企業兼大株主鹿島建設東証プライム:1812】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

当社グループは、中期経営計画に基づき、施工の自動化やデジタル化など中核事業の一層の強化に資する技術とともに、社会課題解決型ビジネスやオープンイノベーションによる新たな価値創出への挑戦を目指して、CO2削減に寄与する環境配慮型技術などの開発を進めている。

当連結会計年度における研究開発費の総額は207億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。

(建設事業)

1  当社

(1) 中核事業の一層の強化
巨大地震による長周期地震動に対して超高層建物全体の揺れを大幅に低減する「KaCLASS※(*1)」を初導入

 当社は、巨大地震に伴い発生する長周期地震動による超高層建物全体の揺れを、従来の耐震・制震架構と比べ大幅に低減する制御層制震構造「KaCLASS」を開発し、阪急阪神不動産㈱が事業を進める超高層タワーレジデンスであるジオタワー大阪十三(大阪市淀川区)に初導入した。本技術は、建物高さの70%程度の位置に設けた制御層が地震エネルギーを大きく吸収し、建物全体の揺れを大幅に低減するものである。これにより従来の耐震・制震架構と比較して少ない柱梁で高い安全性を確保できることから、開放的な空間が実現可能となる。

*1Kajima Control Layer Advanced Structural System

墨出しを全自動かつ高精度に行う「ロボプリン」を開発

 当社は、建築工事に不可欠な墨出し作業を、全自動かつ高精度に行うロボットプリンタ「ロボプリン」を開発した。今般、当社機械技術センター(神奈川県小田原市)において実証実験を行い、墨出し作業の生産性を約2倍に向上できることを確認した。本技術は、読み込んだ施工図面データを基に、工事に必要な基準墨や仕上げ墨などをコンクリート床にプリントするものである。特別な装置やアプリが不要であることから導入が容易であり、スタート後は全自動で作業するため、誰でも手軽に高精度の墨出しが可能となる。

③ 現場製造式爆薬によるトンネル全断面発破を実現

 当社は、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)の開発を進めている。今般、施工ステップの一つである「装薬」の自動化に向けた一歩として、岩盤面の孔内に装填するまで火薬化しない「バルクエマルション爆薬」を採用した全断面発破を、国内の山岳トンネル工事で初めて実現した。切羽での高所装填作業のための設備を含む製造許可を取得後、2024年2月に、当社が各種実証試験を行っている神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)において同爆薬による初発破を行い、4月末までに計14回の発破を実施した。今後も、高い安全性を確保できる同爆薬を用いた技術開発を進めることで、装薬・発破作業の自動化及び効率化を目指していく。

④ 成瀬ダムで自動化施工システムによる「現場の工場化」を実現

 当社は、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)において、2020年度から適用している自動化施工システム「A4CSEL」(クワッドアクセル)の機能・性能の向上及び適用範囲の拡大を推進している。今般、CSG(*2)の自動搬送と自動ダンプトラックでの運搬・荷下ろし作業を実現したことで、既に適用している自動ブルドーザによるまき出し、自動振動ローラによる締固め作業と合わせて、CSGの製造から打設に至る全ての作業を完全自動化することに成功し、当社が同工事において目指してきた「現場の工場化」の一つの形が実現した。

*2Cemented Sand and Gravel

 現地発生材(石や砂れき)とセメント、水を混合してつくる材料

(2) 新たな価値創出への挑戦
世界初となる通信用光ファイバを用いた工事振動の検知に成功

 当社は、日本電気㈱及び東日本電信電話㈱と共同で、光ファイバセンシング技術を応用し、既に電柱に共架している通信用光ファイバを振動センサとして活用する実証実験を行い、トンネル掘削工事の振動検知に世界で初めて成功した。本技術により、新たにセンサを設置することなく、建設工事現場周辺における振動状況を広範囲かつリアルタイムに把握することが可能となる。

交通事故ゼロ社会の実現に向けて「スマートロード」の開発に着手

 当社は、トヨタ自動車㈱、㈱NIPPO、東京都市大学及びカリフォルニア大学バークレー校と共同で、将来の新たなモビリティサービスの提供や自動運転社会の到来を見据え、センシング機能を有する道路「スマートロード」の開発に着手した。今般、当社技術研究所(東京都調布市)敷地内に、光ファイバセンサを埋め込んだ試験舗装フィールドを構築し、道路上の歩行者や自転車などの移動体の位置を、同センサで検知したデータにより自動追跡できることを確認した。

月面での施工に必要な構成技術及び要素技術の妥当性を確認

 当社は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)及び芝浦工業大学と共同で、当社を代表者として2021年から国土交通省の公募事業「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」に参画し、研究開発を進めている。今般、当社の実験場「鹿島西湘実験フィールド」(神奈川県小田原市)とJAXA相模原キャンパス(相模原市中央区)を結び、自動遠隔建設機械による月面環境での作業を想定した実証実験を行った。その結果、月面での永久陰領域等での施工に必要となる構成技術及び要素技術の妥当性を確認することができた。

④ シンガポールにおいて海外研究開発拠点が入る自社ビル「The GEAR(*3)」が開業

 当社及び当社グループのアジア開発事業統括会社であるカジマ・デベロップメント・PTE・リミテッドが、シンガポールで開発を進めてきた自社ビル「The GEAR」が2023年8月に開業した。「The GEAR」は、当社グループのアジア本社、R&Dセンター及びオープンイノベーションハブの3つの機能を併せ持つ建物である。R&Dセンターとして当社技術研究所のシンガポールオフィス(KaTRIS(*4))が建設ロボット、スマートウェルネスオフィス及び環境・バイオ等に関する研究室「ラボ」を構えており、今後、大学やスタートアップ等と連携して、アジアの成長市場に求められる技術開発を進めていく。

*3Kajima Lab for Global Engineering, Architecture & Real Estate

*4Kajima Technical Research Institute Singapore

(3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進

① CO2排出量を70%削減した「CUCO※(*5,6)-SUICOMドーム」(クーコスイコムドーム)の試験施工を完了

 当社は、デンカ㈱及び㈱竹中工務店と共同で、コンソーシアム「CUCO」の幹事会社として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の一環として、コンクリートの製造過程で排出されるCO2の排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリートの開発を進めている。今般、当社技術研究所(東京都調布市)の隣接敷地において、当社保有の「KTドーム」技術を活用し、躯体部分に低炭素型コンクリート「ECMコンクリート※(*7)」とカーボンネガティブコンクリート「CUCO-SUICOMショット」を活用した「CUCO-SUICOMドーム」の試験施工を完了した。試験施工では、これら両コンクリート材料の吹き付け並びに「CUCO-SUICOMショット」の炭酸化養生を現場で行った。これにより、従来の吹付けコンクリートと比較して、CO2排出量の70%削減を達成した。

*5Carbon Utilized Concrete

*6当社、デンカ㈱及び㈱竹中工務店の登録商標

*7当社及び㈱竹中工務店の登録商標

牛のげっぷ中のメタンガスを抑制する海藻の量産培養手法を開発

 当社は、牛のげっぷに含まれるメタンガス(*8)排出量低減に寄与する海藻「カギケノリ」の量産培養手法を開発した。カギケノリの形状を自然に近い状態である直立形状から球状に変えることで、人の管理のもと陸上の水槽で安定的に量産できる技術を確立した。本技術で生産した海藻を牛などの反すう動物の餌に混ぜることで、胃の中で発生するメタンガスを抑制する効果が期待できる。

*8CO2に次いで地球温暖化の原因となっている気体

(国内関係会社)

1  鹿島道路㈱

舗装に関する新技術の開発

アスファルト舗装及びコンクリート舗装関連の各技術(材料、施工、建設機械、品質、環境、維持修繕及びDX化など)について研究開発を進めている。

新たな舗装材料として、雨天でも施工可能な全天候型アスファルト緊急補修材及び環境配慮型添加材を使用したAKD(*9)舗装用混合物の開発を行った。また、舗装建設機械の自動化及び安全性向上策として、ブルドーザなどに搭載する緊急停止装置の開発を行った。

なお、2024年3月に「技術開発総合センター」(埼玉県久喜市)を開設し、新たな研究開発体制を構築した。今後は、各技術部門の研究開発者を集約し、創造力の向上と開発のスピードアップを目指していく。

*9:Anti Kerosene and Durability

2  ケミカルグラウト㈱

 微生物を利用した地盤固化に関する新技術の開発

CO2排出量削減を目的として、セメントを使用しない、微生物を利用した地盤固化技術を開発した。

本技術は、地盤中の微生物に栄養を与え炭酸カルシウムを析出させることで、軟弱な地盤を固めて強化するものである。本技術を用いて作製した固化体は自立し、100~200kN/㎡の一軸圧縮強度をもつ。また、透水係数は1×10-2m/secまで減少することが確認された。

今回開発した技術の特徴は、外部微生物の添加は行わず工事の対象となる地盤の常在菌のみを活用し、さらに、食品添加物にも使用される中性無害な栄養剤を使用するため、周辺環境への影響が少なく、安全かつ広範囲に注入ができる点である。また、微生物の活性化に酸素を使用しないため、酸素が不足する地下水位以深の地盤にも適用可能である。

今後、従来のセメントによる施工が行われている液状化対策工事や汚染物質対応の遮水壁工事などへの適用に向け、更に開発を進めていく。

(開発事業等及び海外関係会社)

 研究開発活動は特段行われていない。

(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。

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