アンリツ 【東証プライム:6754】「電気機器」 へ投稿
企業概要
(1) サステナビリティに関する方針
2021年4月、当社は2030年に向けて、経営ビジョン、経営方針およびサステナビリティ方針を改定しました。本方針は、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会課題の解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されるという考え方に立つものであり、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の5つのP、すなわち、「People」、「Planet」、「Prosperity」、「Peace」、「Partnership」の要素を包含しています。
サステナビリティ方針
私たちは「誠と和と意欲」をもってグローバル社会の持続可能な未来づくりに貢献することを通じて、企業価値の向上を目指します。
1. 長期ビジョンのもと事業活動を通じて、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献します。
2. 気候変動などの環境問題へ積極的に取り組み、人と地球にやさしい未来づくりに貢献します。
3. すべての人の人権を尊重し、多様な人財とともに個々人が成長し、健康で働きがいのある職場づくりに努めます。
4. 高い倫理観と強い責任感をもって公正で誠実な活動を行い、経営の透明性を維持して社会の信頼と期待に応える企業となります。
5. ステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、協力関係を育み、社会課題の解決に果敢に挑んでいきます。
(2) マテリアリティ(重要課題)
当社はサステビリティ経営において、「事業を通じて解決する社会課題」と「社会の要請に応える課題(ESG)」への対応を両輪とし、事業分野別マテリアリティとESG分野別マテリアリティを設定しています。経営ビジョン、経営方針およびサステナビリティ方針の改定とその他セグメント内の体制変更、さらに2022年1月から高砂製作所をグループに加えたことから、社会課題の重要度と当社の企業価値向上の2つの視点でマテリアリティを見直しました。
『「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。』という経営ビジョンのもと、「安全・安心で豊かなグローバル社会の発展」を享受する未来を目指し、「はかる」技術によるイノベーション促進をグループ全体の取り組みとしています。
<事業セグメント別マテリアリティ>
通信計測事業:DX技術革新への対応、強靭なITインフラ整備
デジタル革新で新たな社会の変革を目指すお客さまをサポートし、安全・安心な通信インフラの構築に通信テストソリューションで貢献する
PQA事業 :食品ロスの低減、品質保証ソリューションの提供
安全で安心できる食品や医薬品の安定供給を目指すお客さまをサポートし、高信頼・高感度の検出機と品質管理制御システムで生産ラインの品質検査工程自動化や食品ロス低減に貢献する
以下は「その他」セグメント内事業の一部です。
環境計測事業(高砂製作所含む):自然災害に対する防災・減災、脱炭素社会へ貢献する製品の提供
デジタル革新で新たな社会の変革を目指すお客さまをサポートし、情報通信ソリューションで新たなデジタル社会の変革、EV(電気自動車)や電池の評価ソリューションで脱炭素社会の実現に貢献する
センシング&デバイス事業:強靭なITインフラ整備、健康的な生活の確保
デジタル革新で新たな社会の変革を目指すお客さまをサポートし、光デバイス事業、超高速電子デバイスで安全・安心で快適な社会の実現に貢献する
<ESG分野におけるマテリアリティ>
サステナビリティ方針に基づいて設定した社会の要請(ESG)に応えるマテリアリティは以下のとおりです。
環境(E):気候変動への対応
当社は気候変動への対応を最も重要なマテリアリティとしています。世界的な気候変動は、社会生活や産業界に多大な影響を及ぼし、洪水や干ばつなどの自然災害を引き起こすからです。当社の製造拠点である福島県郡山市の東北アンリツ第一工場が、過去2回にわたり河川氾濫による浸水被害に遭いました。また、取引先さまも被災するなど、当社の調達・製造・物流のバリューチェーン全体に影響をもたらす課題であると認識しています。気候変動に大きな影響を与える温室効果ガスの削減のため、当社は再生可能エネルギーの自家発電・自家消費に優先的に取り組んでいきます。
社会(S):人権の尊重、多様性の推進(ダイバーシティ&インクルージョン)
当社は人権の尊重と多様性の推進(ダイバーシティ&インクルージョン)をアンリツグループ共通の考え方として適用し、社内に浸透させます。変化が多く予想困難で複雑な現代において企業が成長を続けていくためには、多様な価値観を持つ人財の力が必要と認識しているからです。また個々人の能力向上が会社の成長に欠かせないことから人財の育成にも取り組んでいきます。
ガバナンス(G):経営の透明性維持
当社は経営の透明性を維持し、社会の信頼と期待に応える企業になることを目指しています。コーポレートガバナンス強化のために取締役会の実効性向上に取り組むほか、リスクマネジメント推進や社会的責務である情報セキュリティの強化を進めていきます。
区分 | マテリアリティ | |
事業セグメント別 | 通信計測事業 | DX技術革新への対応 |
強靭なITインフラ整備 | ||
PQA事業 | 食品ロスの低減 | |
品質保証ソリューションの提供 | ||
環境計測事業 | 自然災害に対する防災・減災 | |
脱炭素社会へ貢献する製品の提供 | ||
センシング&デバイス事業 | 強靭なITインフラ整備 | |
健康的な生活の確保 | ||
ESG分野別 | 環境(E) | 気候変動への対応 |
社会(S) | 人権の尊重 | |
多様性の推進 (ダイバーシティ&インクルージョン) | ||
ガバナンス(G) | 経営の透明性維持 |
(3) サステナビリティ共通の開示
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果とはさまざまな要因により大きく異なる可能性があります。
①ガバナンス
当社は、経営理念、経営ビジョン、経営方針およびサステナビリティ方針に基づき、サステナビリティ活動を推進しています。主要な部門の代表者からなる会議体を2023年4月にサステナビリティ推進会議からサステナビリティ委員会へ改め、重点項目を明確にして情報を共有し、改善に向けた議論を行い、その内容を各代表者から各部門に展開・浸透させています。また、サステナビリティ推進担当役員が報告する経営戦略会議および取締役会において進捗状況を議論しています。なお、2022年度は、取締役会でのサステナビリティ課題に関する議論は13件でした。
※上図は2023年4月1日現在のものです。
②戦略
当社のコンピテンシーである「はかる」技術を事業における取り組みの核とし、当社グループの力を最大限に発揮して既存事業の拡大と新領域開拓を目指し、強固な財務体質を活かして積極的な成長投資を行います。製造会社である当社は、「強い“ものづくり”の会社」として調達能力向上・災害対策強化・生産の自動化を進め、労働生産性を高める働き方改革により社員の生活の充実化を図ります。そして2030年売上2,000億円企業に成長させるため、4つのカンパニーと先進技術研究所のコラボレーションのもと、事業領域に4つの新領域を加えて挑みます。これらにより『「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。』の経営ビジョンを確かなものとして、グローバル社会の持続可能な未来づくりに貢献いたします。2022年1月からEV、電池領域への成長投資として高砂製作所を当社グループに加えています。
4つの新領域:「ローカル5G」「EV、電池」「光センシング」「医療、医薬品」
③リスク管理
当社は各事業部門、コーポレート部門、グループ会社が3ヵ年ごとの中期経営計画(GLP)を策定しています。本計画ではリスクと機会を構成要素の一つとしています。経営戦略会議において、計画策定時および毎年のレビュー時にリスクの低減と機会の実現・成長について審議し、取締役会に報告しています。
④指標と目標
当社は、気候変動への対応や人権の尊重、多様性の推進など、社会の持続可能性を阻害するさまざまな課題の解決に向けて、積極的に取り組んでいます。GLP2023では、ESG分野におけるサステナビリティ目標を策定し、取り組みを進めています。
| KPI | GLP2023サステナビリティ目標 (2021~2023年度までの目標) | 2022年度の進捗 |
環境 (E) | 温室効果ガス(Scope1+2)※1 | 2015年度比 23%削減 | 6.7%削減(参考値) |
温室効果ガス(Scope3)※1 | 2018年度比 13%削減 | 21.8%削減(参考値) | |
自家発電比率(PGRE 30)※2 | 13%以上(2018年度電力消費量を基準) | 算出中 | |
社会 (S) | 女性の活躍推進 | 女性管理職比率15%以上 | 10.5%(グローバル連結 2023年3月末) |
高齢者活躍推進 | 70歳までの雇用および新処遇制度確立 | 70歳までの雇用および新処遇制度運用開始 | |
障がい者雇用促進 | 職域開発による法定雇用率2.3%達成 | 障がい者雇用率2.36%(2023年3月末) | |
サプライチェーン・デューデリジェンスの強化 | 3年累積10社以上 | 6社実施(2年累積で12社) | |
CSR調達に係るサプライヤへの情報発信2回/年以上、教育1回/年以上 | 情報発信3回、教育1回実施 | ||
ガバナンス (G) | 取締役会の多様性の推進 | 社外取締役比率50%以上 | 社外取締役比率50%継続(10名中5名) |
海外子会社の内部統制構築 | 全海外子会社が統制自己評価(CSA)の基準を満たす | 全ての項目で基準を満たす会社:6% 9割の項目で基準を満たす会社:87% |
※1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)/ Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出/ Scope3:Scope1・Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)/ 当社ではScope3のKPIにカテゴリ1および11を採用
※2 PGRE 30:(4)気候変動 に説明を記載
なお、事業を通じて解決する社会課題のサステナビリティ目標は、通信計測セグメントでDX技術革新や強靭なITインフラ整備に貢献する「5G、Beyond 5G、5G利活用、400G/800G向け当社製品の提供増」とし、PQAセグメントで食品ロス低減や品質保証に貢献する「検査精度・感度・機能を向上した新製品の売上に占める割合増」としています。
このほか、当社は、グローバルに事業を展開する企業として、近年重要性が高まっている人権に配慮した活動をさらに推進するため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権方針を2022年12月に制定しました。本方針のもと、企業活動に関わるすべての人々の人権を尊重し、ステークホルダーの皆様とともに持続可能な社会の実現に努めてまいります。
「アンリツグループ 人権方針」の構成
・支持、尊重する国際的規範等
・適用範囲
・人権尊重の責任
・人権デューデリジェンス
・是正措置
・救済へのアクセス
・法令遵守
・ステークホルダーエンゲージメント
・責任者
・周知浸透と教育研修
・人権方針の制定プロセスと見直し
詳細は当社ウエブサイト(https://www.anritsu.com/ja-jp/about-anritsu/sustainability)を参照ください。
(4) 気候変動
国際社会のサステナビリティ課題は、2015年9月、国連総会において全会一致で「持続可能な開発目標(SDGs)」として定められました。当社は最も重要な社会課題を気候変動への対応と捉え、温室効果ガスの排出削減計画をScience Based Targets Initiative(SBTi)に提出し、2019年12月に、この計画に掲げた目標が気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change )の気候科学に基づく排出シナリオ(当初は2℃)に整合していると承認されました。検討段階では再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)電力証書の購入も計画していましたが、当社グループの事業遂行に必要な電力を自前でも発電していくことがSDGsの目指す姿に適うものと考え、再エネ自家発電(PGRE:Private Generation of Renewable Energy)を重視することにしました。そこで、2020年4月に「Anritsu Climate Change Action PGRE 30 *(以下、「PGRE 30」といいます。)」を策定し、温室効果ガス削減に向けて果敢に挑むこととしました。主要拠点である神奈川県厚木市、福島県郡山市、米国カリフォルニア州Morgan Hillの3地区に自社消費用の太陽光発電設備を導入・増設することで、SDGsの目標7のターゲット7.2に掲げる「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再エネの割合を大幅に拡大させる」という目標達成に貢献してまいります。
* PGRE30は、一部の子会社を除いた2018年度の当社グループの電力使用量を基準に、再エネの一つである太陽光自家発電比率を、2018年度の0.8%から2030年頃を目途に30%程度にまで高めていく野心的な目標
さらに、2022年12月に2050年までに事業活動に伴う温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す宣言を行い、UNFCCC(国連気候変動枠組条約事務局)のRace To Zeroに参加しました。これらの対応により、2030年をターゲットとする中期目標を引き上げて「産業革命前と比較して気温上昇を1.5℃に抑える」水準と整合した内容で2023年5月にSBTiに再申請しました。
<TCFD提言に沿った情報開示>
当社は、2021年6月30日付で気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。
① ガバナンス
気候変動に関する取り組みの推進は、取締役会の監督のもと、グループCEOおよびCFOが責任を負っています。リスクと機会の管理は、グループ全体のリスクマネジメントシステムに組み込まれ、環境総括役員(現在は、社長・グループCEO)がリスク管理責任者としての責務を負っています。環境総括役員は当社グループの環境戦略を担う環境・品質推進部を所管するとともに、環境総括責任者代行に国内グループにおける環境管理委員会の委員長、海外グループにおけるグローバル環境管理会議の議長を務めさせ、リスクと機会をグローバルに評価・管理させています。また、環境総括役員が経営戦略会議および取締役会に、年間を通したリスクと機会のマネジメントサイクルの結果を定期的に報告し、意見や必要な指示を受けています。気候変動に関する情報開示については、毎年度、GLPの策定もしくはレビューとして経営戦略会議で審議・承認し、取締役会に報告し、その監督のもとで行います。
② 戦略
気温が1.5℃あるいは4℃上昇する場合のシナリオをベースに、短期(1年)・中期(3年)・長期(~30年)のリスクと機会を抽出し、気候変動に関する分析を実施しています。その結果、両シナリオ分析において、規制強化の影響や生産拠点の一部での物理的な影響を想定し、対応策を検討しました。また、気候変動への対応を経営上の重要課題と位置づけ、バリューチェーン全体に与える影響を含めて、事業戦略および財務計画への影響を考慮した対応策を策定しています。
タイプ | 要因 | シナリオ | 想定シナリオの詳細 | 時間的視点 | 想定される影響 | 影響度* | 対応策 |
移行 リスク | 炭素税の課税 | 1.5℃ | 温室効果ガス排出量への課税 | 長期 | ・事業活動に伴うコストの増加 | やや大 | ・Scope1+2削減を1.5℃目標に強化 |
1.5℃ | 原価上昇で企業業績が悪化 | 中期 | ・顧客の投資が縮小・遅延して売上が減少 ・調達難や部材コスト増により利益が減少 | 大 | ・ソフトウェアやクラウドベースの製品開発を促進、部材価格変動の影響が少ないビジネスモデルを構築 | ||
物理 リスク | 自然災害の増加・激甚化 | 4℃ | 異常気象の頻発化・激甚化 | 長期 | ・生産工場の操業や部材の調達に影響 | 大 | ・東北アンリツ第二工場に新棟を建設して災害リスクを低減 ・部材生産地をマップ化し、調達への影響を最小化 ・複数社購買可能な体制を構築 |
機会 | エネルギーミックスの変化 | 1.5℃ | 再エネ発電比率の上昇 | 長期 | ・太陽光発電設備の導入コスト低下 | やや大 | ・PGRE 30の推進で自家発電比率を高め、電力料金を低減 ・東北アンリツ第二工場にメガソーラー級発電設備と蓄電池を設置 |
省エネ技術の進展 | 1.5℃ | 投資による新技術の普及 | 中期 | ・新たな省エネ技術の採用で製品の環境付加価値向上 | やや大 | ・環境配慮型製品の開発推進で製品を省エネ化 ・省エネ部品を積極採用 | |
市場の変化 | 1.5℃ | 高機能と環境性能を備えた製品の需要拡大 | 長期 | ・高検出精度製品の需要増加 | やや大 | ・高精度かつ省エネの金属検出機等、食品工場向け製品の開発を推進 | |
中期 | ・試作機不要の開発を望む顧客が増加し、仮想化等、シミュレーション試験環境の需要増 | やや大 | ・ソフトウェアベースの仮想化試験環境ソリューションを提供 | ||||
中期 | ・次世代グリーンデータセンターの省エネ化に向け光電融合デバイスの開発・製造用測定器の需要増加 | やや大 | ・光電融合デバイスの開発・製造向けソリューションを提供 | ||||
長期 | ・EV普及により高効率パワートレインや電池の開発用評価機器の需要増加 ・再エネや燃料電池を効率的に活用するエネルギーマネジメントシステムの需要拡大 | やや大 | ・高品質な電池やパワートレインの開発を効率化するテストソリューションを強化 ・パートナーと協働でエネルギーマネジメントシステムの事業機会を獲得 | ||||
自然災害の増加・激甚化 | 4℃ | 異常気象の頻発化・激甚化 | 長期 | ・防災投資が増加して河川や道路の監視ソリューションの需要増加 | 中 | ・映像情報システム等、防災・減災製品の販売体制強化 |
*「影響度」は、売上・利益等の財務上の影響額とそのリスクと機会が顕在化する可能性を考慮して、「大、やや大、中、やや小、小」の5段階で当社独自の基準に基づいて判断したものです。なお、影響度の低い「やや小」と「小」の掲載は省略しています。
③ リスク管理
リスクと機会については、各事業部門、コーポレート部門、グループ会社がGLPで抽出しています。環境管理委員会は、それらの発生の可能性と影響度から重要な項目を抽出し、対応策や取り組みを特定しています。その結果は、定期的に経営戦略会議で審議・承認され、取締役会へ報告されています。また、気候変動のリスクと機会は、「3 事業等のリスク」に記載の環境リスクに含まれ、グループ全社で総合的に管理するリスクマネジメントシステムに組み込まれています。
④ 指標と目標
温室効果ガス(CO2換算)排出量(Scope1+2およびScope3)と再エネ自家発電比率を指標としています。CO2排出量の実績は、米国カリフォルニア州で配電会社から誤メーターの報告を受けたため、換算係数を再調査した結果、排出量を2015年度から訂正することにいたしました。2022年度の進捗は、購入した電力値の第三者検証前のため、参考値として記載しています。検証後の数値については、サステナビリティレポートや統合報告書に記載します。
Scope1+2のCO2排出量の削減については、その大部分がエネルギー消費によるものであるため、工場やオフィスでの省エネ活動および太陽光自家発電設備の増設が主な取り組みとなります。Scope3では、取引先さまとの協働や当社省エネ製品への切り替えを進め、Scope3総排出量の約8割を占める「購入した製品・サービス(Category1)」および「販売した製品を使用(Category11)」のCO2排出量を削減することが主な取り組みとなります。
主要拠点での再エネ自家発電の取り組みの一環として、東北アンリツ第二工場に1.1MWの太陽光発電設備の増設と400kWの蓄電池を設置しました。太陽光発電の開始は当初計画より遅れ、2023年1月から稼働しています。また蓄電池は電力会社の許可が5月に下り、6月から稼働しています。
2022年12月に、2050年までに事業活動に伴う温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す宣言を行い、UNFCCC(国連気候変動枠組条約事務局)のRace To Zeroに参加しました。これらに対応するため、2030年をターゲットとする中期目標を「産業革命前と比較して気温上昇を1.5℃に抑える」水準と整合した目標に引き上げ、2023年5月にSBTiに再申請しました。その際に高砂製作所等を含めるバウンダリーの変更を行っています。
KPI | 目標 | 2022年度進捗 |
Scope1+2:温室効果ガス排出量の削減 | 2030年度までに2021年度比で42%削減する | 2021年度比で6.2%増加(参考値) |
Scope3:温室効果ガス排出量の削減 | 2030年度までに基準年度※1比で27%削減する | 基準年度比で8.4%削減(参考値) |
太陽光自家発電比率の向上 | 2018年度のアンリツグループの電力消費量※2を基準に、2030年ごろまでに0.8%から30%程度まで高める(PGRE 30) | 算出中 |
※1 基準年度:2018年度から2021年度までの平均値
※2 アンリツ(株)の100%子会社ではないATテクマック(株)の電力消費量は除く。
(5) 人的資本
めまぐるしく経営環境が変化している今日、既存事業の拡大と新規ビジネスの創出に資する源泉は“人”であり、多様性であると考えています。「会社と多様な従業員がベクトルを合わせ、事業(社会)貢献意識を持ち、仕事と私生活のバランスを取りながら生き生きと働いている」という人財ビジョンのもと、会社と従業員がサステナブルな未来を共有し、社会課題の解決を目指す、“人”と“組織”つくりを推進しています。
① ガバナンス
人的資本については、人事総務担当役員が報告する経営戦略会議および取締役会において、GLP人財戦略・施策およびその進捗状況、従業員や組織の状況そしてエンゲージメント調査結果等を議論しています。また、人的資本に関してサステナビリティ委員会(2023年4月にサステナビリティ推進会議からサステナビリティ委員会へ改名)、企業倫理委員会、採用委員会、管理職登用委員会そして研修・表彰委員会を設置し、各委員会の担当役員が報告する経営戦略会議および取締役会において活動内容を議論しています。
・サステナビリティ委員会:サステナビリティに関する課題、人的資本に関しては主に人権およびダイバーシティに関する課題に取り組む
・企業倫理推進委員会 :倫理法令遵守(コンプライアンス)、人的資本に関しては、各種ハラスメントや36協定違反等のモニタリングと改善に取り組む
・採用委員会 :従業員の採用に関する活動(計画策定・実行・採用当否判定・レビュー)を実施し、求められる人財の継続的な量的・質的確保をはかる
・管理職登用委員会 :管理職の登用審査を実施し、その当否を判定するとともに会社事業の発展に資する管理職の継続的輩出をはかる
・研修・表彰委員会 :従業員のエンゲージメント向上および研修を推進して人財の育成をはかる
さらに、役員の指名および報酬については、社外取締役を委員長とする指名委員会および報酬委員会を設置し、役員の選任、選定、解任、解雇そして報酬の妥当性および透明性をはかっています。
※ 上図は2023年4月1日現在のものです。
② 戦略
2030年売上2,000億円企業を目指し、GLP2023は新たな芽を成長させる3年とし、既存事業の拡大とともに、これまでの概念にとらわれず、“「はかる」を超える” 新規事業領域の開拓に取り組んでいます。また、社会の要請に対応し社会課題解決に貢献してこそ企業価値向上が実現されると考え、GLP2023ではサステナビリティ課題への目標も設定し、ダイバーシティ経営の推進にも取り組んでいます。GLP達成に向け、人的資本(人財活力)を最大化するための3本の柱を「人財多様性推進」「人財育成」「環境整備」とし、それぞれ以下の方針を掲げて取り組みを進めています。
人財多様性推進方針
価値観や考え方も含め多様性を持つバラエティに富んだ人財が混ざり合い、多様な視点と強みを活かし新たな価値を創造する。
人財育成方針
自らの壁を取り払い、新たな領域に好奇心を持って取り組む人財、ステークホルダーや他社と共に社会課題の解決を目指す人財を育成する。
環境整備方針
「生活と仕事のバランスを考えて、働きやすく人生を楽しめる会社」と「労働生産性が高く働きがいがある会社」の両立に向けた制度・環境を整備する。
<人財多様性推進>
人財多様性推進においては、女性管理職・外国籍管理職比率の向上、女性・外国籍を含む経験者採用の強化、シニア層活用の推進、そして障がい者雇用の推進を重点施策として実施しており、価値観や考え方も含め多様性を持った人財が混ざりあい、多様な視点と強みを活かして新たな価値を創造する組織を目指しています。
女性活躍推進においては、女性が生活と仕事を両立しながら活躍し、より直接的に事業の成長と企業価値向上に関与できるよう、採用活動・キャリア形成/継続に注力しています。2022年度から自分のライフステージ、ライフスタイルに合わせて働くことができる新しい管理職コースを新設しました。妊娠、出産、育児期間中のテレワーク制度新設とも合わせて、ライフワークバランスをより重視したキャリア形成が可能となります。管理職に占める女性の割合は、2022年度末で、国内3.1%、グローバル連結10.5%となっています(地域別・年度別実績は下表のとおり)。なお、国内においては2023年4月1日付けで5名の女性管理職が増え、国内女性管理職比率が4.0%となりました。GLP2023目標の達成に向けて引き続き取り組みが必要な状況ではありますが、これまでの女性活躍推進実績が評価され、2023年3月に女性活躍推進法に基づく「えるぼし」の最高位である3段階目認定を初めて取得しました。今後も引き続き国内女性管理職増加に向けた取り組みに注力し、GLP2023目標の達成を目指します。
管理職に占める女性の割合 (女性管理職数÷全管理職数)(単位:%)
| 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
日本 | 1.3 | 1.0 | 1.1 | 1.8 | 2.3 | 2.8 | 3.1 |
米州 | 24.7 | 23.0 | 20.2 | 18.3 | 17.9 | 21.6 | 17.4 |
EMEA * | 19.7 | 22.1 | 23.5 | 21.6 | 24.2 | 20.3 | 20.3 |
アジア他 | 21.7 | 21.6 | 24.1 | 23.4 | 24.0 | 23.7 | 22.3 |
グローバル連結 | 10.2 | 9.9 | 10.5 | 10.4 | 10.8 | 10.9 | 10.5 |
*EMEA(Europe, Middle East and Africa):欧州・中近東・アフリカ地域
経験者採用は、多様なバックグラウンドを持つ外部人財、新規事業領域に取り組む人財の獲得を目的として積極的に推進しています。また女性管理職および管理職候補の採用を強化しています。
新規採用者に占める経験者の割合および女性の割合 (単位:%)
| 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
経験者採用比率 ※1 | 13.0 | 5.0 | 10.0 | 6.9 | 20.9 | 44.2 | 36.5 |
女性経験者比率 ※2 | 33.3 | 0.0 | 66.7 | 0.0 | 11.1 | 32.4 | 30.4 |
※1 経験者採用比率:経験者採用数÷新規採用数
※2 女性経験者比率:経験者採用のうちの女性採用数÷経験者採用数
シニア層活躍推進は、少子化が進展している今日、シニア層の活用と活躍が重要と考え、2022年度から、65歳定年70歳までの雇用(従来は60歳定年65歳までの雇用)および新処遇制度を導入しました。あわせて週休3、4日選択可、短時間勤務、介護等でのテレワーク勤務日数拡大等、シニア層に合わせた働き方の多様化も進めています。
<人財育成>
人財育成においては、従業員一人ひとりが自らの強みを一層磨き、壁を取り払い、自発的にレベルアップし、会社とともに成長していくことを主眼に置いた施策を行っています。
全社向け施策においては、目標・期待役割共有の徹底による挑戦・成長意欲の向上、階層別研修によるキャリアパスを意識した段階的育成、「自ら選択し、自ら学ぶ」を基本コンセプトとした自己啓発支援プログラムをベースとし、従業員の主体的な業務遂行とスキルアップを支援する制度となっています。一人ひとりが働きがいを持って業務に取り組み、従業員の成長と会社の成長をリンクさせることができる環境の実現を目指しています。また、階層別研修は全てアンリツグループ合同で実施し、組織を超えた横のつながりを作り、お互いに触発しあう機会としています。
2021年度にリーダー研修とサブリーダー研修をリニューアルし、会社の期待や意思を明確に伝え、ステップアップの動機づけと成長支援ができるような研修としています。そして2022年度は定年延長実施に合わせ、シニア層の人財活力最大化をはかるため、新たにシニア層キャリア研修を開始しました。
また、変化する事業環境では、さまざまな製品開発に対応できる経験を積んだエンジニアが必要です。アンリツは長期的視野に立ちこのような人財を育成する仕組みとして、若手ソフトウェアエンジニア育成プログラムをスタートさせました。ソフトウェアエンジニアを目指す新入社員は、まずエンジニアリング本部(各カンパニーのソフトウェア開発、AI/クラウド/データ分析等の先端技術開発を担当するカンパニー横断のシェアード開発部門)に配属され、3年間さまざまな製品開発プロジェクトで経験を積み、ソフトウェアエンジニアとしての基礎知識とスキルを身に付けます。カンパニー横断の製品開発に携わることで、将来的な人脈作り、各カンパニー内技術のサイロ化防止とイノベーション創出も目的です。育成プログラムはOJTと集合教育で構成され、当社独自のスキル標準で成長目標を明確化し、一人ひとりの育成計画をデザインしています。OJTは、原則1年ごとに担当製品をローテーションし、技術指導担当のOJTトレーナーと会社生活全般の相談役となるメンターがサポートします。集合教育は、実践に役立つ技術教育、先輩社員を交えたコミュニケーションやリーダーシップ等の研修の他、有志の勉強会も開催されており、同世代エンジニアと学び・教えあう交流の場にもなっています。育成プログラム修了後、各人の適性やキャリア志向に応じて、カンパニー等への配属先を決定するため、働きやすさや働きがいの向上にもつながると考えています。
<環境整備>
環境整備においては、経営戦略の重点施策として定めている「働き方改革」実現に向け、テレワーク制度の導入、育児や介護等によるテレワーク日数拡大、男性の育児休業利用推進、育児や介護などのライフイベントに応じて柔軟な勤務が可能な管理職コースの新設等、働き方やキャリアの多様化に向けたさまざまな施策を行っています。多様な従業員が生活と仕事を両立させることができる働きやすい環境と、働きがいを持ちながら生産性高く働く環境の両立を目指しています。当社は2015年、2018年に続き厚生労働大臣から「子育てサポート企業」と認定され、2020年に3回目の「くるみんマーク」を取得しています。
2022年度は、「産後パパ育休」の施行に合わせ、男性の育児休業利用推進のため、4週間の育児休業取得者に対し給与を実質100%補償する制度を導入しています。制度導入にあたり全管理職に対して、「男性育児休業取得率100%」と「4週間以上の取得推進」が当社グループの方針であること、管理職が対象者へ取得を促すこと、育児休業取得に絡むハラスメントの防止とアンコンシャスバイアスを意識すること等を指示しました。男性も当たり前に育児休業を取得できる環境づくりに努めています。
国内アンリツグループでは、毎年全従業員に対するエンゲージメント調査を実施し、「働きやすさ」と「働きがい」の現状把握そして組織課題の抽出を行っています。調査結果は社内イントラネットで全従業員に公開するとともに、各部門にフィードバックし改善に活用しています。働きがいを向上させる取り組みの一つとして、年1回上司と従業員が、将来のキャリアプランに関するコミュニケーションを取る「自己申告制度」を以前から導入しています。2022年度からは「役割共有面談」としてキャリアプランに加え、部門方針・課題と各人の役割・期待を共有する場として、各人へのフィードバックと合わせて年2回実施しています。
エンゲージメント調査の結果 (単位:%)
| 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
回答率 | 93 | 92 | 98 | 98 | 97 | 98 |
働きやすさ満足度 | 88 | 88 | 87 | 90 | 90 | 90 |
働きがい満足度 | 70 | 70 | 70 | 75 | 75 | 72 |
当社は「働き方改革」の基盤を従業員の健康と考え、健康経営にも積極的に取り組んでいます。
アンリツグループ健康経営方針
アンリツグループは、社員一人ひとりが健康で活き活きと働いていることが、企業価値の源泉であると考えています。全ての社員が健康について関心を持ち、自身の健康上の課題を認識し、健康保持・増進に向けて自律的な取り組みを進めている状態を目指し、アンリツグループ各社とアンリツ健康保険組合が一体となり、健康経営の実現に向けた活動を進めます。
2022年度は、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度の大規模法人部門において「健康経営優良法人2023(ホワイト500)」に認定されました。本制度が開始された2016年度から通算5回目の認定となります。
③ リスク管理
当社グループの力を最大限に発揮して既存事業の拡大と新領域開拓を目指す上で、人財不足や生産性の悪化による事業遂行力の低下が最大のリスクと考えています。カンパニー制を採用している当社ではカンパニーごとに人事責任者を置き、日頃より密に連携することで人財状況の把握と問題への対策を行っています。また、執行役員ごとに採用計画、後継者育成状況のヒアリング等を行う「人財レビュー」を毎年実施することにより人財計画の擦り合わせを行い、リスク低減に努めています。
④ 指標と目標
| 項目 | GLP2023目標 | 2022年度実績 ※1 |
人財多様性推進
| 女性活躍推進 | 女性管理職比率15%以上 | ・女性管理職比率:10.5%(グローバル連結、2023年3月末) ・男性の育児休業取得率:45.2% ・男女の賃金差:全従業員74.7%、正規従業員75.4%、非正規従業員72.0% ・「えるぼし」3段階目認定 |
シニア層活躍推進 | 70歳までの雇用および新処遇制度導入 | ・65歳定年70歳雇用延長および新処遇制度運用開始 | |
障がい者雇用推進 | 法定雇用率2.3%達成 | ・障がい者雇用率2.36%(2023年3月末) (当社および特例子会社である㈱ハピスマの合算) | |
経験者採用 | 新規採用者数に占める割合30.0%以上 | ・新規採用者数に占める割合:36.5% | |
人財育成 | 教育費用・教育時間 | ― | ・従業員一人当たり教育費:40,430円 ・従業員一人当たり教育時間:14.0時間 |
環境整備 | エンゲージメント指数 | 働きやすさ満足度90% 働きがい満足度80% ※2 | ・働きやすさ満足度:90%(国内グループ計) ・働きがい満足度:72%(国内グループ計) |
健康経営 | 「健康経営優良法人(ホワイト500)」認定 | ・「健康経営優良法人2023(ホワイト500)」認定 |
※1 算出基準について特に記載がないものは当社実績
※2 「働きやすさ満足度」および「働きがい満足度」とは、国内グループを対象とした「エンゲージメント調査」において、働きやすさ・働きがいに関する設問で肯定的な回答をした従業員の割合
多様性に関する指標は、「第1 企業の概況 従業員の状況」にも記載しています。その他、人的資本に関する目標は「(3)④指標と目標」にも記載しています。
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