めてまいります。

② 養殖の効率性向上

 養殖については、量の拡大とともに効率性の向上も重要な課題です。特に国内養殖においては改善の余地が大きく、当社グループでも屋外循環式の大規模中間育成魚高密度生産システムや給餌用バージ船などを導入し効率化に取り組んでいるところであります。引き続き最新の養殖技術を持つデンマーク子会社Musholm A/Sの技術を取り入れながら、日本国内においてもサーモン養殖先進国並みの養殖技術を確立すべく、取組みを継続してまいります。

海外卸売事業

③ 海外市場での営業基盤の強化

 アジアにおける日本食マーケットの成長の波を確実にキャッチすることが、当社の成長には重要です。そのための配送・保管設備の増強は計画しておりますが、それに加えて、新しい顧客の開拓に努めるとともに、既存の顧客のご不満を聞き、顧客にご満足していただける製品開発やサービス提供を行うことで、営業基盤の強化を図っていくことが課題であると認識しております。

国内加工事業、海外加工事業

④ 安定的な加工体制の確保

 安定的な加工体制の確保は、当社の基盤となります。これが確保されてこそ、加工事業の拡大だけでなく、養殖した青森サーモンの加工品マーケットへの展開や、海外卸売事業における顧客ニーズへのきめ細やかな対応といったことが可能になります。加工拠点の分散によるリスクヘッジ、工場従業員の教育による品質や効率性の向上といった点を推し進めてまいります。

その他

⑤ 品質管理に関する継続的な向上

 消費者の安全・安心へのニーズはますます高まっており、食料品を取り扱う当社グループにおきましても、食品表示も含め、食の安全性を確保してお客様に安心してご利用いただけることが最重要事項であると認識しております。品質管理体制の強化、業務フローの標準化、食品表示や食品関連法規に関する情報の社内共有等を進め、品質管理に関する継続的な向上に取り組んでまいります。

⑥ 環境への配慮

 製造の原料となる水産物や養殖事業は大自然からの恩恵です。我々の事業は自然環境、特に海に大きく依存しています。自然への感謝の気持ちを忘れずに、自然を大切にすることこそ、当社の持続・発展にとって不可欠のことと考えています。

(原料について)

 我々が製造に使用する原料は資源として持続的に調達出来るものでなければなりません。絶滅が危惧される原料、資源管理が徹底されていない原料を使用した製品加工は控えるべきです。資源管理が十分に行われていると認定されたASC・MSC(※)認証原料の使用を推進いたします。

(※)MSC認証とは、水産資源や海洋環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業に対する認証制度を指し、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が管理運営しています。

(養殖事業について)

 養殖事業を拡大すれば、周辺海域に影響を与えてしまう可能性が生じます。もし我々の事業が水質汚染や生態系破壊の原因となってしまえば、事業を継続することは出来なくなってしまいます。魚を育てるためには大量の飼料が必要となりますが、その主成分である魚粉や魚油は天然水産物由来のものです。飼料の成分やその原材料について注意を払う必要があります。デンマーク子会社Musholm A/Sではその生産量のほとんどでASC認証を取得しています。青森サーモン養殖でも一部でASC認証を取得しておりますが、今後もその数量を増加させ、環境への配慮をより高度な次元で達成してまいります。

⑦ 地域との共生の推進

 自然環境に加え、我々の事業は地域社会の理解と協力の基に成り立っています。事業の継続とその拡大には地域との共生の実現が不可欠です。そのためには地域の方々と十分に話し合い、それを通じて地域との信頼関係を築くことが重要です。我々企業と地域社会とのコミュニケーション推進を通じて地域社会に理解されるとともに、青森やミャンマーなどでの雇用創出という形でその地域に貢献する企業となることを目指してまいります。

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社では養殖量、特に拡大余地の大きい国内養殖量を重要な経営指標と考えております。水産物については漁獲や商品相場の変動が大きなリスクとなっていますが、養殖量の拡大によってこれらのリスクを低下させることができ、安定的に水産原料を確保することに繋がります。また、養殖事業の利益率は相対的に高いため、養殖規模の拡大によって当社グループ全体の利益率をさらに向上させることに繋がります。

 現在、国内養殖量拡大のためのネックとなっているのは、中間養殖場を主とした養殖設備の不足にあります。当社グループでは、養殖量拡大に向けて積極的に養殖設備への投資を行っていきたいと考えております。

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