エージェント・インシュアランス・グループ 【名証メイン:5836】「保険業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境
今後のわが国の保険業界では、少子高齢化、人口減少等を背景に生命保険市場、損害保険市場ともに長期的なスパンにおいては市場規模の縮小の影響は予想されるものの、2023年3月時点の損害保険業界の市場規模は、2012年3月時点において正味保険料ベースで約7.1兆円であったのに対し、約9.1兆円(※1)となっており、拡大トレンドを継続しています。また、生命保険の業界市場規模は、保険料等収入ベースで2023年3月時点においても約38.0兆円(※2)と、引き続き30兆円台を維持しており、損害保険と生命保険をあわせると約47兆円という大きな市場規模を有しております。損害保険の市場規模の拡大トレンドは、当面の間は、引き続き継続していくものと考えます。
また、保険業界における損害保険代理店数は年々統廃合の進展により減少しており、1999年3月時点では593,872店実在していたのに対して、2023年3月時点においては156,152店となります(※3)。一方、損害保険の募集従事者数の推移は、1999年3月時点に1,180,784人であったのに対して、2023年3月時点では1,845,345人となっております(※4)。この背景には、1996年の保険業法改正や金融ビッグバン構想の進展により、商品の自由化・複雑化、生損保相互参入などが実現し、保険代理店の販売力向上の必要性が高まったこと、また2005年以降発生した損害保険会社・生命保険会社の保険金不払い問題を受け、保険代理店において募集品質の向上の必要性が高まったこと、さらには、2016年の保険業法改正により保険代理店に対する体制整備義務等が導入されたことなどがあげられます。資本力や人員等のリソース不足の課題により、中小保険代理店は単独での事業運営が年々困難となっており、今後についても損害保険代理店の統廃合は継続することが予想されます。
このような経営環境の中で、当社はM&A及び事業承継を通じて、環境変化に対応できず存続が困難な保険代理店を積極的に受け入れることで、保有契約を一括して引き継ぐとともに、合流代理店(保険募集人)を当社の「パートナー社員」として雇用する等により、保有マーケットを拡大し、営業体制の拡充を図っております。特に当社は、M&A及び事業承継を通じて合流した「パートナー社員」並びに「勤務型代理店」に対して、当社の強みである「保険代理店支援プラットフォーム」を活かして営業面、事務面におけるきめ細やかなサポートを提供することで営業活動に専念できる体制を構築しており、これにより損害保険、生命保険の販売推進を図っております。当社の中期経営計画においても、引き続きM&A及び事業承継を推進していくことで更なる成長を図ってまいります。
(2)経営方針
当社グループは、「お客様の利益創出に最善を尽くす~Doing Our Best On Your Behalf~」を企業理念に掲げています。企業が売りたい商品やサービスを市場に提供するのではなく、お客様にとって本当に必要な商品やサービスを提供することで「あんしん」をお届けすることを使命としております。また、「保険の「あんしん」は人で完成する。」というブランドメッセージのもと、テクノロジーの活用を推進してお客様にとっての利便性を高めつつも、最後は「人」が介在することでお客様にとって真の「あんしん」をお届けできると考え、日々の業務に取り組んでおります。また、社会環境の変化に対応することが難しい代理店や後継者のいない代理店を統合し、保険会社と共に業界の再編を進めることを目指しています。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、継続的な成長と企業価値の向上を目標としており、主な経営指標として営業収益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を採用するとともに、それらの経営指標と極めて相関性の高い指標として、取扱保険料、お客様の数を重視しております。
(4)中長期的な会社の経営戦略
①M&A及び事業承継の推進
M&A及び事業承継の推進を最重要施策と位置づけています。
a.損害保険会社、生命保険会社との関係構築
(a)保険会社からの出資、人的交流の促進
(b)全国の保険会社との密な連携によるM&A及び事業承継推進、業務品質の向上
(c)損害保険各社、生命保険会社との協力体制の確立
b.合流代理店(パートナー社員)への支援体制強化
(a)営業サポートによる手厚い事務支援、営業推進
(b)盤石なサポート体制構築に向けた人財の採用・育成
(c)営業サポートとコア営業の連携による案件創出
c.拠点政策、収益強化
(a)拠点の大型化と新規出店
(b)大型化による事務効率、生産性の向上及び収益最大化を通じた高収益モデルの構築
(c)パートナー制度の充実と業務分担に応じた合理的な報酬割合の設定による収益性の向上
(d)損害保険の専業代理店のみならず、兼業代理店及び生命保険を中心とした保険代理店のM&A及び事業承継強化
②販売戦略の推進
保有マーケットにおいて損害保険、生命保険のコンサルティング販売を推進します。
a.基本戦略
(a)早期更改の徹底による営業サイクルの変革及び標準化
(b)更新手続時の面談率向上と証券お預かり運動(保険契約内容の分析とアドバイス)の徹底(お客様の状況にあった生命保険、損害保険のご提案)
(c)自然災害など社会的課題(風水災・地震、自動運転の普及に伴う新たな形態の自動車事故等)への取組み強化
(d)アップセル・クロスセル率の向上
b.パートナーマーケット(※5)
(a)損害保険更改率の向上と生損保新規契約の増加による手数料収入の増加
(b)パートナーマーケット拡大に向けた生命保険案件創出のサポートと同行支援
(c)各種勉強会、E-Learning等の活用による教育の充実、コンプライアンス指導の強化
c.コア営業マーケット(※6)
(a)経営者層への法人向け商品の提案推進、取組みの強化
(b)生命保険分野での保障性商品販売の強化、変額・外貨建て商品の拡販
(c)異業種との業務提携等の促進(付加価値の向上)
③採用・人財育成の推進
当社グループは、経営基盤を安定的に維持するため、優秀な人財の確保や育成が重要であると認識しております。そのため、企業理念をベースとした計画的な採用戦略、早期育成の取組み、評価を継続し、多様な人財が活躍できる仕組み、風土の構築を推進します。
a.戦略を支える人財確保のための採用
(a)サポート体制構築に向けた人財の採用
(b)社内外の信頼できる人脈を介した、紹介・推薦による採用活動をはじめとする多様な採用戦略の構築
(c)新卒採用の強化
b.次世代リーダーの育成
(a)OJTを通じた業務経験の付与
(b)AFP(※7)登録推進によるFPコンサル人財の育成
(c)当社独自の育成プログラムによる教育
(d)若手社員を対象とした早期育成プログラムによる教育
(e)メンター制度を通じたフォローアップ
c.成長意欲の醸成を促す評価
(a)「仕事力」だけではなく「人間力」の評価
(b)月1度のレベルアップ面談による適切な評価、及びフィードバックの実施
④体制整備、コンプライアンスの強化
体制整備、コンプライアンスの強化に取り組むことで社会的信頼性を高めると同時に、全社員がルールを遵守するだけでなく自らお客様のために思考し行動する、お客様本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)を定着させることを目指します。
a.体制整備(PDCAサイクルの構築、改善の仕組みづくり)
(a)保険募集マニュアルに則った適正な募集活動の徹底
(b)部支店での月例点検による業務改善及び事務指標の向上
(c)保険募集人の出勤・活動管理、各種資格研修の受講及び管理の徹底
b.適正な募集活動の推進
(a)正しい募集プロセス(比較推奨・意向把握・情報提供等)の徹底
(b)個人情報管理の徹底
c.コンプライアンスの指導及び教育
(a)「お客様の声」の入力推進と事案の共有、事故の未然防止・再発防止と業務改善
(b)コンプライアンス通信による継続した研修、テストの実施
⑤テクノロジーの活用推進
デジタルを活用した募集・契約管理等、非対面における代理店向け業務支援を加速させます。乗合保険代理店向けにカスタマイズされた、顧客管理システム「A-System」によるデータベースマーケティングの推進や、オンライン上で最適な保険を診断できるアプリ「ほけチョイス」の更なる展開を通じて、デジタルを活用したお客様接点の拡充を図り、同時に生産性の向上を図ります。
a.インフラ基盤整備、情報セキュリティ強化
(a)報酬計算業務の機能を強化し、営業サポート業務の負荷軽減
(b)グループウェアの「スケジュール、メール、チャット」等と連携し、利便性向上
(c)募集プロセス(意向把握等)の管理機能を実装し、保険業法対応と業務効率化
(d)保険契約者・被保険者等管理機能やコンサルティング機能の活用によるアップセル・クロスセルの実現に向けた営業支援機能強化
b.代理店業務支援システム強化
⑥海外戦略の推進
世界最大の米国保険マーケットにおいても、日本国内同様保険ブローカーの高齢化が課題となっています。当社子会社のAgent America, Inc.は西海岸を中心に3つの拠点を構え、日本国内で確立しているM&A及び事業承継のビジネスモデルを展開しています。全米50州中38州(他1特別区)で保険販売を行うことができる強みを活かし、今後は現拠点の拡大及びさらなる拠点展開を目指します。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①コンプライアンス推進及び内部統制の強化
当社は、お客様本位の業務運営方針(フィデューシャリー・デューティー)に則り、業務品質、募集品質の更なる向上を図るとともに、改正保険業法で求められる体制整備の強化に取り組んでまいります。さらに、コンプライアンスの徹底を経営の基本と位置づけ、「業務の有効性及び効率性」、「財務報告の信頼性」、「事業活動に関わる法令等の遵守」、「資産の保全」を目的に、透明で健全性の高い企業経営を目指し、内部統制の強化を図ります。
②継続的な人財の確保と育成
M&A及び事業承継を通して事業が拡大していく上で、各拠点における人財の採用と育成は引続き重要課題です。人財採用につきましては、ブランディング強化を行うとともに、リファラル採用にも積極的に取り組み、当社のミッション、ビジョンに共感できる優秀な人財、特に将来の部支店のリーダーとなりうる営業人財、営業サポート人財の採用に注力いたします。
人財育成におきましては、社内研修制度「Agent Business School」にて目指すべき人財レベルを定め、全部署におけるスタンダードレベルの向上を図ります。また、財産管理を軸としたFPコンサルティングは、他社との差別化を図る上で必須のスキルであるため、「AFP資格支援制度」を制定し、AFP認定者をより一層輩出してまいります。
③デジタル戦略の強化
新型コロナウイルス感染症による影響が続く環境下において、デジタル戦略を強化し、顧客データの戦略的活用、財務・会計との連携強化を図るべく、基幹システムの改良を行ってまいりましたが、コロナ禍からの経済活動の正常化が期待される今後においても更なる改良を重ね、より一層の生産性向上を図ります。また、現在既存のお客様に展開している保険診断アプリ「ほけチョイス」の活用範囲拡大及び更なる改良を通じて、損害保険から生命保険へのクロスセルを促進してまいります。そして、Web等を活用したオンライン商談(非対面募集)や募集人とのWeb面談による活動管理、E-Learningシステム等を活用した教育を推進して非対面ならではの利便性を追求した営業活動の変革を図ります。
④システムリスクへの対応
当社は生産性向上の観点より当社基幹システムの改修によるレベルアップを通じて、データベースマーケティングによる営業活動を推進することとしておりますが、当社が保有する顧客情報の保護のためにシステムの安全性の確保と強化は重要な課題です。当社は、世界的にセキュリティレベルに定評のあるアマゾンウェブサービス(AWS)を利用して顧客情報を管理しておりますが、不正アクセス等のサイバー攻撃が想定されるリスクは完全にゼロにすることはできないとの認識のもと、各種のセキュリティ対策を実施するとともに定期的な運用の見直しを行っております。
⑤M&A及び事業承継マーケットの競争への対応
昨今、保険代理店をめぐる統廃合の動きは加速しており、業界他社と、M&A及び事業承継ビジネスにおいて競合するケースが一定程度発生しています。当社は、「保険代理店支援プラットフォーム」の強みである強力なサポート体制を構築してM&A及び事業承継を展開しておりますが、競争環境において、業界他社を上回る成長を実現するために、「保険代理店支援プラットフォーム」の更なる体制強化に加え、合流候補代理店へ訴求できるような企業ブランディングの強化に取り組んでまいります。
⑥財務上の課題
当社は、主として運転資金の充実化を目的とした金融機関から借り入れはあるものの、基本的に自己資金及び営業キャッシュ・フローによる安定的な財務基盤を確保しており、優先的に対処すべき財務上の課題はありません。ただし、今後の成長戦略の展開に伴い、内部留保の確保と営業キャッシュ・フローの改善等により財務体質を強化するとともに、株式市場からの必要な資金の確保と、金融機関からの融資等により多様な資金調達を図ってまいります。
※1 出典:「ファクトブック2023 日本の損害保険」(一般社団法人日本損害保険協会)
※2 出典:「2023年版 生命保険の動向」(一般社団法人生命保険協会)
※3 出典:「代理店実在数の推移」(一般社団法人日本損害保険協会)
※4 出典:「募集従事者数の推移」(一般社団法人日本損害保険協会)
※5 パートナーマーケット・・・パートナー社員及び勤務型代理店が持つマーケットのことを指します。
※6 コア営業マーケット・・・コア営業社員が持つマーケットのことを指します。
※7 AFP・・・Affiliated Financial Plannerの略で、日本FP協会が認定するファイナンシャルプランナーの
国内民間資格のことを指します。
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