はせがわ 【東証スタンダード:8230】「小売業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は、創業の精神である「信用本位」「感謝報恩」「よろこびのあきない」を基本理念と位置づけております。
この精神を原点に、宗教用具関連事業を通じて、「心の平和と生きる力」を実現することを当社の使命と捉え、そのために必要なサービスや商品のきめ細やかな提供と、様々な価値観の変化を先取りした柔軟な提案を追求してまいります。それとともに、これまで長年取り組んできた「供養」の領域をさらに掘り下げ、さらには領域を周辺に拡張して、お客様の抱えているお悩みやお困りごとを解消する商品・サービスを提供することで、お客様の「心豊かな生活(ピースフルライフ)」を支援する企業を目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社は、仏壇仏具・墓石・屋内墓苑の販売を中心とする事業強化により、主にROA、売上高伸張率、自己資本比率を主要な経営指標の目標とし、各指標の向上を目指しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社は、「仏壇仏具事業」「墓石事業」「屋内墓苑事業」を宗教用具関連事業の中核と位置づけ、各事業が連動して顧客創造を進めることで、相乗効果を図ってまいります。
「仏壇仏具事業」については、さまざまなお客様のニーズにお応えできる当社オリジナルの商品開発に取り組んでまいります。また、当社に来店された多くのお客様は、大切な誰かを亡くされて来店されます。そのお客様の気持ちに寄り添い、お客様の期待に応えられるような「最上のおもてなし」を提供できる人材の育成を継続して実施してまいります。
店舗政策については、より多くのお客様に心豊かな生活を送っていただけるように、顧客接点が見込まれる立地や店舗形態(ショッピングセンターや百貨店など)の検討を行ない、新規出店や移転、統廃合などを推し進めてまいります。
「墓石事業」と「屋内墓苑事業」を含めた遺骨収蔵に関する事業について、特に近年人気のある「樹木葬」は、異業種の参入もあり、競争環境が徐々に悪化していることから、当社においても開発に向けた企画提案と受託販売に関する活動を強化してまいります。また、「合葬墓・海洋葬」など多様なニーズに対応できるような販売体制づくりも並行して行なってまいります。
また、「飲食・食品・雑貨事業」では、上記の宗教用具関連事業とは別の供養にとらわれずに日常の「祈り・願い・感謝」を「食」を通して提案し、新たな顧客接点の増加を目指してまいります。
今後は、なお一層変化するお客様のニーズに対応した商品・サービスの提供とともに、「供養」の枠組みにとらわれず、日常の「祈り・願い・感謝」の提案を拡大し、「手を合わせる機会」を創造してまいります。
当社は、2023年3月期から新たな3ヵ年の中期経営計画が始まりました。中期経営計画では「売り切り型からの脱却」と「手を合わせる機会の創造」をテーマに、ご供養の領域でお客様に安心・安全な商品を提供することに加えて、ご供養以外の領域においても商品・サービスを開発・提供してまいります。具体的には、法事シーンを中心としたギフトの販売や、2023年4月より全店展開したピースフルライフサポート事業における紹介サービスの展開です。当事業年度は一定の成果が上がったものの、試行錯誤しながら進化に向けて様々な実験を行なっている段階であり、現時点においては事業の柱となるような規模には至っておりません。現中期経営計画の最終年度である2025年3月期はこれらの新しい取組みを新たな事業の柱に成長させられるよう、機能及び体制を強化してまいります。さらに当社が提供する商品・サービスの幅を拡げながら、当社とお客様の関係性を継続できるような仕組みを並行して検討・実験し、お客様との長期にわたる関係構築を目指してまいります。
2025年3月期は、新しい事業の芽となる活動に注力しつつ、それらの活動と今後の展開に目処をつけるとともに、当社の中長期的な成長に向けた絵姿、そしてそれを実現するための重要課題を特定し、次期中期経営計画の策定に取り組んでまいります。
(4) 会社の対処すべき課題
当社が事業を展開する宗教用具関連業界を取り巻く環境は、お客様の生活様式や価値観の多様化によって購入商品の小型化・簡素化の傾向が継続し、それに伴う単価下落の傾向などが継続しております。当社が対象とするお客様はご家族様を亡くされた方が中心となりますので、当社の市場は、商圏内における死亡者数の推移に連動するものと考えておりますが、お客様のなかには伝統的形式に縛られない「自分らしい」供養の在り方を求める方や、おひとり様なので、そもそもお仏壇を用意しないという方が一定数いらっしゃることが想定されます。また、既にご自宅でお祀りされているお仏壇が大きい、もしくは長くお使いの結果傷んでしまったという理由で、小型のお仏壇にお買替えされるお客様が一定数いらっしゃり、このようなお買替えの需要も市場の一部を形成しております。そのため、死亡者数が増加しても市場規模が単純に拡大しないものと認識しており、前述のような価値観を持ったお客様のインサイトの把握とこれまでにない商品・サービスの開発とご提案が課題となっております。
業界全体としては、新型コロナウイルス感染症が流行して以降、お客様の情報収集手段及び購買行動がリアルからデジタルに大きく変化しており、その動きに拍車がかかっております。また、当社のようなお仏壇・お仏具の専門小売店ではないホームセンターや家具メーカーなどの企業が、近年お仏壇の取扱いを増やしており、新たなプレイヤーとして台頭してきております。
このような環境変化のなか、当社は顧客接点の更なる拡大とお客様の営業店への誘致を目的に、デジタル領域の課題を設定し強化・推進するとともに、紙媒体を含めたお客様への情報発信ややり取り、お客様とのコミュニケーションを一貫性のあるものとして、効果・効率を高めていくための機能を統合し、カスタマーコミュニケーション部を2024年4月に新設いたしました。カスタマーコミュニケーション部では、WEBサイトの強化(SEO、デジタルマーケティング、SNS活用など)と、ECモールの強化(モールごとの販売促進策、商品説明を充実させるなどのページ改善)に加え、顧客との関係性を強化していくCRM(注1)や、WEB以外の媒体(チラシ・カタログ・CMなど)を手掛けるプロモーション機能を持ち、お客様の属性や購買プロセスに沿った最適な情報発信とコミュニケーションを図っていくことで、集客を高めてまいります。
事業別の課題としては、仏壇・仏具事業については、最も競争力の高いLIVE-ingコレクションの商品改廃によるラインナップの刷新・強化に加え、各価格帯において競争力の高いオリジナル商品の開発・投入によって、競合他社と差別化・対抗していくとともに、富裕層のお客様に提案できる高価格帯の商品品揃えも充実させ、お仏壇の単価維持・向上を図ってまいります。また、お客様への「最上のおもてなし」を実践するために、営業部門を中心に社員への販売教育を継続課題として実施してまいります。更に商品及び接遇という、当社の強みを活かして既存及び新規商圏での出店を計画的に行ない、シェアの獲得を目指してまいります。
当社の墓石事業及び屋内墓苑事業に重要な影響を及ぼすご遺骨供養に関する動向としては、お客様が要望する遺骨供養の手段の変化が大きな課題となっております。特に近年人気が高まっている樹木葬は、墓石の代わりに樹木を墓標としてご遺骨を地中に埋葬するスタイルですが、通常の墓石と比較して価格がリーズナブルであるため、新しくお墓を検討されるお客様からの要望が増加しております。当社はここ数年「樹木葬」の開発の企画提案を始めとして、商圏内で受託販売可能な樹木葬墓地の確保を重要な課題として取り組んでまいりました。しかしながら、当社とは全く業容が異なる企業も同様の樹木葬墓地の開発に向けた動きを強めており、営業部門を中心にスピード感を持って推進し、より条件の良い立地での樹木葬墓地の確保が必須の課題となっております。屋内墓苑事業については、先述した樹木葬墓地のニーズの高まりにより、一定の需要減の可能性はあるものの、利便性の高い施設は依然としてお客様から高い支持を受けております。ただし、屋内墓苑施設の供給量が、需要を上回っている状況は変わらず、宗教法人による厄除け祈願や、施設の見学バスツアーなど各施設の特色を生かしたイベントを開催するなど、差別化が課題となっております。
飲食業界においては、物価高騰による食材及び商品仕入価格の上昇、水道光熱費、物流費の増加などで、厳しい状況が継続していると認識しており、当社が運営している「田ノ実」についても、収益性の改善が求められることから、これらの影響を最小化することが引き続きの課題となります。当然、コスト削減と並行して売上高を増加するための施策を検討・実施していく必要があるため、飲食及び食物販においてMDの強化を引き続き行なってまいります。また、2022年10月より全店での販売を開始した田ノ実のギフトについては、当初法事シーンが中心ではあったものの、商品の拡充やシーンの拡大によってさらなる売上拡大を目指してまいります。
新たな事業の確立を目指し、活動をスタートしているピースフルライフサポート事業については、営業店を中心とした各事業所において、ご供養以外の周辺領域でのお困りごとをヒアリングし、2023年4月より全店にて相談対応やサービスを提供しております。具体的には、相続に関することや、遺品整理、不動産整理などの手続きです。現時点では、提携企業にお客様を取り次ぐ形でサービスを提供しておりますが、お客様のニーズをより広く、深く把握していくことで、当社として独自に提供できる商品・サービスを検討し、中期経営計画のテーマに掲げている「売り切り型からの脱却」につながるような商品・サービスのラインナップの充実化を図ってまいります。
全社的な課題としては、サステナビリティとDX(注2)に関する課題、さらに組織運営上の課題が対処すべき課題であると認識しております。サステナビリティについては、2023年3月24日に公表したサステナビリティ基本方針に基づき、4つの重要課題を特定し、新たに設置したサステナビリティ委員会にて具体的な取組み内容を決定し、担当部署を中心に課題を推進してまいりました。当社の事業の成長に資する取組みが現状十分に行なえていないため、引き続き経営陣を中心に課題の精査を行ない、中期経営計画の課題と連動させていくことが重要であると認識しております。DXに関しては、人材の確保が困難になるなか、生産性を高めるためにデジタルツールの活用による業務効率の向上が課題となると考えております。それによって生み出された人員は、イノベーションを生み出す企画創造のための人材として活用していく必要があると認識しております。また、当社顧客から獲得したデータを統合し、それらの分析から新たな洞察を獲得し、新規商品・サービスの開発や顧客接点の最適化などに活用していくことも重要な課題であると認識しております。組織運営上の課題としては、多様な価値観やライフステージに合わせた働き方やキャリア形成、人材育成が実現できる新しい人材マネジメント体系の構築や、新しいチャレンジが自律的・積極的に行なわれるような組織風土の醸成などが課題であると考え、そのような活動を支援してまいります。このような制度面の充実とともに、より良い企業風土を作っていくことで、優秀な人材の確保につながると考えております。
(注1)CRM…「Customer Relationship Management」の略で、顧客それぞれの購入や商談の履歴、趣味や嗜好、家族構成などの情報を一括して管理し、企業の営業戦略に活用する経営手法のこと
(注2)DX…「Digital Transformation」の略で、情報技術を有効かつ継続的に活用することで、企業の業務の在り方から組織・文化・風土までを変革し、それによって企業が新たな価値を創出し、社会や人々の生活を向上させるという考え方、またはそうした取り組みのこと
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