エンカレッジ・テクノロジ 【東証スタンダード:3682】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社は、事業活動に影響を与える様々なリスクを正しく把握し、評価・分析して(Plan)、発生の未然防止、発生した時には影響を最小限にする対策を施し(Do)、その効果を検証(Check)、再発の防止(Action)を行っております。こうしたPDCAサイクルを実施・確認するため、取締役会において「リスク・コンプライアンス管理規程」を定め、四半期に1回以上、リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。リスク・コンプライアンス委員会においては、継続的なリスクの把握と改善活動となるリスクマネジメントに取組み、議論、検討された事項については、定期的、または重要なリスクが発生した場合には随時に取締役会に報告を行っております。
2024年3月期におきましては、サプライチェーン等における人権尊重の機運の高まりを受けて、当社の人権方針を定めました。(https://www.et-x.jp/company/human_rights/)継続的・自律的なデュー・ディリジェンスを実践するため、リスク・コンプライアンス委員会において進捗および結果のモニタリングを担う体制も整備しております。
当社が認識するリスク事象につきましては、
1.経済環境 2.自然災害 3.法律・規制(人権を含む)
4.レピュテーション 5.不正 6.製品/サービスおよびオペレーション
7.システム 8.人材・労務 9.ガバナンス
のカテゴリごとに想定する事象を潜在リスクとして抽出しております。次に、抽出した事象を発生可能性(3段階)と財政状態及び経営成績に与える影響(4段階)の区分で分類した象限に評価・プロットし、リスクマップを作成しております。このリスクマップにプロットされたリスクは、発生可能性と影響度の高いものから低くする取組みとともに、社会や市場の環境、経営状況や人材の状況を勘案して、定期的に見直しを行っております。
こうした手続きを踏まえた上で、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社はこれらの事業等のリスクを認識した上で、その回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、当社株式への投資判断は本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)製品及びサービスについて
①製品競争力について
「ESS REC(REC)」は、克明な操作記録と検索性によって、システム証跡監査ツール市場を創出してきた主力製品でありますが、近年、システム証跡監査ツール市場の認知度が高まるとともに、海外製品も含めた新たな類似製品の参入が続いております。
また、2021年3月に販売を開始した、企業のDX推進を支援する次世代型特権ID管理ソフトウエア「ESS AdminONE」は、より市場規模の大きい特権ID管理ツール市場において後発製品ではあるものの「REC」と組み合わせて総合的な特権ID管理を実現するソリューションとして提案し、国内外の競合製品からの差別化を図っております。さらには、「ESS REC Cloud」では広く普及しているクラウド環境にも対応しております。2023年4月に販売を開始した「ESS REC 6」は、働き方改革をサポートするために、テレワーク時のモニタリングとともに操作者の常時本人確認を行うことで高いセキュリティを確保しております。2024年5月には、在宅・リモートにおけるシステム操作の安全性の担保やブラウザ操作の証跡機能を強化するなど複数の機能を追加して、差別化を進めております。
当社成長の源泉はこれらの製品によるライセンス売上であるため、当社製品と比較して高機能であったり、同等の機能でありながら「低価格」を設定するような強力なライバル製品の出現によって「REC」の優位性が失われた場合や、「ESS AdminONE」「ESS REC Cloud」等他製品でも競争力が保てない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②製品開発について
当社の製品開発の基本スタンスは、システム運用の安全と安定を実現するためのパッケージソフトウエアを提供することにあります。当社では、システム運用のあるべき姿を汎用的に捉えて製品を企画し開発を行うため、開発した製品やサービスが各顧客ごとのシステム運用現場の環境や実運用に適さないことにより、市場に受け入れられない場合があります。また、使い易さ、技術革新への対応の遅れなどの機能面や価格面において他社製品に劣るなどの理由によって、売上貢献できない場合もあります。さらに、企画した時点の計画よりも大幅に製品開発に時間を費やした場合や、開発した製品に不具合があり、当該不具合の改修に多大な工数を要する場合もあり、いずれの場合においても開発費用の回収を実現することが出来ず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ライセンスに付随する保守サポートサービス及び品質について
当社製品の使用許諾(ライセンス)契約をされた顧客に対しては、原則として保守サポートサービス契約を締結していただき、当社製品の最新バージョンの提供と顧客のシステム環境下で、安定的に使用いただけるようサポートを行っております。顧客のシステム更改で新システムに当社製品が採用されない場合や、システムの縮小・廃止などによる保守契約の解除や変更、また重大な製品の欠陥やインシデントの解決が長期化するなどによって顧客の信頼を損ね保守契約の更新に繋がらない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④コンサルティングサービスについて
当社はコンサルティングサービス業務として、当社製品の導入にあたっての導入支援やシステム構築支援をメニュー化して提供しております。「ESS SmartIT Operation」の展開に伴って、従来の単体製品のインストールや各種支援からIT全般統制に向けたシステム構築の支援へと、システム要件の拡大や役務提供範囲が拡大しております。
したがって、要件実現に向けて当社の役務提供範囲や検収条件及び納期設定、提出書類の品質に至るまでのマネジメントが要求されます。何らかのトラブルによって検収の遅れや見積以上の工数が発生しても顧客に請求できない場合、あるいは顧客の要求仕様との齟齬が生じ、損害賠償や補償作業を要求された場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)特定取引先に対する取引依存について
当社においては、全売上高に占める株式会社NTTデータへの売上高の割合が高く、2023年3月期は19.7%、2024年3月期は19.3%となっております。株式会社NTTデータとは代理店契約を締結し、取引開始以来永年にわたり安定した取引を継続しておりますが、今後当該契約が何らかの理由で変更あるいは解消された場合には、当社の財務状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)人材の確保及び組織的経営について
①人材確保について
当社は、AI技術やクラウドサービス、最新のセキュリティ対策などを盛り込んだ次世代型新製品の開発、既存製品の拡張・改良及び製品の統合化などの研究開発テーマに取り組んでおり、これらの業務にあたる開発技術者の増強を図っております。またコンサルティング業務やサポートサービス業務に従事するシステム技術者の増員に加え、営業職人材の獲得も喫緊の課題となっております。IT技術者不足による賃金の高騰とこれに伴う人材市場の流動化、少子化による新卒採用の売り手市場化により、今後も採用は困難な状況が続くものと考えております。
こうした状況を鑑み、2022年3月期より人事制度を刷新し、育児・介護に関する諸制度や在宅勤務、時短勤務など柔軟な働き方を導入するとともに、職務記述書にもとづく公平・公正な評価制度を実施しております。2024年3月期に行った若手・中堅層を中心に平均9.2%の賃金のベースアップ、新卒初任給の11.1%アップに続き、2024年4月からも全社員平均で6%の賃上げを行い、キャリア採用ならびに新卒採用時の競争力を高めるとともに、離職の防止に取り組んでおります。採用した社員に対しては専門技術教育とOJTによる育成を行い、スキルアップによる能力の発揮と、さらなるモチベーション向上による定着化を図っております。また、在宅勤務が定常化する中でも一般社員と経営者、幹部社員間のコミュニケーションを密にする一体感醸成施策を実施するなど、生産性の向上と仕事や会社生活に関する不安や不満を解消し離職防止にも努めております。
IT技術者の確保が計画通りに進まない場合、研究開発の遅れによる製品リリースの遅延が発生する可能性があり、これにより、連携する営業施策を変更する可能性があります。加えて営業職の人材確保が計画通りに進まない場合は顧客開拓の遅延や競合製品による商談の失注などにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は「人材」をマテリアリティ(重要課題)と位置付けており、「2サステナビリティに関する考え方及び取組」に具体的な内容を記載しております。
②組織的経営について
当社が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るためには、事業計画の立案と実行、その業務進捗管理や部門間の連携などを担う多様性のあるマネジメント層の育成強化が課題となっております。事業基盤の拡大に併せて組織を成長させていくためには、業務執行レベルで部門責任者が意思決定を迅速に行い、全社横断的な課題を解決することが必要になります。
そのため、当事業年度より組織改革を行い、役割による組織化とともに次世代を嘱望する若手リーダーの抜擢により、次世代を担う人材が業務管理や部門間連携を図るなどのマネジメントスキルを体得する機会を創出しております。
現在のところ、技術部門のみならず全社において他社でのマネジメント経験を有するシニア・ミドル層の人材獲得とともに女性の幹部社員登用も進んでおりますが、次世代のリーダーや幹部社員候補育成の遅れなどによって事業計画の推進に支障をきたした場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)知的財産権の侵害による訴訟リスクについて
当社は自ら開発した製品に係わる技術要件および商標について知的財産権を登録申請することによって、他社
からの権利侵害の防止を図っております。しかし、当社が認識していない知的財産権が既に成立している可能性
や、使用しているフリーソフトウエアが第三者の知的財産権を侵害している可能性は否定できず、当社製品を使
用する顧客あるいは当社の侵害について、第三者からの請求に対応する義務を当社は負っております。
このような知的財産権に関しての損害賠償請求、使用差し止め請求、ロイヤリティ支払要求が発生した場合、
その訴訟対応や費用負担により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)情報セキュリティに関するリスクについて
当社においては、オフィスでの執務だけでなく在宅勤務や協力会社のリモートワーク環境も取り入れ、常に
インターネットを利用したデータセンターのサーバー利用、メールの送受信や情報の発信、収集を行っており
ます。こうした環境では、コンピュータウイルスの侵入や標的型メールの攻撃等により、顧客や当社の機密情
報又は個人情報が当社外に流出する危険やランサムウエアによって当該情報が利用できなくなる可能性が常に
存在しております。また、社員(協力会社社員を含む 以下「社員」)だけでなく退職した社員が営業機密や技
術情報などを不正に入手し、外部へ持ち出す可能性があります。
当社では、社外からのネットワークの脆弱性を狙った攻撃やウイルス付メールなどに対し、ハードウエア、
ソフトウエアによる防御とともに社員への教育や啓蒙など、継続的に適切なセキュリティを向上させる対策を
講じております。また、社内からの不正な手段による情報の持ち出し、漏洩に対しても、「ESS REC」「ESS
AdminONE」など当社製品を導入しており、特に「ESS REC 6」では、常時本人認証の機能を活用してPC画面の覗
き見や他人のPC利用を制御しております。
また、リスク・コンプライアンス委員会の下に情報セキュリティ部会を設置し、情報セキュリティ対策およ
び活動計画の策定、実行の評価、情報セキュリティインシデントへの対応、社員に対する情報セキュリティ
に関する啓発と教育に取り組んでおります。
しかし、過去に例の無いウイルス攻撃等により当社が講じた対策が十分に機能しない場合や、当社製品の機
能を無効化するなどの悪意により、情報セキュリティに関するリスクが現実のものとなった場合には、社会的
な信用の失墜等によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
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