アサヒグループホールディングス 【東証プライム:2502】「食品業」 へ投稿
企業概要
文中には、中期経営方針等に関する様々な業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報が開示されています。これらの業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報は、将来の事象についての現時点における仮定及び予想、並びにアサヒグループが現在入手可能な情報や一定の前提に基づいているため、今後様々な要因により変化を余儀なくされるものであり、これらの予想や目標の達成及び将来の業績を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
アサヒグループは、純粋持株会社であるアサヒグループホールディングス株式会社のもと、日本、欧州、オセアニア、東南アジアを核として主に酒類、飲料、食品事業を展開しています。
グループ理念「Asahi Group Philosophy(AGP)」に基づき、未来のステークホルダーからも信頼されるグループを目指しています。AGPは、Mission、Vision、Values、Principlesで構成され、グループの使命やありたい姿に加え、受け継がれてきた大切にする価値観とステークホルダーに対する行動指針・約束を掲げています。
(2)中長期経営方針
AGPの実践に向けて、『中長期経営方針』では、長期戦略のコンセプトとして「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを掲げています。
目指す事業ポートフォリオを示すとともに、サステナビリティと経営の統合、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略の一層の強化により、持続的な成長と全てのステークホルダーとの共創による企業価値向上を目指しています。
1.『中長期経営方針』:長期戦略の概要
2.目指す事業ポートフォリオ
長期戦略における事業ポートフォリオでは、人々のWell-beingの変化に応えていくなかでの「リスクと機会」を捉え、ビールを中心とした既存事業の持続的成長に加えて、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスの拡大を目指しています。
既存事業については、主力ブランドを中心としたプレミアム戦略の推進などにより、各地域において販売単価の向上を実現したほか、『Asahi Super Dry』と『Peroni Nastro Azzurro』を中心とした世界的なパートナーシップの強化などにより、グローバル5ブランド全体で販売数量は前年比4%増加しました。
新規領域については、各地域でのノンアルコールや低アルコールカテゴリーの取り組みを推進するなど、BAC※への投資強化による新市場拡大を図りました。また、新たな成長ドライバーの探索を目指して設立した米国の投資運用会社が本格的に稼働をスタートしたほか、酵母・乳酸菌技術を活用した新たな領域拡大やデジタル技術を活かした新サービスの開発に取り組みました。
今後もビールを中心に培ってきたケイパビリティや事業基盤を活かし、BACや新商材・新サービスの領域で成長機会を拡大することで、最適な事業ポートフォリオを構築していきます。
※ BAC:Beer Adjacent Categoriesの略。低アルコール飲料、ノンアルコールビール、成人向け清涼飲料など、ビール隣接カテゴリーを指します。
3.コア戦略 ―サステナビリティ戦略―
アサヒグループは、事業成長と社会価値の創出の最大化を目指して、バリューチェーン全体で人々のサステナブルな生活を実現することを重点方針として定めています。また、経営課題として取り組む領域を特定したマテリアリティ・取り組みテーマを設定し、適切で実効性のある取り組みにつなげています。
詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
4.コア戦略 ―DX戦略― アサヒグループのDXは単なるデジタライゼーションではなく、生き残りをかけた経営改革であると認識しており、DX=BXと捉え、「Business」「Process」「Organization」の領域において、三位一体でイノベーションを推進しています。 |
①Business Innovation
一人ひとりの“Well-being”の形を捉え、パーソナライゼーションモデルの実現を目指します。また、デジタル技術でサステナビリティに関する課題を解決し、人々のサステナブルな生活の実現に向けた取り組みを推進していきます。
②Process Innovation
全工場の生産性・品質情報を数値化・透明化し、生産性向上を目指します。また、グローバル調達で規模の経済を実現し、調達コストやリスクを最適化するとともに、サプライチェーン、サステナビリティチームとIT組織が協働し、最適なソリューションの導入に向け、取り組んでいます。
③Organization Innovation
デジタルネイティブ組織への変革を目指し、各機能・組織がIT/データ活用スキルを当たり前のスキルとして持つ「IT/データ活用の民主化」を目指します。また、アジャイルな働き方※1の導入を同時に進めていきます。
5.コア戦略 ―R&D戦略―
R&D戦略においては、中長期的な社会環境や競争環境の変化を見据え、メガトレンドからバックキャストで導いた未来シナリオとこれまでの研究で蓄積してきた技術・知見・ノウハウを踏まえ、以下の4つを重点領域として位置付け、新たな価値創造やリスク軽減に向けた商品・技術開発に取り組んでいます。また、海外を含む拠点間での技術シナジーの醸成、異分野とのオープンイノベーション活用による新たな価値創造にも積極的に取り組んでいます。
①アルコール関連
アルコールを取り巻く消費者ニーズの変化や将来予測に複数の角度から対応すべく、アルコール価値代替、新価値創造、BACにおける優位性構築に向けた商品・技術開発を中心に研究開発に取り組んでいます。
変化する消費者ニーズを捉えるべく、2023年は、欧州で発売したノンアルコールビール『Kozel 0,0%』では、従来の脱アルコール技術を用いながら、より環境負荷が低い製法を開発しました。スマートドリンキングをはじめとしたBAC領域の開拓を目的に、今後もさまざまな技術開発を進めていきます。 また、消費者ニーズのダイナミックな変化に対応すべく、Z世代のインサイト探索手法の構築及び迅速なZ世代向けコンセプト生成技術の開発も進めています。 ニーズを技術課題に落とし込み、製品提案に至るまでの一連のプロセスを迅速にすることで、研究成果の更なる導出を目指します。 |
②ヘルス&ウェルネス
身体や心の健康に関する消費者の拡大するニーズに対し、さまざまなタイプのソリューションを提供することで人々の健康的な生活をサポートしています。 「L-92乳酸菌」は、長年にわたって積み重ねてきたデータやエビデンスにより、健康な人の免疫機能の維持に役立つことが確認されました。「L-92乳酸菌」と免疫の関わりをさらに明らかにすることで、人々の生涯にわたる健康の維持増進に貢献していきます。 |
また、長年、研究をしてきた乳酸菌「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」は、腸に作用し、脳腸相関※1を介して脳に働きかけ、精神ストレスを緩和することが確認されました。今回、フェムケア※2領域への展開を目指し、ヒト試験により効果の評価を行い、女性の月経周期に関連した精神的疲労や眠気の軽減効果を持つ機能性表示を届け出て、「月経周期」に関連した具体的な機能性を表示する製品として初めて受理されました。 独自性のある健康機能性素材とそれを活用したサービスに関する研究を強化し、国内外での新しい価値提案を目指します。 |
※1 脳腸相関:腸と脳が互いに情報伝達を行い、生体機能を保つ仕組み
※2 女性の体や健康をケアすること
③サステナビリティ
環境・エネルギー分野や副産物利用における世界トップ水準の技術の実装を目指すとともに、気候変動に伴う原料コスト影響の最小化や容器包装の環境負荷低減に取り組み、サステナビリティ戦略の実効性を高めています。 環境・エネルギー分野では、ビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電技術の実証を行っており、2023年は、アラブ首長国連邦・ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の「ジャパン・パビリオン」に出展し、技術普及にも取り組みました。 サステナビリティに関する研究開発を通じて、社会的責務を果たすとともに、持続的な企業活動を通じ、事業利益につながる成果獲得を目指します。 |
④新規事業
中長期的に目指す事業ポートフォリオの実現に向け、グループ内外の技術とビジネスモデルとの掛け合せ等により、新規事業につながる非凡なシーズの創出に取り組んでいます。
酵母や乳酸菌など、アサヒグループがこれまでに活用してきた微生物領域に新たな視点を加えることで、グループのメリットを活かした新規事業を開拓していきます。これらを実現するため、革新的な外部技術の取り込みや従来とは異なる領域との融合を積極的に推進していきます。
6.人的資本の高度化
戦略基盤強化に向けて、「ありたい企業風土の醸成」、「継続的な経営者人材の育成」及び「必要となるケイパビリティ※の獲得」の3つの取り組みを連携させながら、競争優位の源泉となる「人的資本の高度化」の実現を目指しています。
※ 戦略を実現するために必要な組織的能力
詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご参照ください。
(3)中期的なガイドライン
『中長期経営方針』の中期的なガイドラインについては、以下のとおりです。
■主要指標のガイドライン
| 3年程度を想定したガイドライン |
事業利益 | ・CAGR(年平均成長率):一桁台後半※1 |
EPS(調整後※2) | ・CAGR(年平均成長率):一桁台後半 |
FCF※3 | ・年平均2,000億円以上 |
※1 為替一定ベース
※2 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や減損損失など一時的な特殊要因を除いたものです。
※3 FCF=営業CF-投資CF (M&A等の事業再構築を除く)
■財務方針のガイドライン
| 2022年以降のガイドライン |
成長投資・債務削減 | ・FCFは債務削減へ優先的に充当し、成長投資への余力を高める ・Net Debt/EBITDA※1は2024年に3倍程度を目指す (劣後債の50%はNet Debtから除いて算出) |
株主還元 | ・配当性向※235%程度を目途とした安定的な増配 (配当性向は2025年までに40%を目指す) |
※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA
※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
(4)対処すべき課題
中長期的な外部環境としては、テクノロジーの発展が人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定されます。
そうしたメガトレンドを踏まえて更新した『中長期経営方針』に基づき、各地域統括会社は、既存事業の持続的成長に加えて、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスを拡大していきます。さらに、サステナビリティと経営の統合などコア戦略の一層の強化により、グループ全体で企業価値の向上に努めていきます。
<地域統括会社の中期重点戦略>
[日本]
① 変化を先読みする商品ポートフォリオ最適化とシナジー創出による日本事業のポテンシャル拡大
② ニーズの多様化に対応したスマートドリンキングなどの推進、高付加価値型サービスの創造
③ カーボンニュートラルなど社会課題の事業による解決、日本全体でのサプライチェーン最適化
[欧州]
① グローバル5ブランドの拡大と強いローカルブランドを軸としたプレミアム戦略の強化
② ノンアルコールビールやクラフトビール、RTDなど高付加価値商品を軸とした成長の加速
③ 再生エネルギーの積極活用や循環可能な容器包装の展開など環境負荷低減施策の推進
[オセアニア]
① 酒類と飲料を融合したマルチビバレッジ戦略の推進、統合シナジーの創出
② BACなど成長領域でのイノベーションの推進、健康・Well-beingカテゴリーの強化
③ 新容器・包装形態などサステナビリティを重視した新価値提案、SCM改革の推進
[東南アジア]
① マレーシアの持続成長と自社ブランドの強化など、域内6億人超の成長市場での基盤拡大
② 植物由来商品など新セグメントの拡大による最適なプレミアムポートフォリオの構築
③ 環境配慮型容器の展開などによる持続可能性の確保や原材料調達での地域社会との共創
- 検索
- 業種別業績ランキング