アイシン 【東証プライム:7259】「輸送用機器」 へ投稿
企業概要
当社グループは、「”移動”に感動を、未来に笑顔を。」の経営理念に基づき、私たちの商品・サービスによって、環境・社会課題に具体解を示し、人々の笑顔あふれる持続的な社会をつくっていきたいと考えています。このような価値観は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、事業活動を通じてSDGsの達成に貢献できると考えています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) ガバナンス
ステークホルダーの期待・要望と当社グループの経営課題や重要性から、経営会議・取締役会での議論を経て、グループとして注力する優先課題(マテリアリティ)を選定し、取り組んでいます。
SDGsをはじめとするESG戦略に関する活動の方向性を毎年サステナビリティ会議で議論・決定し、取締役会・執行会議等で監督・進捗確認をしています。
(2) 戦略、(3) リスク管理、及び、(4) 指標及び目標
取締役会から承認を得た優先課題(マテリアリティ)に対し、収益機会拡大とリスク減少に向け、「事業活動を通じた社会課題の解決」と「活動を支える経営基盤」の2軸でKPIと2030年度目標を設定し、具体的な活動計画へ落とし込むとともに取り組みを推進、改善しています。
中でも気候変動と人的資本は、中長期的な企業価値向上に影響を与える重要なサステナビリティ課題と認識し、2023年3月のサステナビリティ会議にて議論し、更なる活動に向けて取り組んでいます。詳細の取組みは各項目をご参照ください。
※KPI・2030年度目標は、「AISIN GROUP REPORT 2022」34~35頁にて公開
(https://www.aisin.com/jp/sustainability/report/)
①気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
当社グループは、2019年11月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)へ賛同し、TCFDの提言に基づきシナリオ分析を実施しています。気候変動がもたらす事業活動へのリスクと機会を明確にしてその対応を経営戦略に盛り込むとともに、関連情報を開示しています。
(ⅰ)ガバナンス
気候変動への対応を重要な経営戦略と位置付け、経営会議・取締役会での議論を経て、「地球温暖化防止への取り組み」を注力する優先課題(マテリアリティ)に選定しています。
取締役会(2022年度13回開催)において、各気候関連会議である「サステナビリティ会議」、「環境委員会」、「カーボンニュートラル推進会議」を通じて提案・報告される気候関連の重要事項の審議を行い、必要に応じて事業戦略・計画を修正しています。
(ⅱ)戦略
カーボンニュートラルを喫緊のグローバル課題として捉え、「生産」と「製品」の両軸で2050年カーボンニュートラル社会の実現を目指しています。生産面では、当社グループ全体の戦略の立案、再生エネルギーの導入や調達、社外との連携を通じた技術開発や事業化を担う「カーボンニュートラル推進センター」と、製品面では、EV商品開発ロードマップ・開発戦略の策定、EV向け商品の先行開発の強化、カンパニー・グループ会社横断プロジェクトの推進を担う「EV推進センター」を社長直轄で設立し、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強力に推進しています。
また、TCFD提言が推奨する定義を踏まえた気候変動に伴う移行・物理的リスク、機会を分析し、定期的に対応を決定しています。
<気候変動のリスクと機会、当社グループの対応>
区分 | リスク/機会 の種類 | 影響段階 | 当社グループへの影響 | 時間的視点 短・中・長 | 事業/財務影響 大・中・小 | 対応 |
移行 リスク | 市場 | 上流 | 低炭素原材料の需要が高まり、多くの企業が求めるため、必要な原材料の価格高騰による調達コストの増加 | 中 | 中 | ・製品設計時点での軽量化や材料置換による使用原材料の削減 ・サーキュラーエコノミーの推進による購入原材料の削減 |
新たな規制 | 直接操業 | 炭素税や再生可能エネルギー導入等の政策によるコストの増加 | 中 | 大 | ・エネルギー使用ミニマム化に向けた省エネ活動の推進 ・地域ごとの特徴を生かした再生可能エネルギー導入の一括管理 | |
製品需要 | 電動化の推進で、電動車向け製品需要が拡大する一方、ガソリン車向け製品需要の減少 | 中 | 大 | ・2030年までにパワートレインユニット販売台数の電動化率60%以上を目標に設定し、製品構成を電動車向けへシフト ・高効率&小型化の電動ユニット、回生協調ブレーキ、熱マネジメントや空力など、幅広い製品によるモビリティの電動化とエネルギーソリューションでカーボンニュートラルへ貢献する製品の拡販を強化 | ||
物理的 リスク | 緊急性 | 直接操業 | 気象災害(大雨、台風、洪水等)の発生頻度の増加や規模の拡大による被災時のサプライチェーン寸断の発生や一時的操業の停止 | 短 | 中 | ・異常気象発生時における行動基準及びルールの策定 ・調達物流のBCP高度化 ・リスクのある拠点を抽出して定期的にモニタリング ・浸水対策計画の策定・実施 |
事業機会 | 製品需要 | 製品・ サービス | 電動化の推進により、アイシン製電動ユニット関連製品の需要拡大 | 中 | 大 | ・高効率&小型化により電費向上した製品のスピーディな市場投入 ・車種別ユニット共通化、材料費低減によるコスト低減 ・回生協調ブレーキのシステム進化による電動車の航続距離向上 ・関連製品の生産能力拡大 |
カーボンニュートラルを目指すため、排出したCO₂を吸収する製品のニーズ増加 | 中 | 中 | ・当社グループが保有する技術を活用したカーボンリサイクル・コンクリートの新規ビジネス拡大 ・CO₂の回収、利活用技術の開発と社会実装 | |||
省エネルギーかつ低炭素排出の製品需要の拡大 | 中 | 中 | ・高効率で安定したエネルギー供給や、停電時の自立発電機能によるレジリエンス向上に貢献する家庭用燃料電池コジェネ「エネファーム(SOFC)」のさらなる高効率化と拡販 ・自治体と協業で脱炭素事業を推進し、街づくりへ貢献 |
(注) <時間的視点> 短:~2025年度、中:2030年度、長:~2050年度
<事業/財務影響> 小:小さい影響が想定される、中:中程度の影響が想定される、大:大きな影響が想定される
(ⅲ)リスク管理
気候変動に起因する移行・物理的リスクを特定し、リスク評価と管理の枠組みを構築しています。当社グループに影響を与える重大なリスクに対しては、サステナビリティ会議等で定期的にモニタリング・管理しています。また、各国の法規制、ステークホルダーとの対話、CDPなどの外部評価、顧客動向を受け、必要に応じて特定したリスクを見直しています。
(ⅳ)指標と目標
<2030年度目標>
・生産CO₂排出量(スコープ1,2): 2013年度比50%以上削減
・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3): 2019年度比25%以上削減
<2035年度目標>
・生産CO₂排出量(スコープ1,2): カーボンニュートラル
<2050年度目標>
・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3): カーボンニュートラル
<指標>(2021年度実績※)
・生産CO₂排出量(スコープ1,2):256.5万t-CO₂(2013年度比10%削減)
・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3):1,752.8万t-CO₂(2019年度比2%削減)
※2022年度実績は、第三者検証後に当社サステナビリティサイト
(https://www.aisin.com/jp/sustainability/)にて公開予定
②人的資本
アイシングループでは、働く仲間一人ひとりが主役であり、働く仲間こそが強みであるとの考えから、意思を持って経営理念の提供価値の最初に「働く仲間」を位置づけています。
以下の目指す人材マネジメントの実践を通じて、新たな価値を創出し、働く仲間へ働きがいと人生の幸せを提供します。
当社グループの人材マネジメント
(ⅰ)チャレンジする人・職場づくり
人材マネジメントの実践の全ての土台として、「チャレンジする人・職場づくり」をキーワードとして風土そのものの変革に取り組んでいます。
<階層間・組織間での本音の対話、全員当事者のアクション推進>
社員一人ひとりから経営に至るまで、全員が当事者意識を持って変革に取り組むべく、労使トップが職場風土について本音で話す「労使協議会」や、経営トップと社員が直接対話する「タウンホールMTG」を実施しています。全150部署が「部・工場労使懇」を毎月行い、チャレンジに向けた職場課題の解決を推進しています。また、職場風土づくりの基盤として「ATBA活動(Aisin Team Building Activity)」を全社で実施しており、約1,500グループがカエル会議(チーム全員の定例会)と1on1を通じた、心理的安全性の構築と関係の質向上を推進しています。
<チャレンジの適正評価、メリハリある処遇ができる人事制度>
役員においては、業績連動のみならず、毎期の業績査定を大きく反映し、一人ひとりの成果に応じた報酬適用を徹底しています。当事業年度からは360度評価を導入し更なる変革行動につなげていきます。
社員に対しては、一人ひとりが主体的に新しい価値を生み出せるよう、個人の夢・志と、組織の課題・挑戦をすり合わせて業務テーマへ落とし込むことを徹底しています。2022年度は全管理職への評価制度説明会を複数回行うとともに、評価面談実施状況を労使双方で確認し、好事例の展開や課題のある職場への支援を実施しています。
また、チャレンジを阻害する人事制度課題を解決し、更にチャレンジを促進するため、管理職層は2023年度下期、組合員層は2024年度上期からの制度改定を予定しています。制度コンセプトとして、①加点主義(高い目標へのチャレンジ、失敗からの学びを評価)、②時価主義(今の職責・成果に報いる)、③流動性・外向きの加速(視野の拡大)を掲げ、改定議論を進めています。
(ⅱ)グループ・グローバル連結で変化に機敏に対応できる人・組織の構築
<電動化へのリソーセスシフト・リスキル>
2022年度から、アイシングループの強みを生かした車両全体でのEV向け商材拡充をねらいにEV推進センターを設置、カンパニー・グループ横断で先行開発を強化し、アイシンらしい魅力あるEV向け商品の開発を進めており、センター発足2022年4月から2022年度末時点までに、150人が異動しました。
電動化の重点技術であるモーター、熱マネジメント技術者育成に向けては、既存領域人材が数カ月間技術習得に専念し即戦力として配置転換するプログラムを展開しており、2022年度末までに250人が受講しました。技能人材育成においても、電動化製品の技術進化サイクルを踏まえて教育体系を刷新し、電動化製品生産に特化した教育を推進しています。2022年度末には延べ1,429人が受講しています。
<既存事業の基盤強化>
アイシンの収益構造強化に向けて、既存事業においても従来延長の仕事のやり方を変えることが必要です。経験ベースでの仕事の仕方を見直し、事実ベースで現状を正しく把握し、お客様目線であるべき姿を描き、課題解決に向けて自ら行動する「問題解決的な働き方」を改めて徹底することが重要です。問題解決的な働き方を労使重点課題として取り上げて職場での議論・アクションを推進するとともに、問題解決力の底上げに向けて、職場を巻き込んだ実践的研修や上司向け研修の導入などを推進しています。
<グループ・グローバルでのリーダー人材育成>
候補人材を経営幹部が直接発掘し、選抜人材に対して経営上影響度の大きい重要テーマや国内・海外ポストの任用を積極的に行っています。また、自身の価値観を磨き上げ、より高い人間力・視座を得るため、専門家とのコーチング、経営知識の習得、他流試合などを、一人ひとりの特性を考慮して個別に実施しています。
海外拠点リーダー人材育成に向けては、グローバル共通指標でポストの見える化、重要ポスト選定を行う「AG2(アイシングローバルグレーディング)」を導入し、サクセッションプランの策定、経営人材としての教育実施など計画的な育成を推進しています。これらの取り組みを通じ、2030年海外拠点幹部現地社員比率目標40%に対し2021年度末時点で35.4%に到達しています。
<成長市場の海外事業を支える人材の育成>
世界で戦えるものづくりの現場と人を構築するために、職場目標を達成するための課題要因を「人:標準作業」「製品:加工点マネジメント」「設備:自主保全」の3本の柱に層別して評価しレベルアップしていく3本柱活動をグローバルに推進しています。
ものづくり現場のリーダー育成に向けては、企業内訓練校「アイシン学園」をグローバルに運営し、実践的な技能教育とリーダーに必要な心身教育を実施しています。日本のアイシン学園では、海外からの研修生を受け入れており、現時点で累計11か国35拠点435人を育成しています。さらに、2023年度からは海外拠点の現地監督者を対象とした「管理監督者コース」を設置します。現地役割に特化した専門能力を育成し、海外拠点で現場をリードできる人材を育成しています。また、中国(蘇州)及びタイでもアイシン学園を設立し、中国で累計270人、タイで36人を育成しています。
(ⅲ)全員活躍・どこよりも人が育つ
正解のない時代において、既存延長では解決できない課題に取り組むためには、社内の前例や経験に捉われない、新しい発想が求められます。そのため、属性に拠らず、多様な個人、全員が「プロ人材」として活躍・成長できる機会を提供します。そして、日本の労働人口減、人材流動性の高まりの中、「どこよりも人が育つ」会社として選ばれ続ける会社を目指します。
<プロ人材の育成>
環境変化をチャンスに変えていくには、事実を正しく把握し、課題を描き、解決に向けて自ら行動する「問題解決力」を基盤に、変化を牽引する「変革力」、周りの共感を引き出す「人間力」が必要です。それらの能力向上に向けて、外を知り視点を変えるため「社内外出向を含むローテーション」、社外者と社会課題解決に取り組む「越境学習」(2022年度27人から2023年度250人へ拡大予定)、課題創造力・マネジメント力向上のため自己理解に基づく意識・行動変革を促す「内省研修」など、人材育成の仕組みを大幅に見直し、積極的な投資を行います。また、グループ全体の底上げのため、2021年度より国内生産会社15社を重点として教育体系の共通化や協業によるリソース連携を推進しています。
<自律的キャリア支援>
手上げ式教育の拡充に加え、2021年オープンエントリー制度(累計114人異動)、2022年副業制度(累計202人実施)などを通じて自律的なキャリア形成を支援しています。このような取り組みが評価され、2021年に第3回「プラチナキャリア・アワード」(主催:三菱総合研究所)で最優秀賞を受賞しました。
<ダイバーシティ&インクルージョン>
「キャリア支援」と「仕事と家庭の両立支援」に向けて、現場の生の声を吸い上げ施策検討する「きらりプロジェクト」、ダイバーシティ&インクルージョンを踏まえたマネジメントができる上司を育成する「イクボス塾」(累計779人受講)、「休職中のキャリア意識啓発」、「キャリアメンター制度」(現在メンター65人)、などに継続して取り組んでいます。こうした取り組みが評価され、「なでしこ銘柄」(主催:経済産業省、東京証券取引所)に3年連続選定されています。
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