企業兼大株主アイスタイル東証プライム:3660】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

1. サステナビリティ全般

(1) 戦略

① アイスタイルが目指すサステナビリティ

 アイスタイルは、「生活者中心の市場の創造」をビジョンとして掲げ、生活者視点で未来のあるべき姿を捉え、あらゆるステークホルダーと好循環を生み出すことで生活者を軸とした市場の創造を目指しています。そのため、創業時より“生活者と化粧品メーカー・ブランドを適切につなげること”に尽力してまいりました。

 アイスタイルが起業した1999年は、マスメディアでの一方的な情報発信がまだ多かった時代でした。デジタルを活用した正しいコミュニケーションの在り方を目指して、生活者のニーズとメーカーのすれ違いを解消することをテーマに、生活者の声であるクチコミを集めて市場に反映する仕組みとして、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」を立ち上げました。

 生活者は、情報が増えすぎて何が正しく何を信用すべきか分からない。

 ブランドは、情報接点が複雑化したため生活者に情報が伝えられない。

 これらを解決するため、情報が氾濫するデジタル社会において不変的な価値として、中立的なプラットフォームを中長期で維持していくことがアイスタイルの目指すサステナビリティです。

 そして、そのサステナビリティの中核を成すのが、中立な場である“プラットフォーム”、健全なコミュニケーションを促すステークホルダーとの“パートナーシップ”、これらを推し進める心臓部である“人材”、土台となる“ガバナンス”の4つです。これらがアイスタイルの根幹を支える価値であるため、マテリアリティとして注力しています。

② マテリアリティ

a. 信頼されるプラットフォーム

「@cosme」は、情報であるクチコミを扱うサイトであるため、生活者やメーカーから信頼を得ることが必要であると認識しています。生活者の声を正しく・効率的に市場へ届けるためには、健全で中立なコミュニティの運営、情報セキュリティ、それらを支えるITなどが不可欠です。これからも安心してご利用いただけるプラットフォームの構築を目指します。

b. パートナーシップによる共創

 ビューティー領域において、生活者やブランドをはじめとした多くのステークホルダーと共に、事業を通じてサステナビリティへの意識醸成や循環型社会に向けた取り組み等を共創することによって、サステナブルな社会に向けて貢献します。

c. 人材のエンパワーメント

 企業の心臓部である人材の重要性は、少子高齢化が進む日本社会において今まで以上に増しています。人が成長するためには、成長したいと思える意欲・働き方の選択肢が充実したワークライフバランスの整った環境が必要です。その上でアイスタイルでしか築けないキャリア(複数事業によるシナジー)で成長を加速させ、最終的には業界を牽引するような新しい価値を創出するリーダーの育成を目指しています。結果として、これらの取り組みが企業価値の向上に繋がるものと考え、人の成長にコミットしてまいります。

d. ガバナンスの充実

 経営の健全性、透明性及び客観性の向上を目的とするコーポレート・ガバナンスの強化は、当社グループが環境変化の著しいIT業界に属する点からも、重要な経営課題であると認識しております。また、企業だけでなくメディアやプラットフォームとしての健全性にも注力しています。

 アイスタイルはこれからも生活者の声を取り入れるだけでなく、メディア・EC・店舗などを通じて様々な出会い方をアップデートすることで、化粧品業界の発展や持続可能な社会に貢献してまいります。

マテリアリティ

具体的な取り組み

a. 信頼されるプラットフォーム

・健全で透明性の高いサイト運営 (クチコミ全件チェック等)

・広告出稿に左右されない公正中立なランキングロジック

・正しく情報を伝えるための広告掲載ガイドラインの遵守

・安心してご利用いただける情報セキュリティ強化

b. パートナーシップによる共創

・エシカル情報の専門メディア「@cosme BEAUTY HOOD」によるユーザーへの意識啓蒙

・サステナブルアクションの提示 (認知から行動へのハードルを下げる)

・プラットフォームを横断したブランドとの施策 (イベント・リサイクルボックス等)

c. 人材のエンパワーメント

・成長したい人とチャレンジを促す文化の醸成

・ワークライフバランスの整った職場環境の構築

・複数事業を横断した成長機会の創出

・DXを取り込んだ新しい価値創造リーダーの育成

d. ガバナンスの充実

・コーポレートガバナンス(役員の独立性やダイバーシティ促進等)

・コンプライアンス (従業員教育や啓蒙によるリテラシー向上・通報窓口の設置等)

・メディアの健全性に関する協議・審査機関である「メディア倫理委員会」の運営

(2) ガバナンス・リスク管理

 アイスタイルはサステナビリティの推進を経営課題の1つとして捉え、代表取締役社長直下に全社横断の組織であるSUSTAINABILITY推進委員会を設置し、取締役副会長兼CFOを責任者として任命しています。同委員会にて全社的なサステナビリティに関する活動の推進・管理を行っております。

SUSTAINABILITY推進委員会および各事業部の責任者で開催される月次定例会にて、サステナビリティに関する機会とリスクを把握し、適宜評価・管理を行ったうえで経営課題となり得るものをグループ経営会議を経て取締役会に報告しております。

(3) 指標及び目標

「人的資本、多様性に関する事項」については2.(1) 戦略・指標及び目標、「気候変動対応」については3.(4)の指標及び目標を参照。なお、他マテリアリティに関する指標等は精査中です。

2. 人的資本、多様性に関する事項

(1) 戦略・指標及び目標

 これからも事業を成長させ企業価値を高めるためには、人の成長を促し、成長意欲の高い人から選ばれる企業であることが不可欠と考えております。そのため、社員自らのチャレンジを促し、個人の活躍や働き方の多様性・柔軟性を高め、アイスタイルでしか築けないキャリアを持って、当社だけでなく業界を牽引するリーダーの育成に注力してまいります。人を成長させる上で重要なテーマを以下の4つに分けて、課題や対策、それらの進捗を表す指標として整理しました。

① 成長を感じチャレンジしたいカルチャーの醸成

 人が成長するためには、従業員本人のチャレンジする意欲と、それを促す環境が必要であると考えています。本取り組みにおける実態を把握するべく、従業員に対して“そう思う”から“思わない”までの5段階評価に分けた意識調査を実施しました。

(a)「これまでよりも広い、もしくは新たな領域に挑戦したり、そのためのスキルを学びたいか」という質問について、“そう思う”“やや思う”と肯定的な回答をした従業員の割合は88%、(b)「会社にチャレンジを推奨する環境・風土が整っているか」については71%、(c)「今よりも責任が大きい業務や管理職へチャンレンジしたいか」という職位にも言及した具体的な質問に関しては68%%と全体的にはチャレンジ意欲や促す環境についての回答は肯定的となっています。

 しかしながら、回答項目における最上位項目である“そう思う”のみに着目すると、(a)「これまでよりも広い、もしくは新たな領域に挑戦したり、そのためのスキルを学びたいか」という質問について、“そう思う”と回答した従業員の割合が6割であった事に対して、(b)「会社にチャレンジを推奨する環境・風土が整っているか」については29%、(c)「今よりも責任が大きい業務や管理職へチャンレンジしたいか」に関しては39%となっています。差異が発生した要因として、当社における連結全体での女性管理職比率は63%(単体だと52%)と他企業に比べて高い水準であるものの、男女に分けて回答結果を精査したところ、特に上位職に関する(c)に対する女性のキャリア志向が男性に比べて低い事が判明しました。これは男女間賃金差異が72%となっている事の要因ともなっており、一般社員・マネージャー(課長相当)・部長・本部長等のステージ毎に分けて賃金差異を見ると、各層では90-95%となっているものの、部長以上の上位管理職では男性比率が高くなる傾向があり、その結果が差異として表れております。

 男女間で意識の差があることについて、当社は課題として捉えており、女性従業員が持つポテンシャルを活かしきれていない可能性があると感じています。これら(a)と(b)・(c)の間や、性差でのギャップを解消するべく、成長機会を提供する制度であるハンズアップ(キャリアアップを目指した社内公募ポジションへの立候補)や、社員の活躍を後押しできるマネジメントの育成、チャレンジを賞賛・啓蒙する社内表彰制度である7iAward等を進めてまいります。

② 誰しもが活躍できるライフステージに合わせた働き方支援

 ますます多様化する社会において、性別・年齢・人種等の属性に関わらず、誰しもが個性を発揮して活躍できる場を提供することが必要不可欠であると考えています。前述の意識調査において、「周囲が有給休暇や育休等の取得やライフイベント(結婚・育児・介護等)に理解があるか」という質問に対しては、“そう思う”が62%、“やや思う”が26%と肯定的な回答が9割近くとなりました。これは弊社が美容・コスメを題材にした事業を展開していることから、もともと女性従業員比率が高く、働き方の選択肢を幅広く提供してきた結果だと考えております。一方で、前述の女性の上位職志向が男性に比べて低い事について、本テーマにおけるマネジメント層の働き方改革や、より明確なロールモデルの提示等で併せて改善してまいります。

③ 異なる分野・業種における共創

 アイスタイルが市場において独自のポジションを築くことが出来た理由として、メディア・EC・店舗等のオンライン・オフラインを一気通貫した複数事業を運営し、かつ、それらが有機的に連携することで生み出されたシナジーにより、唯一無二のプラットフォームを形成できたからだと考えています。リアルとネット、ユーザー視点とブランド視点などの多面的観点を他部門間との横連携や複数領域の経験により養うことが出来るのは、アイスタイルの強みであり提供できるキャリアです。しかしながら、意識調査における「アイスタイルは複数部門の横の連携がされていることが強み」という質問に対して、“そう思う”が14%、“やや思う”までを含んでも42%と当社経営陣が想定していた水準より低い結果となりました。このギャップはむしろ事業成長の伸び代だと捉え、今後は社内での経験だけでなく、社外人材との交流を積極的に行うことによって、可能な限り高めていくことを目指してまいります。

④ 新しい価値観で未来を牽引するリーダーの育成

 アイスタイルの原点はITであり、古い観念にとらわれないDXネイティブな企業であるため、従業員の自主性と新しいアイデアを尊重してきました。化粧品業界が培ってきた価値ある資産と、当社で生まれた革新性を融合させることで、新しい可能性を切り拓き、業界の未来を牽引するリーダーの育成を目指しています。これを加速するために、マネジメントモデル改革の一環において、単なる管理者ではなく人の成長にコミットするポジションとして、いわゆるコーチ型の人事制度、評価制度にトライしています。そして、「気づきのマネジメント」をテーマにミドルマネジメント層の育成プログラムを展開し、全体的な強化を図ってまいります。

<人的資本経営における各項目の概要一覧>

パーパス

テーマ

課 題 (注力事項)

対 応 策

指 標

1

成長意欲の高い人に選ばれ続ける会社になる

成長を感じチャレンジしたいカルチャーの醸成

・より明確なロールモデルの提示

 

・マネジメント層の働き方改革
 (目指したい、目指せる、ライフワークバランス)

・ハンズアップでのチャレンジ促進


・チャレンジを称賛する場の醸成

・ハンズアップ
(何歳でも成長できる仕組み)
 
・7iAward (社内表彰制度)
 
・社外人材との交流
 
・共同ワークショップ

・会社に成長機会があると思う人の割合
 

・自身の成長に意欲的な人の割合
 

・上位、責任ポジションへの意欲的な人の割合

2

誰しもが活躍できるライフステージに合わせた働き方支援

・働き方の多様化
 

・健康経営

・女性管理職比率
・男性育休取得率
・男女間賃金差異
 

・休暇取得などライフワークバランスに対して周りの理解があると思う人の割合

3

異なる分野・業種における共創

・VUCA時代の自律型人材育成を目指した、多様な経験を積む機会創出


・異業種・異文化を受け入れて共創する機会

・複数の領域経験

  (ユーザー・ブランド視点 / リアル×ネット)


・他の人から経験を学ぶ仕組み
 

・他部門・他社との共創の経験
  (横連携PJT、コミュニティ参加)

横連携を強みと思う人の割合

4

新しい価値観で未来を牽引する リーダーの育成

・正解のない時代の自律型ビジネスプロデューザーの育成


・アジャイルにチャレンジしやすい環境提供
 

・失敗を恐れずにチャレンジし、学びから次の機会に活かせる自律人材の育成

・マネジメントモデルの改革
 (管理者からコーチへ)


・「気づき」を生む育成プログラムの導入
 

・若手のPJTリーダー抜擢

・育成プログラムへの参加人の割合


・自律人材を発掘・育成するコーチ型マネジメントの数

 

※25期(2024年6月期)より本格的に取り組みを開始し、対象者の8割が参加

(2) ガバナンス・リスク管理

 経営陣・執行役員・人事責任者・SUSTAINABILITY推進委員会のメンバーで構成される「人材委員会」を隔週で開催し、人材に関する全社方針や戦略を決定するなど中長期視点での人的資本の強化を図っております。

 また、定常的な活動の推進・管理は、サステナビリティ全般のガバナンス・リスク管理に記載の通り、人事関連部署とSUSTAINABILITY推進委員会で月次定例会にて行っております。

3. 気候変動対応

 当社グループでは、気候変動における課題をリスク・機会の観点と事業特性の両面から鑑み、他ESG項目と比べて重要性が低いことから、マテリアリティとして特定しておりません。しかしながら、地球の未来や我々の生活様式に影響を及ぼす大きな社会課題であると認識しているため、カーボンニュートラルな社会を目指して全社横断で積極的な対応を進めております。

(1) ガバナンス

 取締役副会長兼CFOを推進責任者に据えるSUSTAINABILITY推進委員会にて、気候変動対策の推進及び管理を行っております。同委員会を中心に関連事業部と連携・協議して方針を決定し、適宜必要に応じて取締役会に関連議題を上程しております。

(2) 戦略

TCFDのフレームワークに沿って、詳細な戦略策定・組織体制の整備・Scope3算出などの検討を行っている最中であるため、今後精査できた段階で速やかに開示を行ってまいります。なお、現段階で特定しているリスク・機会は以下の通りです。

TCFD提言に基づく分類

想定し得るリスク・機会 (太字は重要項目)

リスク

移行リスク

政策(規制)

炭素税導入による財務負担増

法律

- (事業特性上、同項目に関する特段のリスクはない)

技術

消費電力・エネルギーの増加

市場

原材料コストの上昇による仕入条件の変更リスク

評判

環境対応の遅れによる、感度の高いユーザー・クライアントなどの顧客離れ

物理的リスク

急性

自然災害(台風・洪水)の頻発による

・店舗営業および店頭イベントの停止

・ECにおける配送遅延リスク

慢性

平均気温上昇による外出機会=化粧をする機会の減少

機会

資源効率性

環境配慮に対する生活者の意識向上に伴う、梱包資材等の削減や効率化

エネルギー源

- (事業特性上、同項目に関する特段の機会はない)

製品/サービス

顧客の嗜好変化(エシカル消費)に合わせたサービスによる売上高の増加

市場

外出機会の減少によるEC需要の増加

レジリエンス

複数事業の運営によるリスク分散と、機動的な需要獲得

(3) リスク管理

 現在・将来に渡って事業継続に影響を及ぼし得る要素について、その影響度合いと発生可能性をSUSTAINABILITY推進委員会が分析した上で取締役会へ上程し、リスク・機会として特定しております。今後はシナリオ分析のもと、時間軸を整理した上で利益影響額を精査してまいります。

(4) 指標及び目標

 気候変動対応への取り組みの一環として、CO2排出量の測定と中長期での軽減を行っております。現段階においては、Scope1,2の算出に留まっておりますが、将来的にはシナリオ分析やサプライチェーンにおける排出量(Scope3)の測定等を行ったうえで、目標数値も開示してまいります。

 なお、23期のScope2が前期比で減少している理由について、本社オフィスの面積減少に伴うものでありますが、24期(来年度の有報にて開示予定)からは、CO2排出の大部分を占める本社オフィスにおける電気消費が再生可能エネルギーに切り替わることから、大幅に改善される見込みです。

 

22期 (2021年6月期)

23期(2022年6月期)

Scope1 (マーケット基準)

0t-CO2

0t-CO2

Scope2 (マーケット基準)

259t-CO2

237t-CO2

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